2014年12月10日
そば打ちについて
ゲームがおもしろくなるためには、体験者の脳内できちんとそば打ちが行われることが重要です。まずはこの図を見てください。
この図で大事なことが4つあります。
1)最初に未確定である
2)自分でそばを打つ
3)最後に結果が出る
4)ある個人の脳内で起こっている
最初に未確定である
実際に未確定であるかどうかに関わらず「結果が分からない」と感じられることが大切です。未確定であるためには下記のようなことに気をつけましょう。
・簡単すぎない
簡単すぎると取り組む前から結果が見えてしまいます。
・運の要素を入れる
運を入れることで未確定な要素は簡単に増やすことができます。ただし運の要素を強めすぎると、自分でそばを打っている感じが減ってしまうので、トータルでのそば打ちが損なわれる可能性があります。注意しましょう。
自分でそばを打つ
実際にそばを打ったかどうかに関わらず「自分でそばを打った」と感じられることが大切です。言い換えると「自分のせいでその結果が導き出されたと感じられる」ということになります。そばを打ったと感じられるためには下記のようなテクニックがあります。
・意味のある選択をさせる
選択させることは自分がそばを打ったと感じさせるためにとても有効な手段です。ただし、それが意味のある選択になっているかどうかに気をつけましょう。意味のない選択とは、100人に選ばせたら100人が必ず同じほうを選ぶような選択や、根拠なく当てずっぽうで選ぶしかないと感じられる選択のことです。
・意味のある動作をさせる
身体をつかった動作によって結果が導き出されると、自分でそばを打った感じを与えることができます。ただし、それが意味のある動作かどうかに注意する必要があります。意味のない動作とは、100人がやったら100人が必ず近い結果になるような動作や、何度やっても狙いに近づくことができないように感じられる動作のことです。
上記2つの例にはどちらも「難易度」というものが大きく関わっていることに着目してください。難易度というのはその選択や動作をすることの難しさのことです。簡単すぎても難しすぎても、自分でそばを打っている感じは損なわれてしまうのです。また、同じ難易度でも個人によって、それを難しいと感じるか、易しいと感じるかは異なります。対象をあらかじめ想定しておくことが大事です。
最後に結果が出る
最初に未確定だったものが、最後にはある程度確定すると感じられることが大切です。これがないとそもそもそばを打つこと自体が無意味に感じられます。結果を感じられるようにするには下記のようなテクニックがあります。
・勝敗をつける
自分のそば打ちによって、何かに勝ったり負けたり順位がついたりします。とてもわかりやすい結果が出ます。ただし、勝敗がつくのがいつになるか分からないような状況だと、結果が出るように感じられなくなるので注意しましょう。
・ルールに評価される
自分のそば打ちが、明確なルールによって評価され、結果が出ます。ただし、ルールが曖昧だったり不明だったりすると結果が出ないのと同じように感じられるので注意しましょう。
ある個人の脳内で起こっている
「おもしろい」という反応は個人の脳内で起こります。すべては実際にどうであるかではなく「そう感じられる」ということが大事です。だから、「誰に」そう感じさせたいかというのがとても重要。ここが曖昧だとどこを目指しているのか分からなくなってしまうので気をつけましょう。
「おもしろさ」は相対的
以上でそば打ちについての説明は終わりですが、おもしろさは相対的であるという視点は割と大事かなと思っています。たとえば「三目並べ」は、それが「結果が未確定」で「自分が結果に寄与できる」と感じられている人の脳内では「おもしろい」が生じます。でも必ず引き分けにできるやり方に気づいてしまうと、未確定でもなく、自分でそばを打つ余地もなくなるため、おもしろさは生まれなくなりますよね。
で、三目並べがおもしろくないゲームかというと、そうではない。三目並べでそばを打てる人と、打てない人がいる。それだけなんです。
あと、僕はそばよりうどんが好きです。
この文章は
Board Game Design Advent Calendar 2014への寄稿として書きました。
- junsasaki 