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異世界に来た最強系主人公 作者:上木 優

第11話 学長室にて

 それから、俺はカリアに学長室へと案内された。そして、学長室に行く途中に色々話も聞いた。

 まず、書庫の方はひとまず扉を閉めるそうだ。あんな現状だ、仕方あるまい。気絶した人たちは、意識のある5人とカリアを呼びにいっていた2人の女子生徒、それに保健委員と武術科の人たち、魔法科の回復系魔法を使える人たちを呼びかけてやるそうだ。

 保健委員や回復魔法を使える人たちはわかるが武術科の人たちはいるのか、と聞いたところ、扉を閉めるのにあの場所で介抱するわけにもいかない。それに、あの人数だと全員が保健室に入れるわけではないからな、だから体育館に運ばせるために呼んだんだよ、と答えた。

 そして俺は驚いたことがある。保健委員や体育館もそうだが、何よりこの世界に学校があることだ。普通、異世界ってのは学校という物がない……はずだ。なのにこの世界はあって、しかも俺がとばされた場所が学校の図書館の書庫だったというわけだ。

 この学校の名は国立育成学園というそうだ。なんでもこの学校を造ったのは先代勇者たちだとか。学校内には、7階建ての校舎、4階建ての校舎が2つ、図書館、鍛錬場、体育館、学生寮、グラウンドなど様々な物があるそうだ。

 それと、この世界のことも聞いた。先代勇者の魔導師のおっさんが書いていたとおり、昔から他種族と争っていてまだ続いていること。それに歴史や種族、昔の勇者たちの活躍のことも。

 俺は良いが、こういう知識に縁のない人はどうだろうか。いきなり知らない世界に喚ばれて他種族と戦ってくれなんて。絶対やらないやつとかいるだろ、と思った。

 けど、そんなとはなかった。なんと3日前に中央都市というところの神殿で勇者たちが召喚されたそうだ。たぶん、あのとき体育館に集まっていた教師・生徒だと思う。そして、その全員が他種族と戦うために特訓しているとか。

 そのうち、俺は校舎に入り、7階まで登り、学長室の前まで来ていた。中に入ると、対面式のソファーとテーブル、それにいつもそこに座っているであろう机があった。

「そちらに腰をかけてもらってもよろしいですか?」

 カリアはドアから離れた方のソファーに座ると、手で前のソファーへと座るよう言った。俺は頷いて座ると、さっきから出ている疑問を口にする。

「なんで俺が勇者だとわかったときから、そんなよそよそしいというか、変な感じなんだ?」

 俺のことを勇者だと知った瞬間、書庫で意識のあった5人はなんだか変な感じだったのだ。カリアも多少はそうだが。

「それは仕方がないことです」
「仕方がない?」
「ああ、勇者様といったら、他種族から救ってくれる、守ってくれる英雄のような方たちのことですから」
「ふ~ん、それで様付けで呼んだり、そんな感じな訳か」
「へんな感じというよりは、みな戸惑っておるんですよ。まさか、目の前にいた不審者が勇者様だとは思いもよらなかったんですよ」
「なるほどね」

 俺は納得した。それなら、理解出来なくもない。憧れっていえばいいかな、そんな人が思ったのと違うとそりゃ戸惑うわな。けど、

「あんたは違うんだな。てかやめたら?別に気にしないからさ」
「……やめたら、とは?」
「その喋り方。あんたは勇者を様付けはしているが、ヘんな感じは全くしないんだ。無理しての敬語使ってるでしょ?もしくは悪ふざけ?」
「…………」
「ここでの黙りは肯定の証だよ。まぁ、肯定しなくてもわかるけど」
「…………」
「もしも~し、何か喋ってくれない?」
「…………」
「あれ?」
「…………」
「返事がない。まるで屍のようだ」
「…………」
「すみません、なんか喋ってくれませんか?」
「…………」
「気分を害したなら謝りますから」
「…………」
「すみません、ほんと何か喋ってください」

 もう泣きそうですよ。無視ってほんと辛いですよ。なんで喋ってくれないの。
 そんなことを思っているとカリアの方から微かに声が聞こえた。俺はやっと喋ってくれたと思い耳を澄ます。

「ふ……」
「ふ?」
「ふふふ……」
「……」
「ふふふふふ……あはははははは!!!」

 突然カリアは自分のお腹を抱えて、大声で笑う。声は声でも笑い声だった。てかなぜ!?
 それからカリアは30秒ほど笑い続けた。

「ふふふ、ああ、すまないね」

 ようやく落ち着きを取り戻したカリアは、目にたまった涙を右の人指し指でぬぐい、俺に向き直る。

「ああ、こんなに笑ったのは何年ぶりぐらいかな」
「……なんで笑った?」
「ん?怒っているのか?」
「いいから、なんで笑ったんだ!」
「君の反応が面白かったから」
「てめぇ!!」

 俺はテーブルを踏み越えて、カリアに殴りかかろうとする。
 相手が女?知るか!無視がどれだけ辛いかわかっているのか?いいやわかってねぇだろうな!そしてその心を遊ばれた!だから殴る!とにかく一発殴る!
 しかしそれは決まらなかった。

