秘密保護法:法律の要旨

2014年12月09日

 特定秘密保護法の要旨は次の通り。

 <法の目的>

 我が国の安全保障(国の存立に関わる外部からの侵略等に対して国家及び国民の安全を保障することをいう)に関し、特に秘匿が必要な情報を的確に保護する体制を確立する。

 <特定秘密の指定>

 閣僚ら行政機関の長は(1)防衛(2)外交(3)(スパイ行為などの)特定有害活動の防止(4)テロ活動防止−−などに関する事項のうち、公になっておらず、漏えいが安全保障に著しい支障を与える恐れがあるため、特に秘匿が必要な情報を特定秘密に指定する。

 <指定の有効期間>

 特定秘密指定の有効期間は5年以内。期間満了時に5年を超えない範囲で延長でき、通算30年以内まで延長できる。内閣の承認を得れば30年を超えて延長できるが、60年を超えることはできない。ただし▽武器、弾薬、航空機その他の防衛の用に供する物▽現に行われている外国政府または国際機関との交渉に不利益を及ぼす恐れのある情報▽情報収集活動の手法や能力▽人的情報源に関する情報▽暗号▽外国政府などから60年を超えて秘密指定することを条件に提供された情報▽政令で定める重要情報−−は60年を超えて指定できる。閣僚らは秘匿する必要のなくなった時は有効期間内でも速やかに指定を解除する。

 <特定秘密の提供>

 閣僚らは、▽他の行政機関が安全保障上特定秘密を利用する必要がある▽民間事業者に安全保障上特定秘密を利用させる特段の必要がある−−と認めた時は特定秘密を提供できる。また、この法律と同様の秘密保護措置を講じる外国政府や国際機関に特定秘密を提供できる。さらに▽衆参両院が秘密会などにより公開しない場合で、安全保障に著しい支障がないと認めた時▽刑事事件の捜査、公判維持のために裁判所に提示する場合▽誰も情報開示を求めることができないとの条件で情報公開・個人情報保護審査会に提示する場合−−は特定秘密を提供する。

 <取扱者の制限>

 特定秘密の取り扱い業務は、閣僚らが実施した適性評価により特定秘密を漏らす恐れがないと認められた者に限る。ただし首相や閣僚、内閣官房副長官、首相補佐官、副大臣、政務官らは適性評価が不要。

 <適性評価>

 閣僚らや都道府県警本部長は、特定秘密を取り扱う▽行政機関職員▽警察職員▽行政機関との契約により特定秘密を扱う民間事業者−−らが情報を漏らす恐れがないかどうか適性を評価する。評価から5年を経過し、引き続き特定秘密を扱うことが見込まれる者や、評価後に特定秘密を漏らす疑いが生じた者は再度、適性評価する。

 適性評価は▽特定有害活動やテロ活動との関係(家族や同居人の氏名、生年月日、国籍、住所を含む)▽犯歴や懲戒の経歴▽情報の取り扱いに関する違反などの経歴▽薬物の乱用や影響▽精神疾患▽飲酒の節度▽経済状況−−について同意を得た上で調査。結果を評価対象者に通知する。情報を漏らす恐れがないと認められなかった時は、評価の円滑な実施を妨げない範囲で理由を通知する。評価対象者は書面で苦情を申し出ることができ、申し出ても不利益な扱いは受けない。閣僚らは特定秘密保護以外の目的で評価結果や個人情報を利用してはならない。

 <特定秘密の指定等の運用基準>

 政府は特定秘密の指定と解除、適性評価の実施に関し、統一的な運用を図るための基準を定める。首相は基準の策定や変更の際、有識者から意見を聞いた上で案を作成し、閣議決定を求めなければならない。

 首相は毎年、秘密の指定と解除、適性評価の実施状況を有識者に報告し、意見を聞かなければならない。首相は秘密指定などに関し、行政各部を指揮監督する。必要がある時は閣僚らに特定秘密情報の資料の提出を求め、改善を指示できる。

 <国会への報告>

 政府は毎年、有識者の意見を付して、特定秘密の指定と解除、適性評価の実施状況を国会に報告し、公表する。

 <国民の知る権利>

 法律を拡張解釈して国民の基本的人権を不当に侵害することがあってはならず、国民の知る権利の保障に資する報道・取材の自由に十分配慮しなければならない。出版・報道に従事する者の取材行為は専ら公益を図る目的があり、法令違反または著しく不当な方法でない限りは、正当な業務行為とする。

