榊原一生
2014年12月13日13時46分
水泳教室に通う生徒たちがプールサイドに集まり始めた。7歳のナーイラ・クッロトゥ・アイニさんも水着姿で入ってきた。腕や足は紫の長袖、長ズボンで覆われている。その上からみんなと同じ紺色の水着を着ける。水泳を習い始めて3カ月。「周りの目は、あまり気にならなくなった」という。
インドネシア国籍の両親を持つナーイラさんは、信仰するイスラムの教えを守る。宗教上の理由から、女性は顔と手以外の部分を隠さねばならず、小学校には髪などを覆う「ヒジャブ」をつけて通っている。
好奇の目で見られることもある。「『何それ』『なんでつけてるの』って。ただ教えを守っているだけなのに。いい気はしない」。母のソリハ・ヌール・ヒダヤティさん(31)は「日本はイスラム教への理解が乏しい。娘を受け入れてくれる水泳教室があるか不安だった」と打ち明ける。
実際に、宗教上の理由で規定外の水着を許可するスポーツクラブは多くない。数軒を回ったが、すべて断られた。自宅近くのクラブと何度も交渉を重ね、規定の水着を重ね着することなどを条件に入会が認められた。
文化や宗教の壁に悩む子どもたちがいる一方で、人種や国籍の違いに苦しみながらも、スポーツに救われた子どももいる。
東京都内の公立中学校に通うママレーさん(14)にとって、入学後に入ったソフトテニス部は初めて心を落ち着けられる場所になった。「今まで、みんなに交じって何かをするということがなかったから……。一緒に過ごせる時間がうれしかった」
ママレーさんは、ミャンマーから日本にやってきた両親との間に生まれた難民2世だ。東京で育ち、日本語を学び、不自由なく意思を周囲に伝えることができた。それでも、カタカナの名前を同級生から「外来種」とののしられ、差別やいじめを受けてきた。
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