民主党の海江田万里代表が衆院選で議席を失い、きのう辞任を表明した。

 民主党は11議席増の73議席を獲得したが、目標とした100議席には及ばず、安倍政権の1強体制を突き崩す足場は築けなかった。

 不意打ちのような解散だったとはいえ、選挙への準備を怠ってきた執行部の責任は重い。

 前回12年の衆院選で下野した後、海江田氏は消去法で選ばれたリーダーだった。だれも火中の栗を拾おうとしない中で、前面に立って逆風に耐えてきたのも確かだ。敗北は、海江田氏だけの責任ではあるまい。党全体が2年という期間を空費してきたとしか言いようがない。

 今回の衆院選小選挙区の投票率は52・66%で、戦後最低の記録を更新した。その一因は民主党にもあるだろう。295の小選挙区のうち、民主党候補が不在だったのは117選挙区にのぼる。有権者に選択肢すら示せなかったのだ。

 09年の政権交代時の期待が大きかった分、民主党への失望は根深いものがある。

 信頼を取り戻すには、民主党という政党の確かな立脚点が不可欠だ。低成長時代の日本をどういう国にするのか、そのためにどういう政党をめざすのか、自らの存在意義を問い直すことから始めなければならない。

 生活者、納税者、消費者、働く者に立脚し、未来への責任を果たすため、既得権や癒着の構造と闘う改革政党――。

 13年に策定した綱領が描く民主党の「自画像」である。

 せっかくの理念なのに、最近の民主党から「改革政党」の熱意と活気を感じ取る人は少ないだろう。民主党の再生はもとより、巨大与党に対抗する野党再編を考えるにしても、確たる理念が必要だ。

 安倍政権への批判ばかりでは信頼回復はおぼつかない。「改革政党」にふさわしい具体的な政策を練り上げ、それを成し遂げる実行力があるかどうかを、有権者は見ている。

 13年綱領の柱の一つは、格差是正をめざし、多様性を認めて支え合う「共生社会」の実現である。

 たとえば経済政策。富が滴り落ちるのを待つトリクルダウンか、暮らしの底上げをはかるボトムアップか――。民主党は、後者の具体策を着実につくってゆくべきだろう。アベノミクスが行き詰まった時の対案がなければ野党第1党の責任を果たすことにはならない。

 新代表の選出を看板の掛け替えに終わらせてはいけない。