『8461番:両性化手術の執刀』
男のふたなりがお好きな方はどうぞ。
地図にも載っているかどうかも怪しいアジアの弱小国・AX・・・・・
20年も続く内戦のため主要産業は壊滅状態となり、GDPは先進国の1000分の1、インフレが進みすぎて億単位の紙幣が発行されるという絶望的な状況の下、
弱者を食い物にする悪党どもが幅を利かせていました。
都心・・・と言っても人口は1万人にも満たず、度重なる一揆や米騒動で焼き討ちにあった建造物がその躯を晒すのみでしたが、
そこからさらに10kmほど離れた郊外に、この国で唯一の病院がありました。
酸性雨で変色した銅像の頬には、どうみても涙としか思えない水垂の跡が刻まれており、環境ホルモンやら農薬やらで変質したのか
ゴキブリの触覚を拡大したようなつる植物が、ひび割れたコンクリートの壁にびっしりと絡み付いています。
内戦で負傷した戦闘員や一般市民を運び入れる外来受付が、この国で最も人が集まる場所だというのですからまったく皮肉なものです。
100年ほど前、伝染病で国内人口の約6割を失いかけた土地柄のためでしょうか、
院内の隔離病棟は香港の小攬病院も真っ青になるほどの厳戒態勢が敷かれていました。
強化ガラスで作られたすべての窓は、キングコングでも到底曲げられそうに無いほど強固な鉄格子に覆われ、
扉には関係者のみが開閉できる生体認証式ロックが備え付けられていたのです。
収容されている患者たちも感染症のみならず重要政治犯、思想犯など諸々でしたが、互いの交流は一切禁じられており、
廊下に彼らの会話が響くことはありませんでした。
時折、心を病んだと思しき者の叫び声や革命派のアジ演説が、緑色に塗られたコンクリートの壁に吸い込まれていくのみです。
・・・・・・・・・・・・
そんな軍事施設さながらの病棟において、今ひとりの青年が準備室から運び出されてきました。
口にチューブを挿入され、すらりと伸びた四肢からは何本もの点滴チューブが伸びています。
麻酔が効いているのでしょうか、安定の悪いストレッチャーに横たえられたまま凸凹の廊下を運ばれても微動だにしません。
執刀医は血のついたポリ手袋を嵌めたまま、マスクの下でくぐもった声をあげました。
「両性化手術執刀終了。これから約1〜2年をかけて経過観察をおこなう・・・」
・・・・・・・・・・
これより少し前、両脚を大きく開かれた状態で手術台に固定された青年は、スタッフの手によって得体の知れない計器を取り付けられました。
アンギオシートで覆われた股間の合間には、彼が確かに男性である証・・・ペニスが垂れ下がっています。
年齢は20代前半といったところでしょうか。川面に揺れる石菖藻さながらの黒い髪、ブリーチで抜色された洗濯物のような白い肌・・・。
顔の半分をマスクで覆われているためよくわかりませんが、それは何かで計算して作られたとしか思えないほど整ったものでした。
執刀医は蛍光板にかけられたレントゲン写真を指し示しながら助手に言いました。
「まず陰部の下10cmを円形に切開し、膣を形成する。その後開腹し、人工子宮と卵巣を体内に埋め込む。
最後にシリコンチューブで子宮と膣と繋いで完了だ。手術時間は約10〜12時間を予定している」
「はい」
「輸血の量と、心電図のモニタリングを怠らないよう注意して行ってくれ。それでは、開始する」
両性化・・・・・・
つまり彼は元々男性でありながら、人工的に女性生殖器を埋め込む手術を受けさせられるというのです。
この手術に備えるため、彼は1年ほど前から病人とは思えないほどの特別待遇を受けていました。
高級食材を使った栄養食を与えられ、適度な運動、そして肌を整えるためのケアと、この国のGDPで言えば10年分に相当する
金額を注ぎ込み、ひとりの青年を改造しようとしていたのです。
全身麻酔により昏々と眠り続ける彼の股間に、鋭いメスの刃先が近づいていきます。
医師はペニスを持ち上げながら、その下部を10cmほど丸く切り裂きました。
皮膚の合間から一筋の赤い糸が漏れ、まるでグラジオラスの花弁が開いたように、肉色が露になっていきます。
