第六章 恋の瞬間
避雷針から..ファーストラブ オリジナル
http://blogs.yahoo.co.jp/kome125/folder/1498311.html
T-HAREと書かれている、一番レイアウトが派手な箱を手にすると、
それを見つめていたが、ためらった。
その脇に置かれていたリトラスと書かれた、地味な中年の女性が、
いかにも好みそうな箱を手にした香菜は、それを買って店を出た。
急ぎ足で家に足を運ぶ、ヘアカラーが入っている袋を手にして。
家に帰り居間に向かうと座卓の前に座り、はしゃぎながら袋から品物を取り出し、
それを見つめる香菜だった。
見つめながらそっと立ち上がり、居間の置くに在る風呂場に向かい、
風呂場に入ると、長い髪を両手で後ろに払った。
香菜は箱の裏に書かれていた、使用上の取り扱い項目を読んでいた。
その項目の中で、『付属のチューブの蓋を開け、一液と二液を付属のチューブに注入して、
それをよく振り、髪の毛の根元から、混ぜたチューブを付属の櫛に付けて、
生え際に沿って毛先の方へ、塗布して下さい』と、図柄と文字で明記されていた。
その図柄の中で肩の所にサロンで使用する、クロスの様な物が描かれていた。
香菜はその図柄を、忠実に従おうと悩む。
ふと、ゴミ袋ををイメージする。
スッと、風呂場から脱衣所に顔を覗かせる。
洗濯機の上の棚に置かれていた、ビニールの袋に入った、ゴミ袋を見つけると、
複数入った袋を手に取り、数秒見つめた。
それを一枚取り出して、それを広げて 裂いた。
裂いたゴミ袋を、マントを肩に宛がう様に、サッと肩に掛けた。
裂いたゴミ袋の両端を両手で摘み、一度放して棚に置いてあった、
まだ封が切られていない、透明のビニールに入っていた、
真新しい洗濯挟みの封を開け、裂いたゴミ袋の両端を右手だけで摘み、
少し大きめの洗濯挟みを、左手で裂いたゴミ袋の両端に挟んだ。
香菜は静かに、風呂の浴槽の縁に腰を据えた。
混ぜ合わせた容器と、付属で付いていた櫛を手に取る。
そして櫛を混ぜ合わせた、薬が入ったチューブに付けると、
櫛に付いた液剤を少し見つめて、それを自分の頭皮に当てた。
スッと、腰まで伸びた長い髪に櫛を通した。
付けた櫛の薬の量が、香菜の長い髪には足りないのか、途中で櫛に付けた薬が無くなる。
香菜はチューブに入っていた薬を、櫛に漬け肩の辺りから薬を付け直す。
その繰り返しを行っていた。
その作業を髪全体に行うと、疲れたのか両手を膝に置き俯いた。
しばらく時間だけが流れる、ふと香菜はヘアカラーの箱を読み返す。
(髪に薬の塗布を終えたら、そのまま20分放置して下さい)
香菜はその箱を眺め、じっとしていた。
風呂場の中に毛染めの液体の匂いが充満する。
苦しくなったか、風呂場の窓を少し開けるとまた、風呂の浴槽の縁に座り俯いていた。
しばらく時間が経った後、俯いていた顔を何気に上げる。
そっと立ち上がると、脱衣所に置かれている鏡に自分の顔を映す。
少し赤茶けた、自分の髪の毛が表された。
笑みを浮かべるが覚束ない、取り返しが付かない状態に、言い訳を心に言い据えた。
香菜は下のタイルに跪き、昨晩の残り湯に頭を付けた。
長い髪の毛が浴槽に静かに沈むと、両手で髪を掻きむしる様に、
ガサガサと髪の毛に不着している、液剤を洗い流す。
浴槽に頭を漬けた髪の毛を、下を向いたまま浴槽に浸かっていた頭を上げて、
両手で交互に髪の毛を絞った。
はっと顔を上げる香菜、背中に水滴が落ちる、
さっと立ち上がり、脱衣所に置かれていた昨晩体を拭いた、
少し湿ったタオルを手に取り、濡れている長い髪の毛を拭いた。
タオルで湿り気を拭い、自分の部屋にドライヤーを掛けに行こうと、
脱衣所から出ると、母親秋子が香菜をぼーっと見つめていた。
何気に照れくさいのか、香菜は俯き加減で、母親の横を通り過ぎようとした時、
西日が香菜の髪の毛を照らした。
母親は通り過ぎる、香菜の髪の毛を見て微笑み、「明るくなったね」。
香菜は何も言わず、小走りに母親の横を通り抜け、
自分の部屋へ駆け足で階段を上がって行った。
自分の部屋に入り、そっとドアを閉めた。
何気に微笑む香菜..。
ふと、窓の外を見上げると、夕日がこの部屋を照らしていた。
香菜は徐に机に置かれたいた、原稿用紙を手に取る。
途中まで書いた、文章を読み返す。
それを見ながらベッドに横たわると、ベッドで仰向けのまま、
原稿用紙の文面を目で追っていたら、何気に眠りに誘われた。
原稿用紙を、持ったまま眠りに落ちた。
自然と原稿用紙を持っていた手が、膝に落ちる。
窓の外はビルの谷間に、夕日が落ちて行った。
この物語はフィクションであり、登場する人物、建物などは実際には存在しません。
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