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【産経抄】
12月13日
無類の汽車好きで知られた作家の内田百●は、一等車と食堂車を偏愛した。終戦直後の混乱がなおくすぶり、朝鮮戦争が勃発した昭和25年に百●先生、用もないのに特急「はと」の一等車に乗って大阪に出かけたほどである。
▼詳しくは、鉄道文学の金字塔である「特別阿房列車」をお読みいただくとして、借金までして出かけたものの、帰りは二等車(いまのグリーン車)に甘んじた。それだけ一等車は高根の花だった。
▼飛行機のファーストクラスは、いまも目をむくほど高い。東京からニューヨークまで最安値のエコノミークラスなら往復10万円を切るが、ファーストクラスでは200万円もかかる。ならば、サービスも最高級で、と望むのは人情というもの。
▼マカダミアナッツひとつでも洒落(しゃれ)た器に盛って客に供するのが当たり前という。だからといってナッツを袋ごと渡された大韓航空の副社長が、「お前は降りろ!」と身内の客室乗務員を罵倒し、飛行機を引きかえさせては洒落にならない。
▼韓国のみならず世界中で「ナッツ・リターン」と嘲(あざけ)られ、父親の大韓航空会長は「わたしが教育を誤ったようだ。申しわけない」と謝った。親の思い通りに子は育たぬが、朴槿恵大統領の父は、いまどんな心境だろう。
▼朴正煕大統領は猛反対を押し切って日韓友好の道を選び、「漢江の奇跡」を成し遂げた。娘はといえば、反日世論を気にして慰安婦問題にこだわり、安倍晋三首相との会談を避け続けている。経済は停滞し、仲間割れした側近たちは、泥仕合を演じている。父の路線を踏襲したのは、「言論弾圧」だけ、という論評まで出始めた。聡明な彼女のこと、今は仮の姿と信じたい。泉下の父をこれ以上、悲しませてはならない。
●=間の日を月に