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【特定秘密保護法】

特定秘密保護法10日施行(下)捜査権 市民も罰則対象に

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 「特定秘密保護法は工作員やテロリスト、スパイを相手にしている」

 「国民は基本的には関係ない。報道が抑圧される例があったら(首相を)辞める」

 安倍晋三首相は十一月のテレビ番組で、こう強調した。

 秘密保護法は、秘密を漏らした公務員らに最高懲役十年を科すが、秘密を取得した側への罰則も設けた。「外国の利益を図る目的」や「国民の安全を害する目的」で、暴行や脅迫などを用いて不正に秘密を取得すれば最高懲役十年。首相が工作員やスパイが相手だというのは、この条文が念頭にあるのだろう。

 だが、法律は、ほかにも罰則の対象を示している。漏えいや取得を共謀したり、そそのかす「教唆」、あおり立てる「扇動」をすれば最高懲役五年の厳罰だ。「スパイ目的」などの限定はない。市民団体のメンバーや研究者、報道関係者が漏えいをそそのかしたとみなされれば、罰則や捜査の対象になる可能性がある。

 法律は、報道のための取材は「法令違反または著しく不当な方法と認められない限りは正当業務」と定めたが、正当でないとみなされることもあり得ると解釈できる。過去には沖縄返還時の日米密約をスクープした記者が「正当な取材を逸脱」して情報を入手したとして、国家公務員法の守秘義務違反の教唆容疑で逮捕され、有罪になった。何が「不当」かを判断するのは捜査側の裁量だ。

 市民の活動には、報道のような規定もない。

 捜査機関が罰則付きの法律を根拠に、捜査権を使って市民の活動に入り込む可能性は常にある。

 最近では、適用例のない刑法の私戦予備・陰謀の疑いで男子大学生が事情聴取され、関連先としてフリージャーナリスト宅も家宅捜索された。容疑の定義はあいまいで、捜査に疑問の声も出た。政党ビラや反戦ビラを配布し、住居侵入容疑で逮捕される事件も近年続いた。逮捕や立件はされなくても、家宅捜索などの強制捜査や任意聴取を受けるだけで影響は大きい。

 秘密保護法が施行されれば、捜査機関は捜査の新たな根拠を持つ。市民らの情報収集活動が制約され、国民の「知る権利」が脅かされる懸念は消えない。 (この連載は金杉貴雄が担当しました)

 

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