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丸太の輸出急成長  円安追い風、中韓で需要増

物流業者の保管場所に積まれた、輸出用の丸太=愛知県飛島村の名古屋港で(今村節撮影)

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 一ドル=一二〇円前後まで進んだ円安を追い風に、国産スギやヒノキなどの丸太の輸出が急増している。建設ラッシュの中国では、低価格木材の需要が急増。韓国では高級ヒノキが「健康に良い」と人気を集める。国産材は安価な外国産木材に押されて長らく生産が低迷していたが、海外で存在感を増してきた。

 愛知県飛島村の名古屋港に広がる材木置き場。あちこちに、長さ二〜四メートルの細い丸太が数百本積まれている。中国や韓国、台湾へ向けて船積みされる。「以前は輸入された巨大な丸太ばかり。最近は輸出用の細いものが増え、風景が変わった」。総合物流、フジトランスコーポレーション(名古屋市)の担当者は語る。

 同社は二〇一〇年から丸太の輸出を手がけ始めた。木材商社から受注、森林組合などから丸太を集め、港で荷詰めする。月間の取扱量は、この二年で二倍以上も増加。「輸出に目を向ける人が増えた」という。

 岐阜県森林組合連合会は今年、本格的に輸出を開始。中国、韓国へ数千立方メートルを輸出した。「国内で売れない上に円安。輸出した方が採算が合う」と担当者。日本の商社を通じて出荷するが、現地の製材工場から片言の日本語で直接取引を持ち掛ける電話が相次ぐ。長野県の北信州森林組合なども今年、中国向け輸出を本格的に始めた。

 貿易統計によると、名古屋税関の丸太輸出量は、一二年に約四千立方メートルだったのが一三年は約八千立方メートルと倍増。全国的には九州地方を中心に伸び、一三年の総輸出量は約二十六万立方メートルで一二年の約十一万立方メートルから二・四倍に。さらに今年一〜十月は約四十三万立方メートルに達し、前年を上回るペースをみせる。

 背景にあるのは旺盛な海外需要と円安だ。特に輸出が伸びているのが中国。木材輸出入を手がける住友林業(東京)によると、建設ラッシュが続く中国では国内産で建設需要が賄いきれず、輸入が拡大。特に円安で価格が下がった日本材は価格競争力が増した。現地ではコンクリート型枠材などに使われている。

 韓国でも、「日本産ヒノキは香りが良く、健康にいい」と、壁や床などの内装材で人気だ。

 輸出の中心は低価格の材木で、まだ量も少ない。このため、現時点では国内の木材価格を上昇させることには結び付いていない。

 ただ、今後も円安が続けば、安い国産の丸太は国内外で争奪戦になる可能性がある。国内各地で建設が進むバイオマス発電所の燃料として木材の需要が高まるためだ。岐阜県森林組合連合会の担当者は「これから国産の安い木材は品薄になるかもしれない」と予測している。

 (経済部・今村節)

 

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