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京都殺人妻〈筧千佐子〉ってどっかの市長さんに顔が似ていますね
京都殺人妻〈筧千佐子〉“後妻業”の「黒幕」は東大法卒〈40代〉弁護士
千佐子は先月68歳になった。カネ持ちの男を物色し、惑わせ、公正証書を書かせ、死に追いやり、残された土地などを綺麗に現金化して手中に収める――。こんな芸当が老婦一人でできるのか? 疑問に答えを出すべく取材を進めると「ある男」の存在が見えてきた。
入籍翌月の昨年暮れに四番目の夫・筧(かけひ)勇夫さん(当時75)を殺害した疑いで、先月、京都府警に逮捕された筧千佐子容疑者(68)。四人の夫に加え、少なくとも三人の内縁関係の男性からも公正証書遺言により莫大な遺産を相続していた。千佐子はいかにして「後妻業」というビジネスモデルを確立したのだろうか――。
北九州市で育ち、故高倉健氏も輩出した名門・福岡県立東筑高校を卒業した千佐子は、銀行勤めの頃に出会った大阪府貝塚市のRさんと一九六九年に結婚。夫婦で印刷業を営みながら一女一男を儲けたが、九四年にRさんと死別した。
後妻業のプロとして頭角を現したのは二〇〇六年。甲子園球場近くの兵庫県西宮市に多数の不動産を所有していた二番目の夫、薬品卸売業のMさんが死亡し、三億円相当ともいわれる遺産を相続したころだ。
複数の結婚相談所に登録した千佐子は、〇七年末に奈良県在住のOさんと公正証書を作成する一方で、〇八年二月に大阪府松原市のYさんと入籍。Oさんは同年三月五日に死亡、Yさんも同五月に死亡。わずか二カ月の間に約三億円もの荒稼ぎに成功する。
約四年の空白を置き、一二年三月に交際していた本田正徳さん(当時71)が大阪府泉佐野市内でミニバイク運転中に急死。残された血液から青酸化合物が検出された。
昨年九月には、交際中の兵庫県伊丹市の男性(同75)がレストランで食事後に急死。同十一月に四度目の結婚をし、同十二月二十八日に怪死した夫・筧勇夫さんの血液からも青酸化合物が検出された。
「二番目の夫・Mさん以降、亡くなった六人から千佐子容疑者が相続した財産は十億円近くに上るとみられています。ところが千佐子は先物取引や株、FX投資などに夢中になって大損を出したという情報もあり、生活する金にも困っていたフシがある。
実際、筧さんの遺族が千佐子に引き出されないようにロックをかけた預金の四分の三は自分の法定相続分だとして、今年六月に信用金庫を相手取って返還を求める訴訟を起こしています」(社会部記者)
当初は請求額が百四十万円に満たなかったため、千佐子は京都簡裁に提訴した。だが、筧さんが所有していた国債の償還などにより請求額が四百万円以上の見込みになったため、京都地裁に移送された。この原告、千佐子の代理人が大阪弁護士会所属のI弁護士だ。
弁護士十五人を抱える弁護士法人Mの共同経営者でもあるI弁護士は、一九七三年生まれ。静岡の県立高校を卒業後、進学した東京大学法学部を九七年に卒業して司法試験に合格。〇〇年に弁護士登録し、〇三年に早くも独立した辣腕経営者でもある。I弁護士と千佐子の関係は、捜査当局も重大な関心を寄せるほど長く、深い。
「千佐子が西宮のMさんと結婚していた〇六年頃には、既にI弁護士と接点があったことが確認されている。相当数の千佐子の遺産相続に関与して成功報酬を受け取っており、それが事務所の拡大にも寄与しているはず。正当な弁護活動と言われればそれまでだが、短期間に何件もの遺産トラブルを処理していたらおかしいと思うのが当然だろう。I弁護士が千佐子に何をどこまで指南していたかは分からないが、千佐子の秘密について一番詳しいのはI弁護士に違いない。現場の捜査員は相当怒っている」(捜査幹部)
〇八年に急死したOさんは鹿児島県出身で、近畿一帯で紳士洋品店やホームセンターを手広く経営していた事業家だった。その事業を長年手伝った後、帰郷していた弟はこう振り返る。
「兄は仕事が忙しすぎて、病気で入院していた妻の看病にあまり行けず、死なせてしまった。一人息子とはそれが理由であまりうまくいっとらんで、店を畳んでからは寂しい思いをしとったようです。そこを千佐子に付け込まれたんでしょう。男ばかりの七人兄弟の中でも、健康に一番気をつけとったし、持病のひとつもなかったのに……。急死の連絡を受けて鹿児島から奈良に駆けつけると、聞きもせんのに千佐子が『県警の刑事や検視官も来て、私もいろいろ聞かれたけど、死因を調べて問題ないと言って帰っていった』という。
通夜の席では、兄から遺産を全部やると約束されたと言い放ち、『生前は外食に連れて行ってもらったこともないぐらいケチやったから、もっと貯め込んでると思ったのに、預貯金が予想より少なかった』とまで言い出したんで、親戚一同ビックリですよ。やたらと『私には弁護士が付いている』と繰り返し言うのにも違和感を覚えました」
