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米議会が報告書「CIAの過酷な尋問 違法行為も」
12月10日 11時15分

米議会が報告書「CIAの過酷な尋問 違法行為も」
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アメリカ議会は、同時多発テロのあと、ブッシュ前政権のもとでテロ容疑者に行われた過酷な尋問について、違法な行為が一部であったとしたうえで、正確な情報を得るための効果的な手法ではなかったと結論づける報告書を公表しました。

アメリカ議会上院の情報特別委員会は、2001年の同時多発テロのあと、ブッシュ前政権のもとでCIA=中央情報局がテロ容疑者に行っていた過酷な尋問について、5年半にわたって調査し、9日、報告書を公表しました。
報告書では、CIAが容疑者から自白を引き出すため、顔に大量の水を注ぐ「水責め」や1週間以上にわたり睡眠を妨害する行為など過酷な尋問の実態を記し、39人の容疑者にこうした取り調べを行ったとしています。
そのうえで過酷な尋問は一部が法律を逸脱していたほか、正確な情報収集の成果に結びついておらず効果的な手法ではなかったと結論づけています。
さらに、CIAが過酷な尋問の実態や成果をホワイトハウスや議会などに正確に報告していなかったなどと批判しています。
情報特別委員会のファインスタイン委員長は9日、議会上院で「一部は拷問だった。今回の報告書はアメリカが、こうした行為を2度と行わないというメッセージを発するものだ」と述べ、報告書公表の意義を強調しました。
しかし、アメリカ政府は、拷問の実態が明らかになったことで、中東などでアメリカに対する反発が高まることを懸念しており、大使館や海外のアメリカ軍基地に対して、テロなどの不測の事態に備えて厳戒態勢を取るよう指示しています。

議会上院の情報特別委とは

オバマ大統領は、2009年の就任直後から人権を侵害しているとして国際社会の強い批判を受けてきた、グアンタナモ収容所の閉鎖を掲げるとともに、CIA=中央情報局がテロ容疑者に行ってきた過酷な尋問を拷問だとして禁止することを打ち出し、前のブッシュ政権との決別を鮮明にしました。
こうしたなか、2009年3月から、CIAの過酷な尋問について調査を開始したのが議会上院の情報特別委員会です。
情報特別委員会は、CIAなどの情報機関がアメリカの憲法や法律にのっとって正しい諜報活動を行っているか監督する役割を担い、内部文書の提出を命じたり情報機関の当局者を呼び出したりする権限を持っています。
15人の議員からなり、このうち上院で多数派の民主党が8人、共和党が7人で、民主党のファインスタイン議員が委員長を務めており、オバマ民主党が調査を主導してきました。

「報告書」機密文書から公開へ

調査はCIAなどから提供された電子メールや公電なども含む630万ページにわたる文書を委員会が調査し、およそ6700ページの報告書にまとめ、今回、525ページの要約版が公開されました。
報告書は公開される義務はなく、政府によって機密文書に指定されていましたが、アメリカ政府高官によると、ことし初め、情報特別委員会からホワイトハウスに機密指定を解除するよう打診があり、オバマ大統領が公開することを決断したとしています。
その結果、報告書全体の93%について、機密が解除されたということです。
野党・共和党を中心に、報告書を公表すればアメリカの国益を危機にさらすといった批判や懸念が根強くありましたが、オバマ大統領は、拷問などの手法を使った負の遺産を公表することで、前のブッシュ政権時代の行き過ぎた手法に対する再発防止への決意を国内外に示すねらいがあるものとみられます。

米大統領「拷問は二度としない」

オバマ大統領は9日、発表した声明で、「残酷な方法による取り調べは、アメリカの価値観にそぐわず、テロとの戦いや安全保障上の国益に合致しない」としています。
そして、「拷問による取り調べは、アメリカの国際社会での地位に深刻な打撃を及ぼし、同盟国と共に国益を追求していくことを困難にした」として、大統領の責任で拷問を禁じ、二度と使うことはないと強調しています。
そのうえで、「完璧な国家などない。しかし、アメリカの強さは、率直に過去と向き合い欠点をただすことだ」として、報告書を公表することで、ブッシュ前政権時代に行われた行き過ぎた行為の再発を防止したい考えを示しました。

CIA長官「間違いを犯した」

CIAのブレナン長官は9日、声明を発表し「容疑者の拘束と尋問の計画には欠陥があり、われわれは間違いを犯した」と過ちを認めました。
その一方で、議会の報告書が「過酷な尋問は、正確な情報を得るための効果的な手法でなかった」と結論づけたことについては、「機密情報が得られテロ計画を未然に防いだこともある」と反論したほか、CIAが議会に対し、意図的に事実をゆがめて報告していたという指摘にも同意できないなどと主張しています。

人権団体「違法尋問の徹底捜査を」

ロンドンに本部を置く国際的な人権団体、アムネスティ・インターナショナルは、今回の報告書について、違法な尋問を行った関係者に対する徹底した捜査を求めるとする声明を発表しました。
声明では「国連の拷問禁止条約では、いかなる場合においても拷問は正当化できないとされており、拷問を許可したり実施したりした関係者は捜査されなければならない」として、違法な尋問を行った関係者を厳しく追及するよう求めています。
そのうえで、アメリカ政府には「CIAで起きた人権侵害のすべてを明らかにする必要がある」として、今回は公開されなかった報告書の一部を含め、すべて調査結果を明らかにするよう求めています。

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