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ヘッドギアと呼ばれるどう見てもバイク用のヘルメットにしか見えないそれがハードの一種らしく、今流行りになっているらしいVRMMOというジャンルのゲームがあることを紹介されたのは足が使えなくなって数年といったところか。如何にもこういったものに疎かった俺はそれを聞いてもあまりピンと来なかった。母親曰く「タカちゃんと焔達がアンタにって。」とのことだが、もしかして友人と妹からのプレゼントか?こういったゲームが病院生活を送るハメになる前から流行っていたのは妹から聞いているが・・・とりあえず放置しておこう。
翌日、我が妹と小学校時代からの友人が来て色々と準備させられた。個人的にはずっと寝ときたかったのだが妹に涙目でせがまれては断れない。どうやら久しく会えてなかった上に遊べなかったから少しでもお兄ちゃんと話せる機会を増やしたい!とかどうせなら一緒のゲームして遊びたい!とのこと、ついでにこのバイク用ヘルメットもどきは妹達がβプレイで勝ち取った恩賞らしい。とりあえず無理やり体を起こして一人ずつ頭を撫でてやる。あ、嬉しそう。
――《Free Role Life Online》
通称【FRLO】。中世を基盤とした剣と魔法のファンタジーというテンプレ世界観を自由に生きるというコンセプトの元製作されたVRMMORPG。レベル制、スキル制、正にテンプレのようなRPGなのだが何故か人気急上昇しているこのゲームだが、プレイヤーはその世界を冒険するもよし、生産活動に勤しみ我が作品を愛でるもよし、PKやPKKとかいうなんだかよくわかんないプレイをして楽しむのもよしといったかなり自由度の高いゲームらしい。それだけ言われたところでVR系ゲーム、特にMMORPG自体が初心者な俺にはよく分からないのだが。
ともかく明日、稼働開始とのことで妹達の支援を受けながらなんとか準備を完了した。
そして翌日ログイン。 んー、なんか利用規約が長ったらしいな・・・。 まあいい、すべて読み素っ飛ばしてとりあえず同意にサインして、 新規登録して…完了!
不意に意識が浮上し、周りを見渡すと真っ白い部屋。…凄い、凄いというのは聞いていたが此処まで凄いとは。特にちゃんと自分の足で立ててるのが一番いい!足を失った身としてはこれこそが一番嬉しいんですよ!・・・とりあえず落ち着こうかな。
しばらく部屋で待っていると凛とした声が流れてくる。
「ようこそ。 【FRLO】の世界へ。わたしはメイク部屋の案内人でもあり、 この世界を管理するシャンテと呼ばれる存在です。 では、 まずキャラメイクから始めましょう。」
凛とした女性の声が聞こえ目の前にウィンドウが開く。 そのまま説明された手順のまま設定していく。
まず名前だが・・・自分の名前からとればいいか。 次種族、・・・人間だな!エルフとかドワーフとか色々あるけどやっぱシンプルにいこう。 そして職業は・・・
結果
名前 アト
種族 人間 男 種族Lv1
職業 テイマー(魔物使い)Lv1
スキルポイント残18
スキル
棍棒Lv1(New!選択式初期所得スキル)
杖Lv1(New!テイマー初期獲得スキル
従獣魔法Lv1(New!テイマー初期取得スキル)
闇魔法Lv1(New!テイマーランダムボーナス初期取得スキル)
調教Lv1(New!テイマー初期取得スキル)
連携Lv1(New!テイマー初期獲得スキル)
鑑定Lv1(New!テイマー初期取得スキル)
識別Lv1(New!種族ランダムボーナス初期スキル)
装備 初心者の棍棒 おんぼろ角メット 簡素な腰巻き 布の靴 アイテムポーチ
所持アイテム 剥ぎ取りナイフ 初心者ポーション×30 初心者の杖
基礎ステータス
器用値 15
敏捷値 19
知力値 15
筋力値 18
生命力 15
精神力 15
できた。選択肢の一番頭にテイマーってあったしこれが一番似合ってそう。病院生活のおかげで動物と触れ合う機会も少ないしね。
ついでにおふざけで右頬に傷をつけてみた。ワイルドで格好良くなっていることを祈る。
「お待たせしました。では【FRLO】の世界をお楽しみください。」
凛とした声が響いて、視界が暗転する。・・・気が付けば周囲には溢れかえる程の人。どうやら他の皆さんもログインしている最中のようだ。
とりあえずどうしようか迷ってるとボーンと頭に高い音が響く。
「えっと、チャットはっと。」
ウィンドウを開き(慣れている人は思っただけで開かれるらしいが現存初心者の俺には無理)チャットメニューを開いてっと。
「おい、 ログインしたぞ。」
『おお、 やっとログインしたか! 中央の噴水広場で待ってるぞ!』
「あいよ、 今行く。」
すぐにその場から移動しよう。なんか目立ってるっぽいし。俺なんかしたかなぁ?
