第一戦 変身-チェンジ-
時期は四月、始業式や入学式の後。
一二年生が上の学年に上がり、新入生が新一年生として仲間入りした頃なので、まさに全ての始まりを迎えたという時期でもある。
桜の木々が満開で、通学路は桜の花びらが舞っている中、天パの少年『零乃光流(ぜろのみつる)』は学校までの道を歩いていた。
「おはよう光流!」
「お、おはようシバ!」
光流に挨拶してきた少年は『柴田響(しばたきょう)』。あだ名は「シバ」。ショートヘアで動物や子どもが好き。女装がよく似合うのか、去年の学園祭のミスコンでは見事1位に輝いた。光流とは高校になって初めての友達。
響と会った光流はそのまま一緒に登校する。
「ところでさ、」
「ん?」
光流から会話を始めた。
「こないだ入ってきた一年生なんだけどさ、」
「うん」
「あの一年生たちはさ、正直入りたいから入った・・・のかな?」
「うーんどうだろう・・・少なくとも一人は入りたくて入ったんだと・・・」
「あ~、たしかに、あいつは古代に関することに興味を持ってるからなあ」
彼らの会話内容とは、自分たちの部に入部した一年生についてである。
ちなみに彼らが所属する部は『考古学部(こうこがくぶ)』。文化部で古代の文明やそれに関する歴史を調査、研究をする部活なのだが、基本的にだらだらしているようだ。
部員たちによると「部長の勧誘の仕方が凄すぎる」とのこと。その部長とは・・・。
「でも他の二人はきっと部長の強引な勧誘の」
「餌食になったわけか」
「そゆこと」
去年に続き今年も、だそうだ。
会話を続けている内に校門へ差し掛かった。看板には「霧赦学園高等学校」と記されている。
彼らが通う学校は『霧赦学園(ぎりしゃがくえん)』。様々な歴史が溢れる学園で学科は二つあり、普通科と芸術科が存在する。
制服の色は上半身|(ブレザーとセーター、ベスト)が黒で下半身は男性が紺、女子が赤のチェックでネクタイとリボンは学年によって異なる|(今年度は一年が赤、二年が青、三年が緑)。
教室に着くと二人の男女が「おはよう」といい、光流と響も「おはよう」と返事すると二人の元に寄ってきた。
二人のうち逆毛の少年の名は『織田虎太郎(おだこたろう)』。元気一杯で前向きな性格だが勉強は苦手。
一方、インテークな髪型で青色のメガネをかけた少女の名は『星空未来(ほしぞらみく)』。彼女には身近な人にしか知らない秘密があるのだが・・・。
虎太郎とは一年の時からの友人だが未来とは小学時代からの友人。
「はぁ・・・今日は七時間授業かぁ~」
虎太郎がそう呟くと
「ほんとそれな~」
「面倒だよな~、いっそ俺らでばっくれる?」
「何言ってんの、授業はちゃんと出なきゃ!」
未来がそう言い
「冗談だよ冗談」
「ホントにばっくれるわけねえだろ」
と三人とも笑いながら返し、その後も四人は笑顔で会話した。
キーンコーンカーンコーン
チャイムが鳴り、担任の先生が来ると皆一斉に席に着く。
「これからホームルームを始めるぞ~。よーし、んじゃ日直。今日は・・・よし、じゃあ今日の日直は牙野!よろしく」
日直表を確認し終えると牙野という生徒に声をかけた。
「起立」
皆一斉に席から立つ。
「注目、礼・・・・・・着席」
号令が終わると全員席に着く。
「そんじゃまずは出席確認な・・・・・・」
__________
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
息を荒くしながら一人の少女が住宅地をひたすら走っており、それは何故かというと
「けひひひひひ!逃がさんぞ小娘ぇ!」
彼女は霊魔族に追われているからである。
「誰か・・・誰か・・・」
(______誰か助けて!)
