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【政治】

秘密保護法が施行 外務・防衛 6万件指定

2014年12月10日 07時03分

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 国民の「知る権利」を侵す恐れのある特定秘密保護法は十日午前零時に施行された。国家安全保障会議(日本版NSC)や外務、防衛両省、警察庁など十九の行政機関が、特定秘密の指定や秘密を扱う公務員や民間業者への適性評価を始める。安全保障政策を担う外務、防衛両省の秘密指定は計約六万件に上る見通し。

 特定秘密は、国の安全などに関わる情報で、特に秘匿する必要があるとの理由で選別された現行の「特別管理秘密」(特管秘)を中心に最初は指定される。総数は昨年末時点で約四十七万件。特管秘以外や、新たに入手した安保関連情報なども特定秘密に追加され、際限なく増え続けていくことも懸念される。

 これまで職務上知り得た秘密を漏らした場合、国家公務員法の守秘義務違反(最高懲役一年)などの対象だったが、特定秘密の漏えいは最高懲役十年の厳罰が科される。秘密を知ろうとした側に対する最高懲役五年の罰則も設けられた。

 防衛省の指定対象は約四万五千件。自衛隊の作戦などに関する情報で「防衛秘密」として他の特管秘と区別され、法施行とともに特定秘密に移行したとみなされる。外務省は外国からの提供情報など約二万一千件を対象に、大部分を特定秘密にする方向で手続きを進める。特管秘全体では約九割が衛星情報という。

 適性評価は、特管秘を扱う資格者(約六万人)や防衛産業の関係者を中心に、犯罪歴や精神疾患、借金、家族の国籍を調査する質問票の提出を求める方法で、一年後までに順次進める。

◆広すぎる対象範囲

 特定秘密保護法の成立から一年。安倍政権は運用基準を策定し、監視機関を設置したが、国民の「知る権利」を侵害する懸念はほとんど払拭(ふっしょく)されていない。にもかかわらず、予定通り運用が始まる。運用基準などで懸念が消えないのは法の根幹が変わっていないからだ。

 特定秘密の対象は外交から警察関係まで幅広い。拡大解釈可能な表現が盛り込まれ、指定は政府側が都合よく行うことも可能。そんな秘密の漏えいを防ぐため、厳罰で臨む。秘密を知ろうとした市民や記者も、最高懲役五年の罰則対象となる。特定秘密は永久に指定され続ける恐れがある。

 政府によると、近年重大な情報漏えい事件は起きておらず、現状で罰則強化は必要ない。

 「知る権利」を守るため、厳重に管理するのは防衛や外交の重要な情報に限定するべきなのに、範囲が広すぎる。歴史の検証を受けるため、一定期間を経れば、必ず公開されるような制度もない。

 同法はあまりに問題点が多い。国民の不安の声を考えると、同法はやはり必要ないと言わざるを得ない。 (金杉貴雄)

(東京新聞)

 

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