大阪市の入れ墨調査は違法 大阪地裁12月17日 16時18分
大阪市が教職員を除くすべての職員に行った入れ墨の調査で、回答を拒否して懲戒処分を受けた男性が処分の取り消しなどを求めた裁判で、大阪地方裁判所は、「社会的な差別につながるおそれがある情報の収集は個人情報保護条例に違反し違法だ」などとして、懲戒処分や配置転換を取り消す判決を言い渡しました。
大阪市は、橋下市長の指示で、おととし5月から教職員を除くすべての職員およそ3万3500人を対象に、腕や足などに入れ墨がないか調査を行い、回答を拒否した6人が戒告の懲戒処分を受けました。
このうち、大阪市交通局の職員の安田匡さん(56)は、入れ墨がないことは上司が確認していたとしたうえで、懲戒処分やバスの運転手から内勤への配置転換を取り消すよう求めていました。
17日の判決で、大阪地方裁判所の中垣内健治裁判長は、「入れ墨は社会的な差別につながるおそれがある個人情報に当たり、市の調査はそうした情報の収集を原則として禁止した市の個人情報保護条例に違反し違法だ」と指摘しました。
そのうえで、「仕事上、配置転換の必要性は全くないのに、懲戒処分の取り消しを求める裁判を起こしたあとに行われている。裁判を受ける権利を侵害する不当な意図や目的があり、裁量権の逸脱と乱用があった」として、懲戒処分と配置転換をいずれも取り消したうえで、大阪市に110万円を支払うよう命じました。
大阪市の入れ墨の調査では、回答を拒否して懲戒処分を受けた別の職員も裁判を起こしていて、裁判所の判断が示されたのは初めてです。
原告「元の職場に戻り仕事に励みたい」
判決のあと、裁判所の前で原告の安田匡さんが「勝訴」と書かれた大きな紙を掲げると、集まった支援者から拍手が上がりました。
安田さんは「当然の結果だと思います。元の職場に戻って、バスの運転手として一から仕事に励みたい」と話していました。
大阪市交通局「内容精査し対応検討」
判決について、大阪市交通局は「判決内容を精査したうえで今後の対応を検討したい」としています。
大阪市の入れ墨調査の経緯は
大阪市が入れ墨の調査をすることになったきっかけは、おととし2月、児童福祉施設の男性職員が、施設の子どもに入れ墨を見せて怖がらせたという報道でした。
橋下市長は、「公務員の入れ墨は、市民に威圧感や不安を与え、大阪市の信用を損ねる」としておととし5月から、教職員を除くすべての職員、およそ3万3500人を対象に、腕や足などに入れ墨がないか調査するよう指示しました。調査の結果、職員のおよそ99.9%が回答し、このうち、110人余りが「入れ墨がある」と答えました。
これを受けて、大阪市は、職員倫理規則で、職員が新たに入れ墨をすることなどを禁止し、違反した場合は、懲戒処分にすることを決めました。
さらに、調査への回答を拒否した6人の職員を職務命令に違反したとして戒告の懲戒処分にし、このうち安田さんなど2人が、処分の取り消しなどを求める訴えを起こしていました。