「え・・・?」
「何か聞こえた?」そう感じた光流が辺りを見回す。
「どうしたの?」
そんな光流に未来が小声で問いかける。
「何か、その・・・どこからか声が聞こえてんだけど、未来は何か聞こえなかったか?」
「うーんどうかなあ・・・あ、でも少しくらいなら聞こえたかも」
「そうなのか?・・・でも今のは、気のせいか?」
「ああ、きっと気のせいだよ」
「そうか?」
「うん、気のせい気のせい」
「・・・だといいんだがな」
と会話を終え、再び授業に集中し始めた。
__________
「注目、さよなら」
「さよなら」
号令と共に帰りのホームルームが終了し、生徒たちは教室から次々と出始める。
「よーしおめーら、部室行くぞー!」
「おう!」
「うん」
「ああ!」
虎太郎が三人に言うと三人も返事し、一行は教室を出て昇降口で外靴に履き替え、部室棟へ向かった。
考古学部の部室は部室棟の二階に有り、その部室棟の場所は体育館の近く。
一階には運動部の、二階には文化部の部室が、それぞれ12部屋ある。
階段を上り、二階へ上がると上がった先から6番目の右側に考古学部の部室があり、一行はそこへ向かい、そのドアを開けて入室した。
「こんにちは~」
一行が挨拶すると
「おお来たか!」
「やあ」
「よお」
と一人の少年が元気良く返事をするが他の男女二名は椅子に座り携帯をいじりながらそっけない返事をした。
ショートでストレートな髪型の少年は『如月由基(きさらぎゆうき)』。考古学部部長でありこの部の創設者でもある。
ツンツンと逆立った髪型で黒縁の眼鏡をかけた少年は『平塚颯希(ひらつかさつき)』。
ウルフヘアで紫色の眼鏡かけた少女は『鈴原愉々(すずはらゆゆ)』。
二人ともクールな性格ではあるが仲は良くない様子。
三人とも三年生であり光流たちの先輩に当たる。
ちなみに部室内はというと、壁際にパソコンがテーブルの上に4台並んでおり、それ以外のテーブルには山積みの資料が、いくつか置かれている。
「よし、じゃああとは一年生たちが来たら始めよっか!」
「はい」
「ああ」
「うん」
数分後
「こんにちは〜」
と、三人の一年生が挨拶をしながら入室してきた。男子一人に女子二人。
短い髪に若干天然パーマの少年は『上城海都(かみじょうかいと)』。ゲーマーでありヒーローオタであり、遺跡マニアでもありネットを中心に古代の文明などを調査している。
ポニーテールの少女は『風見夜紗知(かざみやさち)』。舞踊の家系で育ったためか踊りをこよなく愛しており、またその腕も魅力的。また、妄想癖が激しいが自制心はある。
セミロングで前髪ぱっつんの少女は『橘玲奈(たちばなれいな)』。実家は神社であり、妖怪の存在を誰よりも信じている。身長は部の中だと一番小さく本人もそれを気にしている。
「先生の話しくそ長かった〜」
「それな。あの担任時間配分下手くそなんじゃないかな」
「私もそれ思った」
入学一週間目で早々と愚痴を漏らす。
こうして部員が全員揃うと
「じゃ、そろそろ始めよっか!」
「はい」
「うん」
「おー」
と、部活開始と同時に作業に取り組み始めた。
その作業の途中またあの声が
(______助けて!)
「っ・・・・・」
昼間と同じことが起き、また辺りを見回す。
「どうしたんですか?」
玲奈が問いかけるがどうせ気のせいだろう、そう思い込み
「ああ、何でもない」
と答え作業を続ける。光流の反応に玲奈は首を傾げた。
___________
「いつも見る夢といい、今日のあれといい、一体何なんだよ・・・」
部活終わりの帰り道。日が沈む頃、光流は最近見る夢や今日起きた現象のことを考えながらひたすら歩いていた。
その時
(______助けて!)
またあの声だ。
「またかよ・・・」
一旦立ち止まって頭をポリポリしながら
「気のせいだ・・・きっと気のせいだ」
そう呟き、再び歩き始めるが
(______お願い、助けて!)
またその声が聞こえると再び立ち止まった。
「どこだ!どこにいるんだ!」
と叫ぶと
(______あなたのすぐ近くよ!)
あの声がそう答え
(すぐ近く?・・・はっ、もしかしたら)
そう思い光流は走り出した。
しばらく住宅地を走りまわっていた光流がたどり着いた。
そこで彼が目にしたものは何と空を飛び舞う悪魔のような生物|(霊魔族)の大群とそれらから少女が逃げ走っている、そんな光景だった。
戦慄する光流の元に少女が駆け込むと、ズボンの袖を掴みながらしゃがみ込んだ。光流は少女を見た。
その時の少女は、身体中傷だらけで纏っていた衣はボロボロでひどく息を切らしているというそんな状態であった。
「おい、そこのお前」
霊魔族の一人が光流に声をかけた。
「・・・なんだよ?」
「その小娘を渡せ」
「は?」
「いいから渡せって言ってんだよ!」
怒りながらいうと光流は「何故だ?」と問いかけるが
「渡せ、いいから渡すのだ!そいつを我々に渡せば命だけは助けてやろう」
と霊魔族の一人がそう返答した。
「・・・・・」
光流はなにやら悩むようにして黙り込んでしまう。そんな彼に少女がこう叫んだ。
「助けて・・・お願い、助けて!」
「っ!」
光流は思い出した。あの声のことを。あの声は、この少女の叫びだということを、あの声は、この少女の助けを求める声だということを、今ここで解釈した。
