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再生可能エネルギー 買い取り義務見直しへ
12月16日 21時27分

再生可能エネルギー 買い取り義務見直しへ
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経済産業省は、電力会社に再生可能エネルギーによる電力の買い取りを義務づけた制度を抜本的に見直し、今後の新たな契約では、電力会社が必要に応じて太陽光発電などの買い取り量を住宅での発電も含めていつでも減らせるとした案を16日の専門家会議で示しました。

経済産業省は、16日の専門家会議で再生可能エネルギーによる電力の買い取り制度を太陽光と風力発電を対象に抜本的に見直す案を示しました。
現在、この制度では、電力会社に太陽光や風力で発電した電力を固定価格ですべて買い取ることを義務づけ、大規模な事業者に対しては、発電量が需要を上回っても買い取りを制限できる期間は年間30日間という上限が設けられています。
これに対し16日示された案は、今後の新たな契約では電力会社が買い取りをいつでも制限できるように、年間30日の上限を撤廃するとともに、買い取りが制限される対象を大規模な事業者だけでなく住宅などでの発電にも広げる内容になっています。
会議の中で専門家からは、「買い取りが制限される範囲が発電量全体の10%程度にとどまるのであれば、必ずしも否定的に捉える必要はないと思うが、電力会社には積極的な情報の開示が求められる」などの意見が出されました。
経済産業省は、16日の議論などを踏まえて、この案を今週中にも正式に決めることにしています。
再生可能エネルギーによる電力の買い取り制度を巡っては、申し込みの急増などで電力会社が安定供給に支障をきたすおそれがあるなどとして、買い取りを制限する動きが相次いでいましたが、今回の見直しが実施されれば電力会社の制限は年明けにも解除される見通しです。

固定価格買い取り制度とは

再生可能エネルギーで発電した電力の買い取り制度は、太陽光など自然エネルギーの活用を促すため2年前の平成24年7月に導入されました。
従来、太陽光や風力、地熱などの再生可能エネルギーは、一般的には、火力発電などより発電コストが高いとされ、普及が進んでいませんでした。
このため政府は現在の制度で、電力会社に再生可能エネルギーで発電したすべての電力を固定価格で20年間から10年間買い取ることを義務づけました。
対象には、事業者によるメガソーラーだけではなく、新たに住宅の屋根などに設置された太陽光パネルで発電された電力も含まれています。
また買い取り価格は、経済産業省に設置された外部の有識者による委員会で、毎年、見直され、太陽光パネルの技術開発などによるコスト削減効果で年々、引き下げられる見通しになっています。
それでも再生可能エネルギーの普及促進という観点から、買い取り価格が発電コストより高く設定されていることなどから新規の申し込みが急増しています。
このため電力会社の間では電力の安定供給に支障が出るおそれがあるとして、新規の買い取りを制限する動きが相次いでいました。

太陽光発電の参入急増

買い取り制度の導入から2年余りで、再生可能エネルギーによる発電事業への参入は急速に進みました。
このうち、特に増えたのは太陽光発電です。
太陽光発電は、土地を確保しパネルを設置すれば実際に発電するまでの期間は1年程度とも言われ、環境への影響調査などで発電まで10年程度とされる地熱発電などに比べて、参入が比較的容易だとされています。
現在の制度で国が認定した太陽光発電の設備は、ことし10月末時点でおよそ6900万キロワットと、再生可能エネルギー全体の95%に上り、太陽光発電に集中している形です。
これらがすべて発電を開始すれば、国がエネルギー基本計画で目標としていた2030年度の太陽光発電の導入量を、40%近くも上回ることになります。
さらに太陽光発電には、広い土地が確保しやすい地域に集中するという地域的な偏りもあります。
こうした地域は、大都市圏に比べて電力需要が少ないため、北海道や東北などの各電力会社の管内では、特に需要が少ない春や秋に太陽光で発電した電力量が需要を上回る可能性が出てきました。
この結果、安定供給に支障が出るおそれがあるなどとして、ことし9月以降、電力会社が買い取りを一時的に制限する動きが相次ぐ形となりました。

事業者からは懸念の声

今回の制度見直しについて太陽光発電に新たに参入した事業者からは懸念の声も出ています。
宮城県名取市の物流会社、「センコン物流」は、現在の制度のもとで高い収益性が見込めるとして、去年、太陽光発電事業に乗り出しました。
会社の倉庫の屋上に大規模な太陽光パネルを設置するなど、宮城県内の6か所に発電設備を設けました。
年間の総発電量は合わせて421万キロワットアワーで、およそ1200世帯の電力使用量に相当します。
さらにこの会社では、東日本大震災からの復興に役立てようと、今年、新たに再生可能エネルギー課を発足させ、福島県などで事業を拡大する計画でした。
しかし、今回の見直しで買い取り量が見通せなくなるとして太陽光発電事業を今後、計画通り進めるか再検討を迫られているとういことです。
「センコン物流」の再生可能エネルギー課長、鈴木昌明さんは「事業の前提条件が大きく崩れてしまう。今後どうなるか電力会社には情報を開示していただきたいし、国も再生可能エネルギーの市場を維持できるような制度を構築してもらいたい」と話しています。

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