コラム:アベノミクス選挙中に進んだ相場の地殻変動=佐々木融氏
佐々木融 JPモルガン・チェース銀行 債券為替調査部長
[東京 15日] - 14日に投開票が行われた衆議院選挙では、自民党が291議席と選挙前の295議席から4議席減らしたが、公明党が4議席増やしたため、与党合計で326議席と選挙前と変わらない結果となった。
投票率は52%程度と、戦後最低だった2012年の前回選挙(59.3%)を7%下回った模様である。日本の有権者は1億400万人程度なので、投票に行かなかった人は前回に比べて700万人以上増えた計算になる。自民党が大勝し、今回よりも若干多い296議席を獲得した2005年の「郵政選挙」の時には投票率が67.5%で、比例代表で自民党に投票した人は約2580万人に上ったが、今回は約1760万人と大幅に減っている。ちなみに、2005年の衆院選で負けた民主党に投票した人は約2100万人もいた。
株式市場や為替市場(特に海外投資家)からは注目を浴びているアベノミクスだが、なぜ日本国民全体としてはやや白けたムードが広がっているのだろうか。
ひとつには、アベノミクスがますます第1の矢(金融政策)ばかりに頼り、マネーゲームの様相を呈してきているからではないだろうか。そうした中、「アベノミクスの成否を問う」と言われても、金融市場に携わる我々のような者は「成果があった」と感じていても、それを感じることができない国民の方が大多数だと言えるのかもしれない。
加えて、過去2年間のアベノミクスの下での日本経済は、最初の1年と次の1年でかなり状況が異なる。例えば、実質国内総生産(GDP)の伸び率を見ると、2013年10―12月期はアベノミクス開始直前の2012年10―12月期に比べて2.2%増加しているが、今年7―9月期は前年同期に比べて1.2%減少している。
また、東証株価指数(TOPIX)は、第2次安倍内閣が始まった2012年12月26日からの約2年間で68%上昇しているが、そのほとんどは最初の1年間での上昇であり、過去1年間の上昇率は13%と、米S&P500やスウェーデン、スイスの株価指数と同じ上昇率にとどまっている。
つまり、安倍政権発足から当初1年間の日経平均株価の上昇率は明らかに世界の株価指数を上回り、アベノミクスの成果と評価しても良かったが、その後の1年間の上昇は、世界の景気が良かったから日本も連れて上昇したという側面が強いとも言える。 続く...