看護師の一人が、直径5ミリほどの吸引チューブを用いて溢れ出す血液を吸い取りました。
「臍下から開腹する。生殖器は?」
「はい。ヘパリン溶液に浸してあります」
「この人工生殖器の卵巣が、検体の運動神経から送られる電気信号を受け取り、子宮に対し月に一度の周期運動を行うように設定されている」
「つまり、月経ということですか?」
「そうだ。28日周期で、子宮内膜を膣孔を通じて体外に排出するようにしてある」
医師は助手たちにそう説明しながら、まるで守口漬でも漬けるかのような手つきで切り開いた下腹部に人工子宮と卵巣を埋め込みます。
一本だけとりわけ長いコードの先端にぶら下がっているピンク色の肉球は、クリトリスでしょうか。
彼は続いて、マイクロサージャリーに用いる顕微鏡を検体の下腹部直上にセットしました。
相当数の手術をこなしてきたてあろう執刀医はレンズを覗きつつ、人工生殖器から伸びている微細なコードを周囲の神経繊維に一本一本接続していきます。
隣の女性スタッフが、額に滲み出た汗をガーゼで拭い取るというお馴染みの行為を120回ほど繰り返したのち、子宮と卵巣の移植が終わりました。
顕微鏡の位置を陰部に近づけた医師は、手袋を新しいものに交換しながら疲れた様子もなく言ったのでした。
「このまま、陰核の形成に入る。陰核の電気コードはペニスの感覚神経と接続し、性的快感を得られるようにする」
「はい」
ペニスを持ち上げ、縦にざっくりと切り開いた執刀医は、むき出しになった神経とクリトリスを丁寧に結びつける作業に入りました。
この施術により、クリトリスに刺激が加わると、亀頭へのそれと同じ感覚が得られるようになるというのです。
・・・・・・・
人工生殖器の接合手術とクリトリスの形成だけで7時間はかかったでしょうか。
子宮と卵巣が運動神経からの刺激を正常に受け取ることを、コンピュータで確認したのち、執刀医はいよいよ膣の形成に入りました。
ヘラのような形をしたステンレス製手術器具が、膣口を押し開いていきます。
「ペニスを切除しないので、膣から子宮までは電気メスでくりぬいていくような方法になる。レーザーで血管を焼きながら行うので出血は多くはないと思うが・・・。
念のため輸血を200ml追加してくれ。また、適宜、止血剤としてフィブリノゲン溶液及びトロンビン局所溶液を噴射すること」
「はい」
「また、いわゆるGスポットと呼ばれる箇所・・・尿道海綿体については、クリトリスと同じく陰茎の神経と接続することで対応する」
助手のひとりが24インチモニターのスイッチを入れると、シリコンチューブ挿入箇所をマーキングした三次元画像が映し出されました。
青年の下半身を撮影したCTスキャンとMRIの写真を、コンピュータで合成したものです。
医師たちは出血量を30秒単位でモニタリングしながら、青年の膣内を電気メスで切開し、人工粘膜と襞で覆われたシリコン製チューブを押し込んでいきます。
助手の一人が全身を汗びっしょりにしながら、 止め処なく溢れ出す血液を脱脂綿で拭いつつ、ステンレスの受け皿に放り込んでいました。
Gスポットの部分には肉色をした楕円形の突起があり、電気信号を受信するコードがペニスの神経に接続されていきます。
全身麻酔により、意識を深い沼の底に沈められていたはずの青年ですが、一筋の涙が酸素マスクのふちを沿ってシーツに滴り落ちていました。
「チューブが収縮しないよう、ダイレーションを行う。直径2cmのシリコン製擬似陰茎を挿入しよう。弾力性があるので、 処女膜を傷つけることもない」
「はい」
今しがた子宮まで貫通されたシリコン製チューブに、男根のかたちをした白い異物が挿入されました。
眠っているはずの青年が、一瞬眉間をしかめたように見えたのは気のせいでしょうか。
・・・・・・・・
それから6時間後、予定終了時間を大幅に超える大手術がようやく終了し、青年は数人の男性看護師によって『経過観察室』なるプレートが掲げられた個室に移されました。
手術着の合間からは、血圧計のゴムチューブや抗生剤の点滴管、心電図を取るためのコードなどが垂れ下がっており、あたかも蜘蛛の巣に捕らえられた昆虫さながらです。
