平昌五輪:IOC「分散開催、決定権は平昌に」

平昌五輪組織委「無言の圧力だ」

 国際オリンピック委員会(IOC)は平昌五輪組織委員会に対し、そり種目(ボブスレー・リュージュ・スケルトン)分散開催に伴う外国の代替競技場候補地12カ所を来週中にも通知することにした。

 これは、IOCのリンドベリ調整委員長が8日(韓国時間)、AP通信のインタビューに「五輪そり種目を行える外国の競技場12カ所のリストを来週までに平昌五輪組織委に伝える。IOC提案を受け入れるかどうかの決定権は平昌にある。決定期限は来年3月末だ」と語ったもの。

 同調整委員長は12カ所の地名については公表していない。しかし、外信はIOCのリストに日本の長野、米国のソルトレークシティーとレークプラシッド、カナダのカルガリーとウィスラーなどが含まれていたと報じている。同調整委員長は「このうち一部の競技場は、あすにでも五輪を行える」と述べた。

■なぜスライディングセンターなのか

 平昌アルペンシア・リゾートに建設中のスライディングセンター(そり種目競技場)は今年3月初めに着工され、現在は伐採工事が終わっている状態だ。予想される建設費用は1228億ウォン(約133億円)。国が921億ウォン(約100億円)、江原道が307億ウォン(約33億円)を負担し、2016年10月に完成する予定だ。これは、平昌の6新設競技場のうちで最も進行速度が速い。それでもIOCがスライディングセンターを取り上げているのは、建設コストが最も掛かるにもかかわらず、五輪後の活用が非常に難しいためだ。開催地の財政負担を軽減することが中核課題の一つとなっているトーマス・バッハIOC会長の改革案「アジェンダ2020」に最も合致する施設というわけだ。

 かつて五輪競技が行われたスライディングセンターは現在、ほとんどが「無用の長物」状態だ。06年冬季五輪が開催されたイタリア・トリノは1億ドル(現在のレートで約120億円)を上回るスライディングセンターの維持費に頭を痛めていたが、結局廃棄処分にした。長野のスライディングセンターも五輪以降はほとんど活用されていない。

 リンドベリ調整委員長は「外国に既にあるスライディングセンターを利用すれば、平昌が建設費のかなりの部分と、年間300万-500万ドル(約3億6000万-6億円)の維持費を削減できる」と指摘した。

■IOCの本気度は?

 平昌五輪組織委のある関係者は「IOCの主張は強制力のない勧告案的な性格のものだが、事実上は無言の圧力だ。IOCは現在、簡単には拒否できない条件や拒否したときに甘受せざるを得ない不利益などをちらつかせ、平昌に対し全面的に圧力をかけてくる可能性が高い」と話す。 IOCが代替競技場を12カ所も挙げたのも、平昌が長野の競技場の老朽化や(地震などの懸念による)地理的状況を理由に拒否した場合に備えた戦略とみられている。

 IOCのこうした動きは、次期冬季五輪の開催とも無関係ではない。来年7月にマレーシア・クアラルンプールで開催されるIOC総会で決まる2022年冬季五輪開催地候補は、中国・北京とカザフスタン・アルマトイのアジア2都市に絞られた。欧州の都市は財政負担を理由に次々と断念しているからだ。

 現況のままなら、26年冬季五輪の招致都市選定も難航が予想される。現在、招致希望を表明しているのは札幌の1カ所だけだ。26年の冬季五輪開催地が決定されるのは19年だが、招致希望都市は17年から準備に入らなければならない。あるスポーツ界関係者は「IOCは危機感を感じているため、平昌で『アジェンダ2020』の成果があれば、26年大会の招致合戦に欧州や北米諸国が手を挙げると期待しているのだろう」と話している。

姜鎬哲(カン・ホチョル)記者
<記事、写真、画像の無断転載を禁じます。 Copyright (c) The Chosun Ilbo & Chosunonline.com>