 <罰則>

 特定秘密の取り扱い業務に従事する者が業務で知り得た特定秘密を漏らした時は10年以下の懲役、または情状で10年以下の懲役および1000万円以下の罰金。特定秘密の取り扱いに従事しなくなった後でも同様。未遂は罰する。過失により情報を漏らした者は2年以下の禁錮または50万円以下の罰金。国会の秘密会や裁判などで秘密の提供を受けた国会議員、裁判官ら公益上必要で秘密を知った者が漏らした場合は5年以下の懲役、または情状で5年以下の懲役及び500万円以下の罰金。過失で漏らした場合は1年以下の禁錮または30万円以下の罰金。外国の利益や自己の不正利益を図る目的で、人を欺く行為、暴行、脅迫、窃取、施設への侵入、不正アクセス行為などにより特定秘密を取得した者は10年以下の懲役、または情状で10年以下の懲役及び1000万円以下の罰金。未遂は罰する。特定秘密の漏えいを共謀、教唆、扇動した者は内容に応じ5年以下または3年以下の懲役に処する。

 <付則>

 公布の日から1年以内に施行する。施行から5年経過後、特定秘密を保有したことがない行政機関は秘密指定機関から除く。ただ5年以降に保有する必要が新たに生じた機関は政令で定め、特定秘密を指定できる。

 政府は、秘密指定の基準などが安全保障に資するかどうか独立した公正な立場で検証し、監察できる新機関設置を検討し、措置を講じる。国会に提供した特定秘密の保護方策は国会で措置を講じる。

 <秘密指定の対象>(別表に挙げた23項目)

(1)防衛(10項目)

 (1) 自衛隊の運用またはこれに関する見積もりもしくは計画もしくは研究

 (2) 防衛に関し収集した電波情報、画像情報その他の重要な情報

 (3) (2)に掲げる情報の収集整理またはその能力

 (4) 防衛力の整備に関する見積もりもしくは計画または研究

 (5) 武器、弾薬、航空機その他の防衛の用に供する物の種類または数量

 (6) 防衛の用に供する通信網の構成または通信の方法

 (7) 防衛の用に供する暗号

 (8) 武器、弾薬、航空機その他の防衛の用に供する物またはこれらの物の研究開発段階のものの仕様、性能または使用方法

 (9) 武器、弾薬、航空機その他の防衛の用に供する物またはこれらの物の研究開発段階のものの製作、検査、修理または試験の方法

 (10) 防衛の用に供する施設の設計、性能または内部の用途

(2)外交(5項目)

 (1) 外国の政府または国際機関との交渉または協力の方針または内容のうち、国民の生命及び身体の保護、領域の保全その他の安全保障に関する重要なもの

 (2) 安全保障のために我が国が実施する貨物の輸出もしくは輸入の禁止その他の措置またはその方針

 (3) 安全保障に関し収集した国民の生命及び身体の保護、領域の保全もしくは国際社会の平和と安全に関する重要な情報または条約その他の国際約束に基づき保護することが必要な情報

 (4) (3)に掲げる情報の収集整理またはその能力

 (5) 外務省本省と在外公館との間の通信その他の外交の用に供する暗号

(3)特定有害活動の防止(4項目)

 (1) 特定有害活動による被害の発生もしくは拡大の防止のための措置またはこれに関する計画もしくは研究

 (2) 特定有害活動の防止に関し収集した国民の生命及び身体の保護に関する重要な情報または外国の政府もしくは国際機関からの情報

 (3) (2)に掲げる情報の収集整理またはその能力

 (4) 特定有害活動の防止の用に供する暗号

(4)テロリズムの防止(4項目)

 (1) テロリズムによる被害の発生もしくは拡大の防止(以下この号において「テロリズムの防止」という。)のための措置またはこれに関する計画もしくは研究

 (2) テロリズムの防止に関し収集した国民の生命及び身体の保護に関する重要な情報または外国の政府もしくは国際機関からの情報

 (3) (2)に掲げる情報の収集整理またはその能力

 (4) テロリズムの防止の用に供する暗号

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