点滴バッグを吊り下げていた看護師が、壁の時計を確認しながら主医に伝えました。
「先生。予定では麻酔が醒めるまであと20分程です」
「そうか。術後は相当に痛むはずだ。ペンタゾシンと、感染症予防の抗生剤を混ぜた生食を24時間かけて1000mlほど投与してくれ。不眠を訴えたら、ドルミカムを投与するんだ」
「かしこまりました」
「着替えさせよう。手伝ってくれ」
手術着を自ら脱がせた医師は、幾重もの包帯とガーゼに覆われた下半身に目をやりました。
包帯の隙間からは排尿用と排血用のカテーテルが覗き、黄色い液体と血液を体外に排泄し続けています。
足首には、識別番号と思しき4桁の番号と、手術執刀日が印字されたプレートが括り付けられていました。
「8461番、・・・か・・・」
8461番と呼ばれたこの青年は、当たり前ですが元々れっきとした男性でした。
遺伝子検査で確かめたところ染色体にもなんら異常はなく、こうした手術など受ける必要があるはずもないのですが、
彼は今しがた、医師たちの手によって強制的に性別を変化させられてしまったのです。
ただし、男性から女性に・・・所謂性転換を受けたわけではありません。
彼は男性としての機能をすべて保存しつつ、新たに女性の生殖器を与えられたというのです。
麻酔で眠り続ける青年の身体を観察していた医師はカルテを手に取って話し始めました。
「開腹手術によって肋骨を2本切除、大腸下部に子宮となる人工器官を移植し、周辺の神経と接続。
その後開頭し、脳下垂体に女性ホルモンの分泌を促進させる薬品『エスノプローゲン』を注入。
3ヶ月程度で月経が始まるものと考えられるが、受胎の可否については不明。
陰茎の下に人工的な陰核を形成し、肛門との間には膣と子宮を繋ぐため、長さ12cmほどのシリコン製粘膜壁を貫通。
胸に、臀部から切除した脂肪と注入。なお、依頼者の希望により、声帯を切除し、発声を困難とした」
「・・・・・・・・・」
「12ヶ月〜24ヶ月の経過観察後にCZ国に輸送するものとする。なお、この生活中は、筋肉を萎縮させるため、常に横臥させておくこと。
排泄はカテーテルで行い、決してベッドから出してはならない」
「はい」
そう命じられた助手たちは、助手たちは彼の全身を拘束ベルトで固定しました。
ベッドのマットレスは褥創防止クッションで作られており、両手足はもちろんのこと、胴体や関節部分とすべての稼動部位を制限しても床ずれを起こすことはないそうです。
それから経過観察中の注意事項をいくつか確認したのち、執刀医たちは薬によって眠り続ける青年を残して部屋を出て行きました。
防音ボードに覆われた壁と、生体認証による電子施錠・・・。
今日この時をもって、この狭い病室だけが彼の唯一の『世界』となったのです。
・・・・・・・・・・・・・
強制両性化手術から数日間、青年の身体を断続的な痛みが襲いました。
医師たちはその都度、鎮痛剤を投与して彼を半ば強制的に眠らせるのですが、膣となるべく切り開かれた箇所に違和感を覚えているのでしょうか、
青年は無意識下で幾度も幾度も身を捩りました。
半月も経つ頃には、かつては男らしく筋張っていた四肢も女性ホルモンの大量投与と強制横臥による廃用性筋萎縮で、すっかり細くなってしまったのです。
抗生剤と栄養剤の点滴により食餌の必要はなく、排泄も尿道カテーテルから自動的に行われるためトイレに行く必要もありません。
声帯を切除されたため呻き声すらろくに出せず、薬の効果により意識は常に混濁しています。
それから3ヶ月ほどしたところで、青年の身体に新しい変化が現れました。
全身清拭の際、看護師が彼の下着に薄いピンク色の染みがあることに気付いたのです。
それは両性化を顕著に示す証・・・・・・初潮でした。
青年は当初、なぜこんなところから血液が滲み出るのかわからないといった具合で狼狽していましたが、
看護師たちがひそひそと囁きあってるのを耳にして、手術によって移植された人工子宮が、身体の一器官として機能していることを悟ったようです。
部下からの報告を受けた執刀医は青年のカルテに経過を記入しつつ、スタッフに向かって言いました。
「生理が始まったそうだな。人工子宮の様子を見たい。午後から内診を受けさせよう」
