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コンプレックス・ラブ

作者:ゆう
お読みになった後は出来れば評価、感想をください!(切実)
「紫」どこかでこの単語を聴くだけで反応してしまう。そんな自分が大嫌い。あたしは、ずうっとこの髪がコンプレックスだ。だってあたしは髪の色がムラサキ色。ムラサキ頭なんて、どんな国にだっていないよ。聞いたことない。
とうの昔に離婚した両親に幼いあたしは聞いたことがある。どうしてあたしの髪の色はこんな色してるのって。両親は真っ黒なのに。するとママは「突然変異なのよ」と言った。そんな理由では納得出来ない。
小学校の時はこの髪のせいで「宇宙人」っていじめられてた。だからあたしはそいつらをぶっ飛ばしてやった。そしていつしか言われなくなっていった。
外に出れば道ゆく人々の視線は釘付けになり、バイトの面接には一発で落ちる。あたしは全て何もかも上手くいかないのはこの髪のせいだ、と考えた。あたしと云う「人間」はまず切り捨てられる。あたしは無視されて、皆この髪に関心がいっているのがわかる。
こんなに目立っちゃうくらいなら、とあたしは高校1年生のとき開き直ってギャルになることにした。とにかくギャル雑誌を買い読みあさった。今ではめでたく友達も出来た。あたしは日焼けサロンに通っているせいで、白かった肌が真っ黒だ。まつ毛はばさばさと風がそよぎそうな程長いツケマツゲをつけ、鼻ピアスもしている。
「渋谷で待ち合わせねー」
あたしは今日、友達のさゆりと渋谷で遊ぶことにした。
二人で渋谷の街をウィンドウショッピングしながら歩いていると向こうからショートカットの痛みまくりの金髪に大きなわっかのピアスが印象的な派手な細身の女と、黒い髪に濃いアイメイク、眉毛のないゴスロリ風のぽっちゃりとした厚底を履いた女が歩いてくる。何とも対照的で不釣り合いなコンビだ。
すると二人は、街中でも一際目を引くあたしの髪を見ると一笑した。
黒髪が「なにあれ、今時ガングロぉー?」と言うと金髪が「ださいよなっはは」と言ったのであたしは「何だと」と言わんばかりに無言で金髪の方を睨み凄んだ。金髪は「何見てんだてめえ、ぁあ?!」と逆ギレしてきた。
街ゆく人々は私たちを驚いた顔で見はするものの、無視していた。そして所詮他人事、という顔でどこかこそこそとしている。
金髪は私の左すねに蹴りを入れてきたのであたしは次の間合いで相手の左頭を力任せに殴った。ダイエットのために毎日50回は腕立て伏せをしたかいあって、一発で相手はぐらりとよろめき、うめきながら倒れた。
さゆりと黒髪は止めよう、という体制に入っていたが思ったよりも早く決着がついたので少し安心したようだった。
「りか勝ったね」
「当然じゃん」
見事あたしは勝利したのだった。
あたし達は空が暗くなって来たのでその日はもう帰ることにした。
あたしは生まれてから彼氏というものの存在を知らない。皆は彼氏彼氏って騒ぐけれどあたしにはいまいちピンと来ない……訳ではない。実は。あたしだって彼氏は欲しい。けれどこんなド派手な外見とは裏腹にあたしって結構シャイなんだよね。なんていうかブランドものと同じような感覚でナマモノの人をそれも人のココロを手に入れるっていう感覚も信じらんない。あたしみたいな人は大正くらいの時代に生まれてたら良かったのかも。ギャルだけど17歳で未だにバージンだし。
今日も帰り道にナンパされる。でもシカトする。あたしは狼同然の男に付いて行っちゃうほどチャラくないから。それにどうせ皆あたしの髪しか印象に残らないだろうし。
電車に乗って家に帰る。おやすみなさい。
次の日。
あたしは久しぶりに学校に行くことにした。その日は補習を受けることになってしまった。あたしの名前はりかなのに、理科は苦手だった。だから他の教科は平均点なのに理科だけは赤点だった。
だから、理科担当の滝川の補習。