辿り着いた噴水広場前には他にも何人もの待ち合わせ人が居た。どれだろ。
「着いたぞ。名前はアト。 腰巻に上半身半裸が目印だ。」
『なんだよその格好・・・。 分かりやすいからいいけどよ。』
『お兄ちゃん! やっと来たんだ!! 待っててねすぐ見つけるからね!』
『兄貴やっと来たのか! 待ってろ焔より先に見つけてやる!』
待つこと数秒、俺の目の前にピンク色の髪をしたローブに身を包んだ小柄な少女と大剣を背中に挿してガッチガチの鎧に身を包んだ好青年、格闘家スタイルなのか身軽そうで真っ赤な胴着を着たボーイッシュな少女が出てくる。
「えっと・・・アトお兄ちゃん、だよね? ラムだよ。」
『お、お兄ちゃん合ってるよね!? 焔だよ!』
「ああ、アトお兄ちゃんで合ってるぞ。」
「や、やった!! 久しぶりのお兄ちゃんだ!」
「お、合ってたか。 昨日会った筈なのに疑心暗鬼に陥る程度に変わってたから驚いたぞ。」
「兄貴! 待ってたぜ!」
昨日ぶりに我が妹達と友人に会えた。ピンク髪ローブがラムこと儚史焔、鎧男がタカこと赤羽浩隆、そして最後の格闘家風の女の子がリゼこと儚史理瀬だ。
ついでに俺は香坂有斗、アルトと読む。理瀬と焔は親が再婚した時についてきた妹でリアル中学生だ。浩隆は俺と同じで18歳。ピッカピカの受験生。だが俺は脚が使えない要介護人間であり博隆は推薦でとっくに通っている。要するに無関係。
「いやにしても驚いたぜ。お前の言葉を頼りに捜してたら本当にそのまんまの奴が居てよ。」
「お兄ちゃんその格好何!? 初期装備でアイテムポーチ選んでるのはいいと思
うけど他はどうかと思うよ。」
「流石に私も今の兄貴の格好はちょっと・・・山賊プレイでもする気なのか?」
どうやら俺の姿は3人には不評なようだ。
うむ、たしかに周りを見渡しても上半身裸なんて俺しか居ないな。
「とりあえず装備新調する?」
「いや、まずは狩りに行きたいな。新調するにしても金が無い。」
「なんなら私が貸すぜ、と言いたいがβプレイヤーの特権でデータの持ち越しプレイで初心者援助しちまったら他の初心者も集ってくること間違いねぇしなあ。」
うむ、全く何のことだか分からんが妹から例えゲーム内だとしてもお金を借りるのは吝かではない。
特にこいつに借りるとしたら今後のゲーム生活に関わる。断固として拒否しておきたい。
「よし、じゃあ狩りに行くとするか!まずはアトの戦いの様子を見て慣れてもらってからだな。」
「ん、ああ。すまんな。」
「気にしないでいいよ! それに序盤のファイターができることなんて限られているしね!」
「にしても兄貴がファイター選ぶなんて思わなかったぜ。てっきり兄貴のことだから多大な爆弾を落としてくると思ったんだが。」
ん?どうやら勘違いされているようだな。
ファイターとは最初に選べる基本職の一つで聞いたまんま前衛職のものだと思う。
「ああ、すまんがファイターじゃないぞ。つかお前等はなんなんだ?」
「え、違うの? 私は火特化のソーサラーだよ!」
「俺は大剣使いのファイターだ。というか、ファイターじゃないならなんで棍棒なんて持ってるんだ?」
「私はハンターだぜ!兄貴、もったいぶらずに吐いちまいなよ。」
「お前はどこでそんな言葉を覚えたんだ・・・。テイマーだよ。」
ん?なんか3人とも固まってる。3人の顔の前で手を振ってみるが反応は無い。
そんなに驚くような選択なのかね?たしかに周りを見ればテイマーらしいテイマーは見えないけど。まさか、ねぇ・・・。
「お、お兄ちゃん。じ、実は・・・ね、その職業ね。」
「流石兄貴だぜ。こんな重い爆弾を落とすなんてな・・・。」
「お前、それ。β時代にレア職業として発覚した地雷職業だぞ・・・。」
え、マジ・・・?
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