1票の格差:8高裁・6高裁支部に選挙無効求め一斉提訴
毎日新聞 2014年12月15日 20時43分(最終更新 12月16日 02時13分)
最高裁が1票の格差を「違憲状態」と判断したにもかかわらず、選挙区割りの抜本見直しがされないまま実施された今回の衆院選は法の下の平等を定めた憲法に反するとして、「一人一票実現国民会議」を主宰する升永英俊弁護士のグループが15日、全国8高裁・6高裁支部に選挙無効を求めて一斉提訴した。今回は初めて全295選挙区で原告を立てた。
今回衆院選の小選挙区では、当日有権者数が最多の東京1区と最少の宮城5区の間で2.13倍の最大格差が生じており、別のグループも同日、広島高裁に同様の訴訟を起こした。今後、東京高裁でも提訴する方針。
「一人一票」のグループは訴状で、2009年の衆院選に対する11年3月の最高裁判決が「違憲状態」と判断して以降、国会が抜本的な制度改革を怠ったまま12年、14年と2度の総選挙を実施したと強調。「11年判決から約3年9カ月が経過し、違憲・無効と判断するのに十分な期間が過ぎている」と主張している。違憲状態の早期解消が必要だとして、公職選挙法の「100日裁判」規定に基づく早期の判決も求めた。
提訴後、東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見した升永弁護士は「司法は今度こそ違憲・無効判決を出すべきだ」と訴えた。伊藤真弁護士は「1票の価値が同一にならないまま選挙が強行された。民意を問えたとは言えず、フェアな選挙ではなかった」と話した。
公選法の規定により、選挙無効訴訟は高裁が1審となる。【川名壮志】
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衆院選の「1票の格差」について最高裁は、2009年と12年の選挙を2回連続で「違憲状態」と判断し、選挙制度の抜本見直しを国会に促し続けてきた。だが、前回選挙後も明確な抜本改革は進んでいない。是正を放置した国会の対応を司法がどう判断するか。まずは各高裁・支部の判断が注目される。
09年選挙に対する11年3月の最高裁判決は、47都道府県に最初に1議席ずつ割り振って残りを人口比例で配分する「1人別枠方式」の廃止を求めた。国会は12年選挙の直前、同方式の規定を削除し、小選挙区を「0増5減」する関連法を成立させたが、区割り変更が間に合わないまま12年12月に衆院選が行われた。この12年選挙も最高裁は「違憲状態」と判断している。