日本航空と提携交渉中のスカイマークは10日、全日本空輸にも提携を通じた支援を要請すると正式に発表した。日航との共同運航で年80億円としていた増収効果は最大で2倍になるという。日航単独の支援に難色を示していた国土交通省に背中を押された苦渋の決断だが、3社の思惑は交錯する。国内航空「第三極」の先行きはまだ見通せない。
「常識的にはありえない」「民間企業の論理とかけ離れている」――。スカイマークの西久保慎一社長は10日、日航と全日空の大手2社に共同支援を求める判断について、自らの本意ではないことを繰り返し強調した。
日航に相乗りする形で全日空が提携交渉に加わることで、当初は来年2月としていた共同運航の開始時期は早くても3~4月にずれ込む見込み。
日航との提携成立を目指していたスカイマークに待ったをかけたのは、許認可権限を握る国交省だ。民主党政権下で公的資金の注入を受けて再生を果たした日航がスカイマークと組んで事業を拡大することには、自民党議員からの反発が予想される。このため国交省は全日空を交えた共同支援か、全日空の単独支援に切り替えるよう促していた。
西久保社長は「今回は国交省に譲歩する」と語った。全日空との提携を渋ったのは「出資を求められる可能性がある」ため。西久保社長には国内の新興航空会社で唯一、独立経営を維持してきた自負がある。他の新興航空会社のように全日空の傘下に入る事態は避けたいとの思いが強い。
提携先としてまず日航を選んだのも、スカイマークへの出資を求めなかった点が決め手だった。公的支援で再生した日航は16年度までの新規投資について制約を受けており、スカイマークに出資したくてもできないという計算も働いたようだ。
全日空の勢力拡大に歯止めをかけたい日航は「国交省の要請であればやむを得ない」(同社幹部)との立場。全日空と相乗りでの支援の実現も後押しする構えだ。
全日空は「支援要請には真摯に対応する」(広報部)と話す。ただ、ライバルである日航との共同支援には否定的で、共同運航する路線の分担などを巡って3社が折り合うにはなお高いハードルが残されている。
国交省は国内航空の競争環境を守るために「第三極の維持をぎりぎりまで追求する」(同省幹部)方針。日航と全日空が相互にけん制することでスカイマークの経営の独立性を確保する狙いだが、犬猿の仲とされる大手2社による共同支援はこれまで例がない。14日の衆院選後には政界からの干渉も強まりそうで、交渉は曲折の度合いを増す可能性がある。
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