そして光流は霊魔族の方に顔を向け、睨みつける。
「何だその目は?」
「お前たちだったのか・・・この少女を傷つけたのは・・・」
「だったらなんだ」
「お前ら、絶対に許さねえ!!」
光流がそう叫ぶと日の入り寸前の空に一点光が、そしてそれが一筋の光となり光流の元に降り落ち、辺り一面真っ白になった。
__________
「・・・・・ここは」
目を開けると、さっきまで住宅地だったのが辺り一面何もない真っ白になっていた。念のために辺りを見回した。
「え、俺・・・もしかして」
そう呟こうとしたら
「そんなわけないじゃん!」
というツッコミと共に光流の元にあの少女が現れた。若干長めの金髪で白い衣を纏っており、腰には金縁の黒いベルト巻き、足は黒いロングブーツを履いており、首元にはそれぞれ色の違う十二個の宝石のネックレスを付けている。よく見たらさっきまでの無数の傷がまるで無かったかのように無くなっており、衣も新品同様である。
「うわっ!」
「うわってなんでそんなに驚くの!」
「いや、だっていきなり来られたら普通驚くだろ!」
「あぁーもういいよ知らない!」
「ああ、ごめんごめん。謝るから機嫌直せって」
「・・・・・・・」
と、機嫌を治すのに相当時間が経過し、何とか機嫌が元どおりになったところで
「なあ、一ついいか?」
「ん、なーに?」
「ここは一体、どこなんだ?」
辺りを見回しながら問いかけると少女はこう答えた。
「ここはね、あなたとわたしだけの空間だよ」
「・・・・・・え?」
ポカーンという表情の光流に少女は説明を始めた。
「つまりここは、あなたが空想戦士(ファンシーファイター)として目覚める場所でもあるの!」
「あの、その・・・ファンシーファイターって、何だ?」
「さっきのやつらみたいな悪から世界を護るために戦う空想世界(ファンシーワールド)の戦士だよ!」
(ファンシーワールドって、もしかしてあれか?)
「で?」
「だから、さっきの悪い奴らが過去に封印されてた悪いやつを蘇らせようと空想世界に襲いかかてきて、んでそこから逃げたわたしを、追いかけてきて、でそいつら今度はこの世界も支配しようという目的でこの世界をにも襲いかかってきたってわけなの
」
(封印されていた悪いやつ?夢に出てきたハデスのことか?)
「それでわたしは空想戦士になり得る人に助けを求めてたってわけ」
「はぁ・・・」
「どう?分かった?」
笑顔で理解したか確認するが
「さっぱりわからん」
とため息つきながら答え、
「えー!」
とまた機嫌損ねそうになったところで光流はこう言った。
「けど、それってさ、世界を護る戦士なんだろ?」
「うん、そうだけど」
「なら、俺はこの世界を護る。そしてお前も護る」
そう宣言した光流に、少女はこう問いかけた。
「なんで・・・なんでわからないのにそんなこと言えるの?」
その問いかけに光流はこう答えた。
「わからない?たしかに空想戦士のことはわからないけど、今お前が大変な目に合ってることはわかってる。この世界がヤバそうなのもわかってる。だから俺は護りたい、お前と、この世界を・・・」
その答えを聞き入れた少女は
「うん、その答え、わたしの耳にしっかりと届いたよ。だからあなたにはこの力を」
そう言って右手の掌から黒いオーブを取り出した。
「これは?」
「これはオーブ。空想戦士として戦うのに必要な力、これをあなたに授けます」
そう言ってオーブを光流がズボンに巻いているベルト、そのバックルの部分に埋め込んだ。
___________
気がつくとそこは元いた場所、そう、あの空間から現実に戻ったのだ。
「なんだったんだ今の」
「さあ、俺にもさっぱり」
「それよりも、今は奴を殺すことが先だ!」
「そうだった、奴を生きて返すな!」
「おおおおおお!!!」
霊魔族たちが会話している中、光流はもう一度辺りを見回す。
前方には霊魔族。
後ろにはさっきの空間と違い全身傷だらけの少女。
そして最後に自分の腹部を見た。
「!?」
いつのまにかベルトが装着されており、そのバックル部分にオーブが埋め込まれている。
再確認を終えたところで顔を上げ、視線を前に向け、そして
(______変身!)
「やれー!」
「おいさー!」
霊魔族の一人が槍を振って迫り、光流はそれを左腕で防いだ。
その瞬間、光流の左腕にプロテクターのようなものが装着された。
「!?」
「はあ!」
相手の腹部に右の拳を叩き出す瞬間に右の方にも同じものが装着され、それを纏った拳が腹部に命中し、派手に吹っ飛ぶ霊魔。
「ぐぅ・・・やれ!」
「おいさー!」
今度は二体がかりで攻めてきた。
両腕を下げ身体で張って敵の攻撃を防ごうとした瞬間、こんどは全身がスーツで覆われ、その上に上半身には西洋の鎧のようなものが、脚部に流線型のブーツが装着された。
「ふん!」
「ぐあっ!」
そして二体の霊魔が派手に吹っ飛び、最後は髪が少し逆立ち、頭部に菱形が三つ並んだ額当てが巻きつけられ、これで全て身に纏った。パーソナルカラーは黒。
この戦士こそ、悪しき闇から世界を護る空想世界の戦士、その名も
『空想戦士(ファンシーファイター)』。
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