吉沢英将
2014年12月13日15時11分
街中がイルミネーションで輝く季節。「12月、山口市はクリスマス市になる。」を合言葉に、山口市ではクリスマス関連行事が盛りだくさんだ。何を隠そう、日本で初めてクリスマスが祝われた場所と言われているのだ。
「1552(天文21)年、山口で降誕祭(クリスマス)をした。ミサを歌い、いい声ではなかったが、キリシタンたちはとても喜んだ」。16世紀に日本を訪れた宣教師らが書いた「耶蘇(やそ)会士日本通信」という本にこういう趣旨の記述がある。16世紀後半に日本でキリスト教を広めたポルトガルの宣教師、ルイス・フロイスも著書「日本史」で「山口で日本初の降誕祭が催された」と書いている。
今の市中心部にあった「大道寺」という荒れ寺を、教会の代わりにしたという説が有力だ。スペインの宣教師フランシスコ・ザビエルは1549年に鹿児島にたどり着き、日本で初めてキリスト教を布教。2年後に山口の守護大名の大内義隆から布教の許可を得たが、この時期とも符合する。
街の活性化に格好のネタだが、注目されたのは最近だ。きっかけは1997年、地元の山口商工会議所青年部が20周年事業として「日本のクリスマスは山口から」と銘打ち、イベントを始めたこと。当時会長だった岡部憲治さん(55)は友人からこの史実を書いた雑誌の記事を教えてもらい、「これは使える!」と飛びついた。お墨付きを得ようと2006年、ザビエル生誕地のスペイン・ナバラ州から「山口は日本のクリスマス発祥の地」と認定をもらった。
今年も、山口商工会議所などでつくる実行委がコンサートなど40以上のイベントを催す。山口市内の路線の一部バスではサンタに扮した運転手が運転。市長は「クリスマス市長」の肩書の名刺を配り、市内を走るSLも「SLクリスマス号」として臨時運行する。
冷静になって考えると、ザビエルの来日は山口での降誕祭の3年前。毎年訪れるクリスマスをどこかで祝っていてもおかしくない。ただし、山口の前にザビエルが訪れた鹿児島市や長崎県平戸市の担当者に聞くと、「記録がなくわからない」。ザビエルの山口来訪400年を記念して作られたサビエル記念聖堂(山口市)の李相源神父(53)も「本当のことは誰にも分からないのかもしれない」と語る。
ザビエルの兄の子孫で、08年まで山口県下松市の教会を拠点に活動し、今も月に数回県内を訪れるイエズス会福岡修道院のルイス・フォンテス神父(83)は「日本初がどこかではなく、キリスト誕生を祝い、世界の人々はみな友人であると感じることこそ大事だ」と話す。山口でクリスマスを祝う文化は確かに根付いている。真実は「神のみぞ知る」。それでいいじゃないか。(吉沢英将)
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朝日新聞社会部
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