タイトル以上の内容はありません。
Kindleストアに限らずだと思いますが、電子書籍で言うところの「期間限定無料」って、「期間限定で無料配布します」ではなく「期間限定で読めます」なんですよね。キャンペーン期間が過ぎると読めなくなる。
そもそも無料配信は読んでもらうことでその作品を知ってもらい、続刊や他作品の購買へ繋げるのが目的です。それで俺も色々と無料で読ませてもらってるのですが、俺の場合「期間限定無料」は面白いほど購入に繋がってません。*1
販促としての配信にはいくつかパターンがありまして、
- 無料。期間限定で読める
- 無料。制限はないがサムネイルに ”無料版” のタグが付く
- 無料。制限なし、タグなし
- 製品版を半額ないし99円や108円のキャンペーン価格で販売
3.4.で買った漫画の場合、まんまと続刊を買いまくっているのですが、1.2.の購入意欲の起こらなさが自分でも驚くほどで。理由を考えてみるとこれがまた驚くほどつまらない。消費者心理のひとつの例として読んでくださいな。
同じもん買わすなよ
「1.無料。期間限定で読める」のケース。
例えば1巻が期間限定無料で続刊を購入した場合、1~2週間もしたら1巻だけ読めなくなります。そしたら1巻を読むために買うの? っつーと俺は買いません。癪だから。
で、そういう「1巻だけ欠けている」状況になるのが嫌なので続刊も買いません。続きが気になって仕方ないほどに面白いなら別ですけど、俺の場合購入のハードルは逆に上がります。
すでに読んだ連載漫画の単行本を買うというのは「まとめて読める」というメリットがあるからいいんですが、単行本の形で無料配信されちゃった後だと、全く同じものを買うという行為に心理的ブレーキがかかるのです。
むしろ1巻の半分だけ無料とか、ダイジェストだけとか、情報が不足した状態での配信をされた方が俺は続刊を買うと思います。1巻と一緒に。
"無料版" タグが嫌
「2.無料。制限はないがサムネイルに "無料版" のタグがつく」のケース。
心理的には1.と一緒ですね。続刊を買ってずらっと表示したときに1巻だけ「無料版」って書いてあるのが気持ち悪い。でもそのタグを取るためだけに買い直せるかっつーたら、そんなん無理。→ なので、続刊も買わない。
自分でもこの「→」の繋がりがおかしいとは思うんですが、購買意欲が著しく萎えるのは事実。
そもそも期間限定ならまだしも、制限なしで配布したものに「無料版」タグをつけるインセンティブって殆ど無いと思うんですけどどうなんでしょう。
あわよくばタグを嫌がった客が有料版を買ってくれるかもしれないという期待? そういうスケベ心は逆に潜在的な顧客を逃しちゃいません?
逆に「続刊を買ったら "無料版" タグが取れます」とかだったら俺の続刊購入率は跳ね上がると思いますが。
あとサムネイル繋がりで話逸れるんですけど、集英社のこの横帯はどーにかなんないもんですかね。少年漫画は水色、は少女漫画はピンク、青年誌は黒。巻数が見やすいというメリットはありますけど、それ以上に表紙の台無し感すごい。
折角作者やデザイナーが気合をいれた表紙を作っているのに、一律でベタなタグを付けちゃうのってどーなのよ、と思います。こんなの付けるぐらいなら背表紙付けてくれ背表紙。多分まだどこの出版社も実現できてないから。
ちなみに結構頑張ってるなと思うのはスクエニ。カバー下に加え、カバー折り返しも収録されていて、ツボを押さえてるなあと。こういう事はちゃんとできるのに何でハイスコアガールの件はやらかしちゃったんでしょう。
もともと本にする前はデジタルデータなんですから、他の出版社がそれを出来てない事のほうがむしろ不思議だったりもしますが。何かビジネス的な事情があるんですかね。
「金を払った」という事によるバイアス
「4.製品版を半額ないし99円や108円のキャンペーン価格で販売」のケース。
もちろん「3.無料。制限なし、タグなし」が一番有り難いのですが、続刊を買っている率が一番高いのは多少なりとも1巻にお金を払っている場合です。
当たり前っちゃ当たり前の話なんですけどね。たとえ99円だろうと、金を払って買うからには興味を強くそそる物にしか手を出しませんから。
あとはサンクコストとかコンコルド効果的な心理も多少働いてるのかな、と思います。この辺りの言葉を使っちゃうと作品に対してネガティブな感じになってしまうのですが、そうではなくて、お試しで読んだ作品が「そこそこ面白かった」場合。
「ちょっとだけ続きが気になる」状態で放り出された場合、無料で読んだものだと「まあいいか」となるのに対し、金を払ったものだと「この先どうなるんだ」という心理が強く働きます。すでに投資をしていると途中で途切れることによる物足りなさが勝る。
これをサンクコストと言ってしまうのは適当では無い気がするのですが、こういう心理を表す適当な言葉はあるんでしょうかね。
あと3.は「無料だからと取り敢えず読んだ漫画がスゲー面白かった」という事がままあるので、各出版社様におかれましては是非とも続けていただきたく。
最近だと「宇宙賃貸サルガッ荘」「つらつらわらじ」は全巻買いました。*2
講談社の漫画部門は電子書籍に対して大分攻めてていいですよねえ。
まとまらない
"無料版" タグなんか気にならない人も沢山いるでしょうし、漫画に割けるお小遣いの限られた少年少女漫画の(本来の)読者は期間限定だろうと無料は嬉しいに決まってる。
なのでこれは「俺はこう」というだけの与太話の類です。
ちょっと面白いのがデジタルデータでも「無料タグが気持ち悪い」という心理が働く事ですかね。コレクター的な。
電子書籍の黎明期には「紙の温かみがないとダメ」みたいな事をいう人が大勢居て、というか今でも大勢居てその価値観は大いに理解できるところなのですが、それでも俺の中では電子書籍と紙の本は大分近いところにいるのだなと。
そのようにデジタルデータにも一定の価値を感じている一方で、スマホゲームのデータにはビタイチ課金する気にならない理由なんかも考えてみたいところです。*3
以上、まとまらないというか、まとめる気がないのでおわり。
各出版社も色々試してデータを集めているでしょうからそのうち適当なとこに落ち着くのでしょう。"無料版" タグが滅ぶ方向に収束すると俺は嬉しいんですけどね。