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まるでコーヒーを買うように、13歳の女の子を買う時代–洗練された性産業は、日本人のモラルをいかに変えたか

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まるでコーヒーを買うように、13歳の女の子を買う時代–洗練された性産業は、日本人のモラルをいかに変えたか
スマホ1台で簡単に風俗店を予約できるようになり、性産業の”洗練化”が進んでいるようです。その裏では、未だ無くならない人身売買の存在も。人権活動家の藤原志帆子氏は、性の商品化にストップをかけるためには、人々の意識の変革が必要であると語りました。(2012)

【スピーカー】人権活動家 

【動画もぜひご覧ください!】
日本における人身取引の根絶に向けて: 藤原志帆子 at TEDxTokyo

人身売買は日本でもアメリカでも、未だに存在する

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藤原志帆子氏:最初は英語でスピーチをしようと思っていたんですけれども、いろいろな人と話をしまして、私の考えを日本中の人たちと共有したいと思いました。この内容は多くの日本人がまだ知らないことなんです。ですので、日本語でスピーチしたいと思います。

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今日私はセックスについてお話したいと思います。商業化された性、ビジネスとしてのセックスです。

アメリカの大学を卒業してから、私はワシントンD.C.の「ポラリスプロジェクト」という団体で、インターンから始めたんですけれども、人身取引を実際にされて被害にあった女性たちを救う団体で活動し始めました。これがその時の写真です。このような活動に至ったきっかけはいろいろあるんですけれども……。

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私はこの活動の中で、私と同世代のある韓国人の女の子のお世話をするということがありました。彼女はアメリカに人身売買され、売春をさせられて、そして私たちの団体に救助されました。なんとその前には東京へ人身売買され、東京の上野で売春をさせられていました。その後にアメリカに転売されて、そこで私たちが介入したわけです。

彼女は片言の日本語を話しました。そこで私たちは一緒に時間を過ごしたんですけれども、目の前で笑っている彼女は、私たちの国・日本に対してはものすごくものすごくつらい気持ちを持っている。彼女にとって私の大好きな国・日本というのは、悲しみと怒り、そんな感情であふれる対象であるということで、すごくつらい思いを感じた、そんな時間でした。

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人身取引、人身売買とも言いますが、これは過去にあった奴隷制であるとか、人の密入国、こういったものと誤解されがちです。しかし、これは人を支配し、売春や労働を強要させる、本当に大きな世界的な犯罪産業です。日本やさまざまな国は、この本当に大きな問題を抱えてしまっています。

日本でもこういった活動をしたいと思って、ワシントンD.C.での活動の後、私は8年前に日本に戻ってきました。この8年間の間に相談電話・ホットラインを通じて女性や子どもたちの人身売買被害者約120人の声を聞き取り、そして実際に支援をすることができました。

しかしながら、これは私たちの推計ですが、今この瞬間にも日本のどこかに5万4,000人以上の被害者、特に女性や子どもたちが声を上げられずに、搾取をされて生きているのです。私たちはこの子たちに手を差し伸べられないでいるのです。この子たちが今この瞬間に生きているということを、私たちはもっともっといろいろな人に伝えていかなければならないと考えています。

洗練されすぎた性産業

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ある1人の女の子のお話をしたいと思います。彼女はある日本の地方都市で、13歳の時に約2ヶ月間、毎日売春を強要されていました。加害者はさまざまなホテルに彼女を連れて行きました。彼女のおじいさんぐらいの年齢の男性から大学生ぐらいの男性まで、さまざまな男性が彼女を買いました。彼女が未成年であることは明らかなはずです。

彼女がそこに自分の意志でいるわけではない、というのも明らかなはずです。それでも彼らにとって、彼女はただの「商品」にしか過ぎなかったのです。この性風俗産業、性産業というところで、私自身ものすごい人身取引・人身売買の暴力を見てきました。

と同時に、女の子たちからさまざまな情報が入ってくる中で、この産業自体がものすごく洗練されているものだということにも気付いてきました。

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これは私自身の経験なんですけれども、ある日電車に乗っていた時に、隣に座った男性がスマートフォンで何か買い物をしていたんですね。ネットショッピングをしていた。

そこで「何を売ってるのかな?」と思ってちらっと見てみましたら、なんとその男性はデリバリーヘルス、エスコートサービスをちょうど注文しようとするところだったんですね。女の子の画像をスクロールして、選んで、ホテルを選んで、それから会う時間を決めて、数十分後にはその女の子がその男性のいるホテルやお家にデリバリーされている。なんて便利なんでしょう。

全部ではありませんが、学生証を持っていけば学生ならば学割をもらえるお店もあります。このようなことは、私たちの考え方、特に若者の考え方にものすごく影響を与えてしまっていると思うんです。

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ある国の調査によれば、特に10代の若者、私たちの子ども世代は「性の売買」や「性の商品化」に関して、どの世代よりもいちばんオープン。性を買うこと・売ることに対して「別に悪いことでもないんじゃない?」「何も感じないんだけど」。そんな意見が多いのが、子どもたち世代の10代。

と同時に、これは別の調査なんですが、比べるとちょっとおもしろいんですけれども、若者、特に男の子の3人に1人が「親密な関係を築く」ということに関してものすごく無関心。そういう調査もあります。

やはり若者のコミュニケーションに関して、「性の商品化」がものすごく影響を与えているのではないでしょうか。私たちは自分たちの性を、使い捨ての、安易なものに陥れてしまっているのではないでしょうか?

ハンバーガーを食べたいから食べる、コーヒーを飲みたいからすぐ買いに行く。これらはもちろん悪いことではないですけれども、このようにすごく簡単に手に入る満足として、性を見なしてしまっているのではないでしょうか。

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そして私たちが救った人身取引の被害者、13歳の日本人の女の子。このような子を救えないでいるこの社会。私は、この社会がとっても もどかしくて仕方がありません。でも、同時にまだまだこの社会は、子どもたちや私たちの今後のために、もっともっと変えられるし、良くしていける。そんな可能性をいっぱい秘めていると思っています。

商品化された性が一般的に溢れ、容易に手に入り、そして無秩序な商品化が進み、人身取引が加速してしまう社会。もしくは、子どもたちと一緒に性と向き合い、そして親密な関係を築くということを一緒に考える、そんな社会。

みなさん、私たちは一体どれぐらい、これから私たちの性を商品化していくのでしょうか。少し考えてみませんか? ありがとうございました。

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