「かしこまりました」
午後1時、体格の良い看護師によってベッドから抱き起こされた青年は車椅子に乗せられ、長い廊下を運ばれました。
もはや走ることもできないほど痩せ細った手足であるにも関わらず、逃亡を恐れた医師の命により拘束帯が嵌められています。
内診室に運び込まれ、陰部をさらけ出すような体勢で両脚を固定された青年は、見ず知らずの相手に自らの性器を検査される恥辱に唇を噛んで耐えていました。
天井から吊られたカメラが、診察の様子を克明に記録しています。
「超音波で子宮の様子を観察しよう。ジェルを貸してくれ」
「先生、顧客からの要望では、処女膜を欠損させないようにとのことですが・・・」
「スロープは直径2cm程度しかない。処女膜に影響はないものと思われるが、もし出血が認められれば、処女膜再生手術を施す」
執刀医が手にした超音波スロープが、青年の膣に少しずつ挿入されていきます。
人工とはいえ、神経に接合されたそれはもはや完全に彼の一器官となっていたのです。
丸みを帯びたスロープが肉壁を突き進むにつれ、今まで味わったことの無い感覚が彼の下腹部に伝います。
与えられた刺激に女性器が反応しているのでしょう・・・。
「ウー・・・・・・・・アゥ・・・・・ー!・・・・うー!!!」
手術によって声帯を切除されていた青年は、もはや言語とは言い難い掠れ声で叫び続けていました。
暴れて舌を噛まないよう、口中にガーゼを丸めたものが詰め込まれると、低く蠢くような音を咽喉の奥から響かせるのみです。
検査が終わったのち、助手のひとりが青年の腕に鎮静剤・ドルミカムを投与しました。
「先生、いかがでしょうか」
「子宮は正常に動いている。依頼者は将来的に受胎可能なようにして欲しいと言ったが、何しろ初めてのケースだからな。確実なことは言えない」
「妊娠するとしても、あのシリコン製チューブにそこまでの伸縮性はありません。帝王切開で取り上げることになるでしょう」
「ああ。しかし依頼者は、8461番自身の精液で受精させてみたいそうだ。医学的に前例がないので、どうなるかわからないが・・・」
股間にあてがわれたナプキンの感触に違和感を抱きつつ、初潮を迎えた青年はより完成された両性体へと近づいていったのでした。
・・・・・・・・・・・
それからさらに7ヶ月が経ち、肉体が『両性体』として完成し始めた頃・・・・8461番にさらなる肉体改造が待っていました。
完全拘束ともいえるその手術は、青年から思考以外の自由を奪うものであったのです。
今回は総身に渡る大掛かりな手術であるため、合計12名の医療スタッフが集められ、役割ごとのグループに分担されました。
「Aグループは執刀助手を。Bは手術用具の交換、Cは検体のモニタリング。Dはその他の補助にあたってくれ」
「はい」
再び手術台に横たえられた青年の傍らには、無数の金属製プレートが滅菌パックに包まれた状態で置かれていました。
プレートには様々なサイズが用意されており、それぞれ「橈骨手根関節」、「肩甲上腕関節」、「距骨下関節」などと書かれたシールが貼られています。
執刀医はマスクをかけながら、それこそ料理でも作るかのような口ぶりで術式の説明を始めたのでした。
「全身の関節固定を行う。それぞれの関節にあわせたプレートを用意した。外科手術でそれら埋め込んでいく。手術時間は20時間を予定している」
「はい」
「まずは大腿骨の固定から始める。電気メスのスイッチを入れてくれ・・・」
関節固定手術とは、皮膚を切開し、可動関節を二枚の金属製プレートで挟み込んだ状態で骨にボルトを固定するというものでした。
彼はもはや指一本すら自由に動かすことはできなくなるのです。
電動ドライバーの先端に取り付けられたボルトが骨に埋め込まれるたび、青年の横たわるベッドがギシギシと軋みました。
肘、膝、肩、手首、大股といった四肢の関節を中心に、指の一本一本にいたるまでにプレートを埋め込んでいきます。
「切開した皮膚は細胞再生クリームで覆う。そうすれば1ヶ月も経つころにはメスの傷口もなくなる」
「はい」
「Dグループはクリームを塗ってくれ。残りの者で眼球の処理をしよう。コンタクトレンズを取ってくれ」
