米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設に反対して、先月の知事選に圧勝した翁長雄志(おながたけし)氏が、知事に就任した。

 翁長氏は再三、「(本土の)1億人は無関心、無理解でも生きていける。県民はそれでは生きていけない」と、沖縄に集中する米軍基地の問題の切実さを訴えてきた。就任会見では「日本の安全保障だからこそ、国民全体で考えてと訴えていきたい」と、全国に呼びかけた。

 新知事のアピールにもかかわらず、今回の衆院選でも、沖縄以外の場所で基地問題が語られることはほとんどない。

 1月の名護市長選、9月の名護市議選、11月の県知事選と県議補選(名護市区)。この1年、辺野古移設を争点とした沖縄の選挙は、いずれも反対派が制した。地元は「基地は受け入れない」という意思を発し続けているのだ。

 それなのに、政府は「移設はすでに知事の承認済み。粛々と進める」と、まるで決着がついたかのように振る舞う。

 翁長氏に敗れた移設容認派の前知事、仲井真弘多(なかいまひろかず)氏も退任目前、沖縄防衛局による移設計画の一部変更を承認。県民の猛反発を招いた。

 沖縄では衆院選の4選挙区すべてで、知事選と同様、移設容認派VS.移設反対派の構図となっている。土壇場の承認は、移設反対派の怒りに油を注いだ。

 一方、本土で辺野古移設は「沖縄の基地問題」として、遠くの見えない場所に置きざりにされている。

 海兵隊を沖縄に常駐させる軍事的メリットに、米国内からさえ疑問の声が上がり始めている。それでも移設推進を公約に掲げる自民党なら、せめて「辺野古移設が唯一の解決策」という自らの主張を全国民に問い、議論するべきではないか。

 亡くなる直前に沖縄を訪れた俳優の菅原文太さんは辺野古移設を批判してこう語った。

 「沖縄の風土も、本土の風土も、海も、山も、空気も、風も、すべて国家のものではありません。そこに住んでいる人たちのものです」

 「そこに住んでいる人たち」の切実な民意と全国に広がる無関心――。そこをつなぐのが国政選挙の役割でもあろう。

 これから私たちが選ぶ政権が、地元民意と誠実に向き合えるのか。それとも、本土の無関心に乗じて「国防、安保政策は政府が決めること」と無視するのか。今回の衆院選には、そんな選択も含まれなければならないはずである。