千佐子はOさんの遺族に弁護士の名前までは教えなかったというが、I弁護士が関わっていた可能性は高く、捜査当局もこの経緯に注目している。
超高級マンションに住む男
I弁護士とはどんな人物なのか。弁護士法人Mのホームページの自己紹介では、こうアピールしている。
〈根底にあるのは困っている弱い立場の人の見(ママ)方になること。青臭いかも知れませんが、そこは自分の信念として曲げずに貫いていくつもりです〉
だが、同業者の評判は芳しくない。「特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法」の元になった基本合意を国から勝ち取った弁護団の一人は、こう苦言を呈する。
「経済面を重視して、手っ取り早く儲けようという弁護士ですね。B型肝炎が儲かると分かった途端に大々的に宣伝を繰り広げて、我々のクライアントを横からかっさらっていった感じ。B型肝炎弁護団の中にはI氏の同期もいるのにね。弁護士同士の暗黙の了解で、同期から客の横取りみたいなことは、普通やらないもんですけどね。過払い問題でも、元々消費者側に立ってやってきたわけではないのに、最高裁判決が出て儲かると分かった時点で派手に参入してきた」
しかし、I弁護士はホームページで誇らしげにこうコメントしている。
〈高度な医学的知識を必要とする交通事故問題を数多く取り扱ってきた確かな実績から、B型肝炎給付金請求におけるご相談も、2年間で1000人以上の方々をサポートしてきました〉
同業者の冷ややかな批判もどこ吹く風で、I弁護士は稼ぎ続けている。登記簿謄本によれば、大阪市北区のマンションに六十五平米の一室を所有しているだけでなく、現在はJR大阪駅北側の超高級マンションの百平米の部屋に居住していることになっている。
千佐子の法的な用心棒と見られる「黒幕」に、これまでの経緯や見解を聞かねばなるまい。事務所前で、童顔で小太りのI弁護士を直撃した。
――週刊文春です。筧千佐子さんとの関係を伺いたい。
「あの、あの、すいません」
――I先生のこともきちんと書こうと思っています。
「お、おこ、お断りします」
慌てた様子でこう言い残すと、I弁護士は事務所の中に逃げ込んだ。
直撃翌日の十二月二日、京都地裁では千佐子が預金のロック解除を求めた民事訴訟の手続きがあった。法廷から出てきたI弁護士は、約十人の報道陣を見て猛ダッシュ。大きなキャリーバッグを引きずり、「分かりません!」と連呼しながらタクシーに乗り込んだ。
だが、千佐子のような後妻業のプロを支えているのは、I弁護士だけではない。最大の武器である「公正証書」の作成過程にも、信じられないほど杜撰な実態があることが分かった。
Oさんの遺族の元に、千佐子から届いた公正証書。一審の判決と同程度の法的拘束力を持つとされる公正証書の作成には、立ち会いの証人二人が必要だ。ところが本誌がこの証人を探し出して取材したところ、意外な事実が判明した。
「私の署名があるし、確かに証人を務めたのだろうが覚えていない。私は裁判所を退職後に『家庭問題情報センター』という団体に登録し、依頼に応じて公証役場に出向いて立ち会っただけ。年間数十件立ち会いがあり、時間も十分程度だから」(Oさんと千佐子の公正証書の証人)
サバの味噌煮を美味そうに
「公益社団法人 家庭問題情報センター(FPIC)」(本部・東京都豊島区)という団体がその母体。〈元家庭裁判所調査官たちが、その豊富な経験と人間関係の専門知識、技法を広く活用し、健全な家庭生活の実現に貢献することを目的として設立された〉(ホームページより)という。元裁判官でもある理事の一人は取材にこう答えた。
「公証役場からの依頼を受けて証人を派遣することはよくあります。証人はちょっとした小遣い稼ぎですね。第三者として立ち会うだけで中身には一切関係ない」
公証役場はどう受け止めているのか。
「当事者が証人二人を連れて来るのが望ましいが、飛び込みで来られるケースも多く、センターに頼んだり、公証役場が入居しているビルの他の会社の社員さんに頼んでハンコをついてもらうことも頻繁にあります。こうした場合の証人の報酬は交通費などを考慮して三千円から一万円。これは公証役場ではなく、作成当事者から払ってもらうことになる。法的拘束力の強い公正証書の証人が、中身も当事者のことも覚えていないのは問題だという批判ももちろんある。だが一方で、その後に訴訟になったときに、当事者が連れてきた証人は積極的にウソをつく可能性もあるので、評価が難しいところです」(検察官出身の元公証人)
小遣い稼ぎのアルバイト証人で公正証書が作成できる実態には驚くばかりだ。
現在も勾留中の千佐子は自分のカネで弁当を注文。サバの味噌煮を美味そうに頬張っているという。後妻業の闇の解明はこれからだ。
「週刊文春」2014年12月11日号
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