星空文庫

星空文庫

ラスト シーン

あなたの、言葉の紡ぎ方が好きでした。

雫は雨よりささやかに、手の甲を濡らして消えた。
冬の空は灰色を含んだ白で、椿の首が力尽きて落ちた。
切なくて、僕は彼女の黒髪を眺めていた。
唯一の色彩が刹那翻って、春のように綺麗だった。

緩い風が僕等の真横を吹き過ぎる。
音が溶けて消える。
彼女は不意に、瞬きをして睨んだ。

そろそろ、行かなきゃ。

木の葉が窓辺を離れるような可憐さで、彼女は彼方へ去った。
ただ残像が、ゆらゆらといつまでも淀んでいる。