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【特定秘密保護法】

「戦争も統制も嫌」 秘密法施行 各地で抗議

プラカードを掲げ、特定秘密保護法反対を訴える元山仁士郎さん=9日、東京・永田町で

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 特定秘密保護法が10日午前0時、施行された。東京都内では9日夜、各地で市民が反対の声を上げ続けた。防衛・外交に関する秘密が大量に隠され、情報を扱う人の適性評価は家族の国籍にまで及ぶ。あたかも、情報が統制され市民の言論が封じられた戦時中の社会を思わせる。首相官邸前や大学で、人々は法律の施行中止や廃止を訴えた。

  

 「言うこと聞かせる番だ、オレたちが」。官邸前でのデモは午後七時に始まり、十日午前零時を回るまで続いた。冷え込む夜空の下、若者ら約一千人がヒップホップの音楽に乗せ声を上げた。その中に、国際基督教大三年の元山仁士郎(じんしろう)さん(23)の姿もあった。主催する学生有志の会「SASPL(サスプル)」のメンバーだ。

 秘密保護法では、公務員や防衛産業従事者など特定秘密を扱う人物が適性評価の対象になる。「学生は職業選択の自由を脅かされる。友人に帰国子女が多いけれど、海外体験まで調べられるのかと不安がっている」と心配する。

 沖縄県の出身。地元では、米軍の新型輸送機オスプレイの配備予定を日本政府は否定し続けた。「核、生物兵器が持ち込まれても、沖縄の人たちは情報にアクセスできなくなる」

 戦前の軍機保護法に似ていると感じる。沖縄戦当時を知る祖父からは、隣村でスパイ容疑で殺されたという数十人の死体を見たと聞いた。「戦争は嫌だ、何か言えなくなるのは嫌だ。沖縄も日本も学んだはず。それを否定する方向に向かっているようで怖い」。だから、あきらめない。「歯止めをかけるため、声を上げ続けます」 (辻渕智之)

◆「次第に無関心…怖い」 情報公開推進 NPO辻利夫さん

 千代田区の専修大では、NPO法人「情報公開クリアリングハウス」のシンポジウムに約五十人が参加。三木由希子理事長、法政大の杉田敦教授らが秘密保護法の問題点を指摘した。

 テーマは「国家権力と国家秘密と情報公開」。クリアリングハウス副理事長の辻利夫さん(67)=写真=も真剣な表情で聞いた。前身の市民団体「情報公開法を求める市民運動」の一九八〇年設立当時からのメンバー。「国民が主権者として政府の活動を監視できることがすべての前提だが、ますます覆い隠されてしまう」と危ぶむ。

 原点は学生時代。公害や薬害の原因に関わる情報などを、企業や国、自治体が明らかにしないことに疑念があった。今では各自治体が情報公開条例を持ち、二〇〇一年には情報公開法も施行された。しかし…。

 「秘密保護法で報道が萎縮し、市民も政府批判など言いたいことを言えなくなり、次第に無関心にならないか。それが一番怖い」(土門哲雄)

◆「体が拒否反応示した」 「牧師の会」共同代表 朝岡勝さん

 「特定秘密保護法に反対する牧師の会」も千代田区で、ノンフィクション作家らを招き反対集会を開催。会の共同代表、朝岡勝さん(46)=写真=は、同じく牧師だった祖父が治安維持法で逮捕され、一年ほど身柄を拘束された。

 「秘密保護法が出てきたとき、法的な中身を考えるより先に体が拒否反応を示した」

 言論や信仰の自由の弾圧に使われた治安維持法と類似点が指摘される秘密保護法が成立した昨年十二月六日、「再びキリスト教徒が弾圧に遭うのでは」と危機感を持ち、知人と会をつくった。国会前のデモにも参加し、政府や国会議員に廃案を求め続けてきた。

 キリスト教徒は世界で多くの信者がいる。「日本では少数派の私たちも口を閉ざしては法案を押しとどめられない。海を越えた信者のネットワークで、秘密保護法は世界から見てもおかしいと訴えたい」。廃止になる日まで、粘り強く活動を続ける。(宮畑譲)

 

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