「冗談だ、落ち着け」

 そういうと、カリアは俺の拳を片手で止める。

「なっ!?」

 俺は驚いた。避けるかいなすかはすると思っていたが、止められるとまでは思っていなかったのだ。
 この世界がどれくらいが平均的なレベルかは知らないが、それでも書庫でのことで自分は強いんだと思った。思っていた。けれどそうではなかった。完璧なまでに受け止められたのだ。

「とりあえず座り直せ」

 俺は大人しく従って座り直す。
 相手が自分より強いとわかった以上、一時的にでも大人しく従っていた方がよい。逃げられそうにないなら、なおさら。それに俺は、ここから逃げたところでどっちに逃げて良いかわからないからな。

「素直だな。もしかして止められたかとに落ち込んでいるのか?気にするな、なかなかの良いパンチだった。たぶんこの学園だと2番目、つまり私の次に強いぞ」
「そういうことじゃない」
「じゃあ、何でだ」
「お前に話す必要があるか?」
「……やはり君は面白いな」
「……」
「おっと、睨まないでくれないか。別に君をバカにしたわけでも、君の反応が面白かったわけでもないんだよ」
「……じゃあ、何だよ?」
「君が似ていたからだよ」
「誰に?」
「私の師匠に」

 それこそ誰だよ、と言おうとしたが、それはその後の言葉により言えなかった。

「先代勇者のひとりに」
「……は?」

 今なんて言った、こいつ?先代勇者のひとりに似ているって言ったのか?

「どうかしたか?」
「えっ、いや、すまん。もう一度聞く、誰に似ているって?」
「私の師匠、君の先代勇者のひとりに」

 うん。やっぱり聞き間違えじゃないな。って、

「いやいや無理だろ!」
「どうしてだ?」
「あんたが言ったんだろ!先代勇者がいたのは何年か前のことだって」
「ふむ、それで?」
「それで、あんたの見た目的な年齢も考えて、先代勇者のことを知っているのは無理があるわけだ」

 カリアの年齢は、見た目的には20代後半から30代前半がいいところ。どう考えても先代勇者がいた時に生きていたのは無理だろ。
 しかし、その考えは次のカリアの言葉に覆される。

「なるほど。だが、それは人類族の場合だろ」
「……は?」
「それは人類族の場合だろ」
「2度言わなくても聞こえているよ。じゃなくて、え?お前人類族じゃないの?」
「そうだ。って、気づいてなかったのか」
「どうやって気づけと」
「さっきよりは驚かないな、つまらん」

 つまらん!?つまらんて言ったよね、この人!てか、驚いてる。十分驚いているよ、めっちゃ。ただ、

「驚くのに疲れただけ」
「ふふっ、やはり君は師匠に似ているな」

 俺の答えに、カリアは笑いながらそう答える。
 いや~さぁ、起きてから色々あって無駄に体力を使いすぎたからね。はっきりいって相当疲れたんだよ。てか、

「だったら、お前は何の種族なんだ?」
「私は龍人族だ」

 龍人族、それは人類族と争っている種族のひとつだ。名前からもわかると思うが、いわゆるドラゴンのことだ。巨大な体に頑丈なうろこ、背中からは大きな羽が生えており、ブレスという口攻撃をよく使うのが特徴だ。

「なるほどね」
「驚かんのか?」
「何に?」
「人類族の姿とか、長い間生きていることとかにだ。不思議に思わんのか?」
「別に」

 龍が長生きとか、人になれるとかは、異世界ではよくあるパターンだしね。俺の読んだ小説でもよくあった。
 そんな俺の態度にカリアは、

「だんだん反応しなくなってきたな、つまらない」

 と言った。
 もう完璧つまらないって言ったよ!俺で遊んでない!?この人。てか、せめて小さい声で言えよ!隠す気ないだろ!
 俺は心でそう思いながらも、言う気力がないので、気にしてないという感じで話を続ける。

「そういえば、種族っていったいどれぐらい、いるんだ?」
「話してなかったか?」
「ああ」
「ふむ。種族は人類族をはじめ、海棲族、獣人族、森人族、妖魔族、吸血族、天翼族、龍人族、地精族、精霊族、幻想族、機械族の全12種族だ。その中でも龍人族は一番の長寿といわれている」
「へ~、なるほど」
「他にはあるか?」
「ちなみにあんたって年齢どれ───」
「他には!あるか?」

 カリアが俺の声を遮り低い声で言ってくる。完璧に怒っている。
 だったら自分の種族が長寿だとか言うなよ!というか相当年はとっているのはわかっているから、言っても良くないか?
 そんなことを思っていたが、黙っている間怒気が増しているのがわかるので、俺は違う質問をする。カリアが龍人族だとわかった時からの疑問を。

「じゃ、じゃあ、龍人族であるあんたが何でここに、敵である人類族のところにいて、人類族の世話をしているんだ?」
「ああ、それはな、先代勇者、私の師匠が恩人だからだよ」

 そして、カリアは昔のことを話す。
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