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オーバーナイト法の長所:L’avantage du pointage en bac

2012-10-03

お勧めレシピ・製法 パン ブログ

上の写真:オーバーナイト法で仕込んだチアバッタ生地(写真はオリーブ入り) 。
     一晩冷蔵庫で寝かし終えた状態。
     ルバンリキッド、オートリーズ、バシナージュ法を併用して日本で製造。
             Pâte à Ciabatta aux olives après le pointage en bac
    avec le levain liquide, l’autolyse et le bassinage.
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現在、フランスでは、
オーバーナイト法
によるパン作りが主流です。

フランスの個人経営の手作りパン屋さんの
70%がこのオーバーナイト法で
バゲット等の食事パンを作っています。

オーバーナイト法にも各種ありますが、
ここでいう主流となっているオーバーナイト法は、
ミキシング後、
一次発酵の際に
生地を一晩寝かせておく製法です。

ちなみに残りの30%のパン屋さんでは、
発酵生地(ルバンや老麺等含む)を使ったストレート法、
ポーリッシュ法、
成形後冷蔵発酵のオーバーナイト法、等で
食事パンを作っています。

オーバーナイト法(Pointage en bac)とは?
低温長時間発酵法とも呼ばれていますが、
名前の通り一晩以上生地を低温に置いて、
パン生地を仕込みます。
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<オーバーナイト法の長所>
L’avantage du poitage en bac
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<1>朝一番の仕事量を減らし、人にやさしいパン作りができる。
生地をこねて発酵を取る作業を前もって行えるので、
朝早くに出勤する必要がなく、生活にゆとりが生まれます。
On diminue le  travail dans la matinée, et 
la vie du boulanger devient  plus confortable.
(注:フランスではパン職人は以前は朝の01:00頃に出勤していましたが、
現在は04:00ぐらいから仕事を始めます。)

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<2>生地は長時間保存可能になり、仕事にゆとりが生まれる。
結果、労働環境の改善につながり、
パン職人という道が若者や女性にとって魅力的になる。
若者の雇用の促進・維持につながる。

前述の記述と少し重なります。
ミキシング後のパン生地は、
生地温度とイースト量を上手に調節してあげれば、
12~48時間は4℃の冷蔵庫で保存できます。
パン生地は好きな時に冷蔵庫から出して扱えるので、
絶えず焼き立てのパンをお店に提供し、
週末・祝日などの休日出勤や残業を減らすことができます。
On peut garder la pâte plus logtemps au froid et
on peut avoir la souplesse dans le travail.
Le métier du boulanger est plus attirant pour
les jeunes et les femmes.
On peut garder et promouvoir l’emploi dea jeunes dans la boulangerie.
(注:フランスでも若者は肉体的にきつい仕事を嫌う傾向にあります。
特に近年は女性のほうが男性よりもパン職人を希望する傾向にあります。
フランスの製パン学校での職人見習いの女性の比率は今や約6割あります。
若者のパン職人離れを防ぐ意味でも、パン屋での労働環境の改善は必須です。
パン屋さんは朝早くからの重労働の辛い仕事というイメージが
フランスでは根強く存在します。
だからこそ皆から尊敬されもしています。)
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<3>パン生地がより扱いやすくなり、作業効率が良くなる。
生地は冷蔵で冷えているため、分割や丸め作業がとても行いやすくなります。
特にバゲットを機械で分割・成形する際に威力を発揮します。
生地に負荷をかけず、見た目の美しいパンを安定して提供できるようになります。
La pâte devient plus facile à travailler, même avec la façonneuse, et
on peut avoir l’efficacité dans le travail.
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<4>パン生地の吸水率を上げることができ、
外側がクリスピーで、中のしっとりした美味しいパンになります。

On peut augmenter le taux de l’hydratation de la pâte, et
le pain et plus croustillant et moelleux, avec une mie grasse.
(注:ミキシング直後の生地はベトツイテ扱い辛くても、
長時間発酵を取ると生地に力がついて手にベトツカナイ状態になります。
吸水率の高いパン生地でも生地温度が低く、生地の力が管理されていると、
機械耐性も良くなります。
パン生地の力は
弾力性+伸展性+粘着性=パン生地の力
弾力性 Elasticité: 伸ばした生地が元に戻ろうとする力、
伸展性 Extensibilité,:生地がちぎれるまで伸びようとする力、
粘着生  Ténacité: 生地の粘り強さ、
とフランスでは理解されています。
弾力と伸展性は相反する力ですが、
パン生地は発酵を取ると
弾力が増し、
伸展性が低下、
粘着性の低下、が起こります。
ただし、パン生地を構成しているグルテンは休ませると伸展性が増します。
つまり、生地の発酵具合とグルテンの状態の見極めが、
パン生地の力のコントロールでは大切になります。
生地の力のコントロール法はミキシングの良し悪しで、
フランスの職人は大きく変えることがあります。
例として、生地の伸展性は分割後にベンチタイムなどでコントロールします。)
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<5>ミキシング不足を補える。
La pâte se lisse naturallement au froid pour compléter le pétrissage.
(注:冷蔵発酵中に、パン生地は力をつけていきます。
低速長時間ミキシングで薄く良く伸びるグルテン膜をしっかり作り、
さらに長時間発酵を取ることで、窯のびのする綺麗で美味しいパンになります。)
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<6>人件費を抑え、少数精鋭で高品質のパンが安定して供給できる。
On peut diminuer le coût de la main-d’oeuvre,
en gardant la qualité  du pain、avec le minimum de personnle possible.
(注:会社の経営者にとって人件費が死活問題なのは日本もフランスも一緒です。
初期の設備投資を高額にしてでも<ドウコンディショナー等>
人件費を抑制しようとするパン屋さんが増加傾向にあります。
フランスは社員の社会保障の税金を含めた人件費の高さは世界でもトップクラスで、
日本以上にある意味、パン屋のオーナーは大変です。)

