「Listening――あなたの声を聞きたい」は、記事をもとに読者の皆さんと議論を深める場所です。たくさんの自由で率直なご意見をお待ちしています。利用規約はこちら

Listening:<特定秘密保護法>「特定秘密、使いづらい」 官僚からも疑問

2014年12月09日

 10日に施行される特定秘密保護法を巡って、「そもそも必要か」との疑問が政府内にくすぶっている。内閣法制局は法案の検討段階で「必要性が弱い」と指摘していたが、現場の官僚からも「特定秘密は使いづらい」との声が聞こえてくる。【日下部聡、青島顕】

 「『何でもかんでも特定秘密にするのでは』という懸念が指摘されているが、あり得ない」。ある中央官庁の幹部は、そう語る。「特定秘密はガチガチに管理され、取り扱える担当者や持ち出しに制限がかかる。あまり増やすとかえって仕事が回らなくなる」

 国家公安委員会の規則では、特定秘密文書は厳重な保管庫に入れ、取り扱う担当者や閲覧場所を制限し、運ぶ際は二重封筒に入れるなど細かい扱いが定められた。同じような仕組みは他省庁でも導入されるとみられる。

 省庁には以前から「極秘」「秘」など内規に基づく秘密があり、同法の施行後もこれらは存続する。「公開できない情報の多くは、従来通りの秘密として扱うことになるのでは」と、この幹部は話す。秘密制度に詳しいNPO法人・情報公開クリアリングハウスの三木由希子理事長は「特定秘密以外の秘密の指定や解除は省庁の裁量なので、秘密のまま廃棄される恐れもある。こうした秘密に対するルール作りも必要だ」と話す。

 内閣情報調査室(内調)が毎日新聞の情報公開請求に対して開示した文書によると、内調が作った法案の素案に対し、内閣法制局は2011年9月、「立法事実が弱いように思われる」と指摘している。立法事実とは、法律の必要性の根拠を示す事実。01年の自衛隊法改正で、自衛官らの情報漏えいに最高で懲役5年を科す防衛秘密制度が導入されたが、これまで適用されたのは1件だけで、容疑者の1佐は起訴猶予処分だった。法制局はそれを理由に「(新たな法制による)重罰化の論拠になりにくい」と主張したのだ。

 秘密保護法の意義について、外交・安全保障の情報収集に携わる官僚や政治家たちは「外国の情報機関から情報をもらいやすくなる」と口をそろえる。第1次安倍改造内閣の官房長官だった与謝野馨氏は、毎日新聞の取材に「日本で国の安全を脅かすような事態が起きていない今、この法律は必要だろうか。官房長官当時、こういう法律の話は聞いていない」と疑問を投げかける。

利用規約

投稿は利用規約に同意したものとみなします。
不適切な投稿の管理者への通報はコメント下のから行ってください。

最新写真特集