クソッタレな時代に放たれた素晴らしすぎる異臭 ― 写真家・石川竜一「絶景のポリフォニー」2014年木村伊兵衛賞、最有力候補者!?
『絶景のポリフォニー』(赤々舎)
2014年末、日本の写真界界隈をにわかに騒がせている新人フォトグラファーがいる。石川竜一、30歳、沖縄県出身。「今年の木村伊兵衛賞の最有力」と業界関係者を唸らせる彼の写真展が、12月3日から東京・銀座で開催されている。(銀座ニコンサロン 詳細はココ)
■挫折と失意の日々から開けた写真家への道
「絶景のポリフォニー」は石川がこれまでに撮りためた沖縄の風景や人、事物のスナップ写真で構成されている。中判デジタルカメラで切り取られたイメージはどれもヘビー。熟れて腐りかけた南国の果実のように濃厚で異臭を放ち、鮮烈だ。
写真:石川竜一
石川が写真を始めたのは20歳の頃。10代半ばから続けていたボクシングに挫折したことがきっかけだった。生きるための確固たる足場を失ったことで陥った自暴自棄な日々、そこからくる鬱状態を経て、石川は偶然、壊れて写らなくなったカメラを手に入れる。この “写らないカメラ” こそが、進むべき道を見失いやさぐれきっていた1人の青年を、写真家・石川竜一へと変容させるターニングポイント。いわば、クロスロードで「写真の悪魔」に魂を売り渡した瞬間だった。
そして20代も半ばを過ぎた頃、故あって手元に転がり込んできた百数十万円のまとまった金で手にしたハッセルブラッドのデジタルシステムを使って切り取られたイメージの一群が、現在銀座のニコンサロンで開催中の写真展「絶景のポリフォニー」なのだ。
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