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<7>その他の利点としては(前の記述と多少重なります)
Les autres avantages du poitage en bac
①ルバンリキッドとの相性が良い。
(注:ルバンリキッドとの併用で、
オーバーナイト法のメリットに相乗効果が生まれます。)
ルバンリキッドのメリットは以下をご参照ください。
 http://de-qualite.com/topics/?p=2761
②デメリットが無い(嘘の様で本当の話です)。
(注;メリットのある製パン法は色々ありますが、デメリットの無い製法は稀)、
③バシナージュ法で吸水を上げ、原価率を抑えたパンができる。
(注:バゲットの生地がこねあがってから水を加えるバシナージュ法で
 吸水率の高い、原価率の抑えられた、内層の美しい、パン作りができます。)
④イーストの使用量を減らす事ができる。
(注:逆にイーストを増やすと、発酵が加速して生地に弾力が増して、
成形の行い難い、扱い辛いパン生地になってしまいます。)
⑤クープの開きが良くなります。
⑥オートリーズ法との相乗効果が期待できる。
⑦生地の熟成が進み、おいしいパンになる。
(注:賛否両論ありますが、長時間発酵による酸味がつきます。)
⑧手作業(人である職人の経験)と機械作業(機械の性能の向上)の分業化を、
明確に行える。
(注:詳しい解説はあえて省略します。)
⑨職人の技術や経験を生かしたパン作りができ、
(注:大型スーパーや他店と差別化できます。)
⑩パン屋の利益率がアップし、従業員の雇用を確保できる。
(注:上記のオーバーナイト法の様々なメリットのため。)
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オーバーナイト法(Pointage en bac)の最重要ポイントは? 
オーバーナイト法でも
最も重要なポイントは
生地のミキシングです。
生地の見極めは
パン・菓子問わず、
最後は長年の職人の五感を使った経験が生きてきます。

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ここに挙げたオーバーナイト法のメリットは、
現在のフランスの小規模な製パン店の問題点を解決しえる、
革新的な製法として急速に広まっています。
今の言葉で表現すると、
フランスの製パンにおけるイノベーション Innovation ですね。
ブリオッシュ生地などの菓子パン生地にも大変有効なため、
今後ますますフランスでは、
オーバーナイト法が普及していく様子です。
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日本ではパン生地を
「寝かせる」と言いますが、
人間が寝ている間にも、
パン生地は冷蔵庫の中で力をつけてくれます。

オーバーナイト法は
人にもパンにもやさしい、
現在の生活環境に合った、
合理的な製法です。
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皆さん、長くて、わかりづらい文章、
ついて来れましたか?
ここまで読んでくれてありがとうございました。

実は自分自信がパンの奥深さについていけてない気がするので、
忘れないうちにまとめてみました。

フランス語で書いてると、外国語の復讐にもなるんですよ。
最近の勉強不足を実感して、反省してます。

フランスやスイスでは
パンはわかちあいのシンボル
なので
パン・菓子のレシピや製法も隠さずに、
皆様と分かちあえればと勝手に思っています。

素晴らしい海外・国内の先生方の技術や知識を独り占めする時代はもう終わりです。
人にもパンにも優しいパン作りをしていきたいです。

偉そうな事を言ってすいません。
でもこれが本音です。

塚田 将也

上の写真:窯いれ前のチアバッタ.
生地はオーバーナイト法で仕込んでありまだ冷えてますが、
オーブンに入れると・・・
Ciabatta avant l’enfournement

上の写真:オーブンの中のオーバーナイト法で仕込んだチアバッタ
窯のびがすごいです!
意外ですが、パン生地は冷えてる方が窯のびして、ボリュームがでます。
マドレーヌなどの焼菓子生地を冷やし、中心をより膨らませる原理に似ていますね。
熱で生地が固化するスピードを、生地を冷やして遅らせてボリュームを出します。
Ciabatta au four
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上の写真:焼きあがったばかりのオーバーナイト法によるチアバッタ
自分の中では一番好きな食事パンです!
外パリパリ、中シットリ&モチモチの究極形!
Ciabatta avec le pintage en bac

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