「はい」
次に、青年の瞳に特殊なコンタクトレンズが嵌められました。それは彼の瞳孔を完全に覆い隠し、視界を奪うためのものです。
聴覚と嗅覚以外の感覚を一切遮断され、身体の自由を奪われた青年に知覚できるのは、全身を伝う骨の痛みと、女性生殖器の疼きだけでした。
・・・さて、それから6ヶ月後・・・・・
青年はいよいよCZ国に『輸送』されることとなりました。
輸送と言っても飛行機のチケットを渡すわけではなく、まさしく『荷物』の如くに扱われるのです。
「輸送までには船便、陸路で90日ほど掛かる予定です。ただ、KS海峡にて軍事的緊張が高まっておりますので、最悪60日ほど遅延する可能性もあります」
「それは先方も了解済みだ。出荷の準備を始めよう」
スタッフはみな一様に手術着を身につけ、数々の薬品や医療器具がセットされたカートやストレッチャーを運んできました。
ベッドに横たえられ、身動きどころか視界もままならない青年は脅えた表情で辺りの様子を窺っています。
しかし、それもわずか2、3分のことでした。
「ドルミカムを投与してくれ」
出荷の責任者でもあり、青年の両性化手術を執刀した医師がそう命じると、看護師のひとりが鎮静剤のアンプルを手に取り、注射針で吸い取りました。
鎮静剤の投与からわずか数秒、青年の意識は朦朧となり、一切の抵抗を示さなくなりました。
しかしそうでなくとも、彼の稼動関節は今や金属製プレートによってガチガチに固定されているのですから、それも不可能だったことでしょう。
5人かがりでベッドからストレッチャーに移し変えられた青年は、3本の皮革製ベルトで台座に縛り付けられました。
これから数ヶ月間、青年の住居となるのは、彼の体格に合わせて特別にあつらえた人型ベッドでした。
褥創防止の厚いマットが敷かれた高さ1.3メートルほどの寝台には、汗を吸収するための白いシーツが被せられています。
ベッドの枠からは、四肢と胴体を拘束するためのベルトが10本ほど垂れ下がり、検体が横たえられるのを待っているようにも見えます。
全裸にされた青年は、拒絶の声を挙げることも許されぬまま身体をベッドに固定されました。
「まずは四肢を固定する。その後、自害防止と気道確保の処置」
「はい」
青年の口を歯科治療用の器具で固定し、口腔麻酔を施した医師は、彼の歯型に合わせて作ったシリコンカバーを挿入しました。
カバーからは、10本ほどのナイロンブレイドが垂れ下がっています。
医師は歯茎縫合用の太い針に黒いブレイドを通すと、その一本一本を丁寧に歯茎に縫い付けていきます
この処置は、輸送中に舌を噛み切らないようにするためのものでしたが、もう一生取り外すことは許されないのです。
この瞬間から既に青年に「自害」という選択肢は消えうせ、いかに辛い責め苦が待ち受けていようとも、それを受け入れるしかなくなったのです。
「酸素吸入用のチューブを気道に挿入」
「はい」
気道確保のため、咽頭に酸素チューブを通そうとすると、青年はわずかながら顔を歪ませました。
輸送の間、すべての食餌は特別に調合された栄養ゼリーのみとなります。
両腕に穿刺された点滴が、一日あたり1500カロリーの栄養と2リットルほどの水分を彼に補給するようセットされていました。
排尿は、通常より太目の尿道カテーテルから自動的になされ、射精した際もこの管を通じて精液が排出される仕組みです。
排便は2日に1回、直腸に接合されたチューブから浣腸剤が注入され、終わるとバキュームによってベッド下部に設置された汚物処理機に送られるよう設定されています。
大腸には、排泄チューブを接合するための弁が手術によって取り付けられていましたが、これは排泄用だけではなく、
アナルバイブやボールを挿入した際の固定具としても利用できるようになっていました。
「さて、ここからは特別注文・・・だが・・・・・・」
執刀医は、アルコールを含ませた脱脂綿でクリトリスを消毒すると、そこに微動な振動を与え続ける機械をあてがいました。
陰核に伝わる異様な感覚に、身動きできない青年の唇からくぐもった音が漏れます。