滝川は率直に言うと、顔が良かった。眼鏡を掛けているのだが、知的そうでとても似合うのだ。
他の先生たちはやっぱりあたしを外見だけで判断して、皆あたしを厄介者でとっつきにくいとでも言うように、怯えた目で見る。あたしにはそれが手に取る様に解る。だからあたしは反抗したくなる。そんな大人たちを見てるとイライラして。
「大宮は、明日も補習だよ」
滝川先生は言う。
あたしが滅多に学校に来ないせいだ。
けれどあたしは正直滝川先生の顔を見れるだけでも嬉しかった。目の保養にもなるし。
これは恋なのかな。そう思った。
補習中。滝川先生はあたしの髪をじっと見る。あたしはその眼差しにどきどきした。すると
「大宮の髪はキレイだよな、いい色してるよ」
と云った。その言葉が、どれだけあたしを救ったことだろう。
「…ありがと」
あたしは、云う。照れながら、ムラサキ色した髪を思わず触った。つるつるとした感触だった。
あたしは初めて本当に人に認められた気がした。あたしの中の何かがすうっ、と流れていく。とても気持ち良い。こんな感覚は初めてなのだ。どんなに擦っても落ちないずっと凝り固まっていた、こびりついていた「汚れ」を全て拭ってくれる魔法のボディソープの様に。その言葉はあたしをキレイへ導いていく。
その日からあたしはギャルを卒業することにした。髪の色こそどんなにいいヘアカラー使っても変わらないけれど、大宮は大宮でいいんだよ、と滝川先生があたしを受け入れたのを、言ってくれたのをきっかけにあたしはこれからは出来る限りナチュラルメイクにすることにした。日焼けサロンに通うのも辞め、美白に専念することにする。
滝川が好き。
あたしはその気持ちに目をそらすことなど到底出来ない。
あたしはその日補習はなかったけれど、学校へ向かった。滝川先生に会いたいから。自然と足どりは軽くなった。
放課後は、夕陽がきれいだった。そのまばゆい光は滲んでいて、昔ママが持ってたダイヤモンドを通して見た蛍光灯の光みたい。けれど毎日あたしを感動させるオレンジ色の光の命は短い。間もなくベタを塗りつぶしたような闇が訪れる。交代の時がやってくる。こうして1日が終わっていくんだ…。
うちのクラスの教室はちょうど夕陽の光があたる。あたしは教室に射し込む夕陽が一番キレイな時に滝川に告白したかった。
朝のうちに滝川に放課後、この時間に教室へ来てねと言う。もう勘づいてるかも知れない。あたしが滝川を好きってこと。でも滝川は頭が良いのに意外と鈍感だから、それはわからないけれど…。
あたしは教室で彼を待つ。
5分くらい待つと、彼は来た。
教室の引き戸の窓の部分の曇ったガラスにぼんやりと滝川のシルエットが浮かぶ。そしてあの少し癖のある歩き音。
クラスメイト達は殆ど部活や帰宅で居なかったが、いつもの放課後のお喋り組はさゆりが上手く外へ移動させてくれたのだった。
滝川が教室へ入ってくると、オレンジ色の光が舞台の照明の様に一瞬にして全身をパッと包み、眼鏡の縁が光って輝いて見えた。
(好き…いや好きです…わかり易く…言わなくちゃ……)顔が火照ってきた。
「…すき…」
自然と心から口へと、想いが漏れた。
滝川は一瞬眼鏡の奥の大きな目を見開き驚くと、口もとを歪め、くすり、と笑った。
「何が可笑しいの!」
赤面しながらあたしが云うと、滝川はいつもの真面目な顔を取り戻し、
「いやっ…大宮があまりに可愛いから」
と云った。
「僕も大宮さんの笑いがおと、紫色のその髪がキレイだなってずっと思ってたんだよ。こちらこそ、宜しくお願いします」
あたしは、嬉しくて思わず涙が零れた。線香花火みたいに終わるのではと恐れていたあたしの中で、想いが鼠花火みたいに弾けた。
思わず滝川に抱き着いた。
滝川もあたしを抱き締め返した。

…い、いかがでしたでしょうか?(汗)評価、感想を頂けると幸いです。お気軽にどうぞ。よろしくお願いします。

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