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2014-12-14

『ヤマノススメ』 18話の素晴らしさを語る

「あおいってそんな表情もするんだ」 と思わざるを得なかった 『ヤマノススメ・セカンドシーズン』 その18合目。描かれるあおいの百面相は楽しくもあり、可笑しくもあり、嬉しくもありといった塩梅で、彼女の女の子としての側面を強く意識させられる話にもなっていたのではないかと思います。

ただ、それもひなたが彼女の働く店を訪れてからの話であって、それまではやはりその表情も強張ったままのようでした。まぁそれも初めてのアルバイトだった上に、初めての環境で初めての接客、という初めて尽くしの現場にその身を投げ出されてしまったわけですから、そうなってしまうのも仕方のないことではあったのだろうと思います。

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けれど、「初めての体験」 という括りで考えればこういう状況って今までにも何度かあった筈で、彼女は過去にそうした不安をやはり通過している筈なんですよね。それも “山登り” っていう一番身近な物語の上で、彼女は “初めて” という肩書のままなにかを乗り越えることの苦労や怖さを十分に知っていた。

また、だからこそ想い出されるのは彼女が登山をしている最中に 「なんでこんなことしてるんだろう…」 とネガティブになってしまっていたあの頃の記憶で、あおいは何か苦難に直面した時によく億劫になってしまう傾向にあったし、それは山登りにしても、アルバイトにしても同じ話であって、だからこそ彼女にはその手を引いてくれる存在がいつだって必要だったのだろうと思います。

それは峠を越えようとする度にひなたが彼女の手を引いてくれたように。今回だってあおいは先輩であるひかりにその背中を押してもらうことで “いい表情” をもってひなたを出迎えることが出来たわけですから、それも推して図るべきあおいの性分というか、なんというか。

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けれど、彼女は最後に自らの言葉でその初めての体験に対し、「世界が広がる気がした」 と付け加え、この話に幕を下そうとするのです。

それは山を登り辛いと嘆いてはその圧倒的な頂上からの景色に彼女自身が息を呑んでみせたように。あおいは苦労のその先にこそまだ見ぬ景色が広がっていることを直感として理解していたのでしょうし、だからこそ彼女はこれから起こるであろう不安や苦労をも飛び越えた先に 「明日からが楽しみ」 と未来への期待を見据えることが出来たのではないでしょうか。

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そう、だって彼女が言うように 「働くことと山登りって少し似てる」。そしてそれはどんな些細なことであれ、その最初の一歩を踏み出そうとしている人に対しては同じカタチをもって降り注ぐ未来への福音にだって成り得るのだということでもあるのでしょう。

それもあおいがその胸に秘めるあの原風景を頼りに再度また 「富士山に登ろう!」 と決意をすれば、彼女たちの周囲を祝福の蛍火が舞ってみせたように。(参考:『ヤマノススメ』 13話の素晴らしさを語る)

この世界は彼女たちが進むことを止めもしなければ、その足を止めることに対しても決して否定はしないのです。故にこの物語に在るのはただ “意志在る者に対してのみ拓かれるススメの道” だけなのでしょうし、だからこそ少しずつでも 「進もう」 「あの景色を見よう」 とその足を踏み出す彼女たちを前にしては、もうどんな苦難でさえその足を絡めとることは出来ないのだろうと思います。

加えて 「もう彼女たちなら大丈夫。彼女たちならきっと素晴らしい風景を私たちに見せてくれる」 のだと。

そう信じずには居られない素晴らしい挿話であったようにも思います。特に派手さのある話ではありませんでしたが、こういう話でこそとても真面目に、真摯に物語と少女たちの成長に対し向き合ってくれるところに 『ヤマノススメ』 という作品の素敵さを改めて垣間見た気がしています。もはや涙を流さずにこの作品は視聴できないですね。本当に大好きです。

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