それは男性として一度も感じたことのないものだったのでしょう。
身を捩ろうとするも、彼の身体とまったく同じサイズの人型ベッドに寝かされているため、わずかに背中を浮かすこともできません。
「膣内には、断続的なバイブレーションを与える擬似陰茎を挿入する。なお、生理の際に排出された子宮内膜は、擬似陰茎内部のバキュームで自動吸引される。
陰茎には内部が襞状になった擬似女性器を装着し、ベルトで固定する」
処置を教えられた看護師たちは、プラスチックの手袋を嵌めた指先でペニスを持ち上げると、上下に扱き始めました。
勃起した状態でないと、器具がうまく装着できないからでしょう。
やがて固くそそり立った陰茎に、女性器を模した人工膣が被せられます。
人工的に形成されたものであるとはいえ、肉色の壁は本物のそれとまったく変わるところがありませんでした。
続いて直径3cmほどのシリコン製ペニスが、愛液と絡み合う音を立てながら彼の子宮口付近までに沈んでいきます。
「機器の動作を開始する。このまま72時間観察し、異常がないことを確かめたのちに梱包をする」
点滴、心電図、排便器具・・・・・青年の身体に接続された医療器具にスイッチが入れられ、その機能を発揮し始めました。
もはやその外観は、人間というよりも機械そのものであるように思えますが、
これから90日間もの間、物として『輸送』される8461番の生命を維持するためには、こうした大掛かりな器具が必要なのです。
「これでいい。無菌室に運び、外部からモニターで観察しろ」
「はい」
医師たちはベッドに固定された青年を無菌室に運び入れると、部屋の明かりを消しました。
室内には、気管チューブが酸素を送り込む音と、血圧計測器の電子音、そしてローターやバイブレーターといった性具の動作音が規則正しく響くのみです。
視覚、聴覚、触覚、嗅覚といった感覚器官を封じられた青年に識別できるのは、もはや性器に伝う刺激しかありません。
暗闇の中、青年は「死にたい」と何度も思いましたが、それを実現させる手立てはもう残されていないのです。
機械とは実に残酷なものでした。
何度絶頂を迎えても、陰核と膣に与えられる刺激が止むことはなく、何度射精しても、ペニスに被せられたホールはその振動を止めることはなかったのです。
それから72時間、彼は口中に挿入されたチューブや排尿カテーテルの違和感、陰部に与えられる刺激に耐えながら、人間として最後の時間を過ごしました。
・・・・・・・・
経過観察より3日後、いよいよ『出荷』のときがやってきました。
天井から、輸送用ベッドとまったく同じ形をしたカバーがゆっくりと降り、青年の身体を封印していきました。
これから3ヶ月・・・ややもすると5ヶ月の間、青年は見ることも聞くことも話すこともできない状態のまま、輸送用ベッドの中に拘束されることになるのです。
両目を塞がれていても、人型のカバーが近づく様子が伝わるのでしょうか。
濁った視界の下、青年は拒絶の意思を示そうと指先でシーツをかきむしろうとしましたが、栄養剤の点滴に混ぜられた鎮静剤と関節固定用プレートのおかげでそれも叶いません。
そもそも、青年はこの『輸送』が終わったあと、どのような待遇を受けるのか全く知らされていないのです。
もしかしたら、どこかの富豪に引き取られて幸せになれるのかもしれませんし、肉奴隷として弄ばれるだけの人生が待っているのかも知れません。
カバーと寝台が密着する無慈悲な音が響くと同時に、8461番の姿が完全に覆い隠されました。
「よし・・・封入完了。出荷しろ・・・」
そう命じられた技師たちは、輸送用ケースをゴム製のベルトで台座に固定しました。
人型のケースから伸びる何本ものチューブが、彼の生命を維持する機械に接続されています。
運搬用のストレッチャーに乗せられたまま、コンテナに搬入されていくケースを見やりながら、医師が尋ねました。
「あの青年・・・8461番の名前はなんと言ったか、覚えているか?」
「名前など元々ないのです。あれは試験管から生まれた誰かのクローンですから」
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