水曜日 , 10 12月 2014
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元日本代表監督ザッケローニ、イタリアの育成システムを批判

2014年12月10日
カルチョ・ニュース

元日本代表監督アルベルト・ザッケローニのインタビューが、8日のイタリア紙「イル・ジョルノ」に掲載されている。イタリアクラブの競争力低下が指摘される近年、ザッケローニは若年層の育成方針に警鐘を鳴らしている。

―ザッケローニ、あなたは2010年から2014年のブラジルW杯まで日本で生活していました。この4年間でイタリアサッカーは大きく後退しています。原因はどこにあるのでしょう?
とてもシンプルな問題だと思う。私たちに以前のような資金力はない。にも関わらず、これまでと同じやり方を通している。

―新しい財源を生み出すべきなのか、それともやり方を変えるべき?
アニェッリ、ベルルスコーニ、モラッティ、センシ、クラニョッティ、タンツィ…。サッカー界に多大なる投資をしてきた偉大なファミリーはもういない。彼らに代わる資産家の注意を惹くには、きちんと機能する仕組みを作り出さないといけない。

―イタリアのクラブも以前とは違います。インテルはインドネシア、ローマとボローニャはアメリカ資本によって運営されています。しかし、石油系企業や中東の資産家がイタリアのクラブに目を向けないのはなぜでしょう?
アメリカ人のように、すでに事業を展開している者たちはイタリアに自分たちのやり方を持ち込もうとしている。だが中東の資産家たちは状況が違う。彼らの事業はデータとして計測済みで、その目的は果たされている。

―では、イタリアのサッカーはこれからどうやって再生していけばいいのでしょう?
資金力がないのなら、日々のトレーニングに目を向けて、若手の育成に力を注ぐしかない。外国では選手を外から獲得する必要はそれほどない。獲得するにしても、かなり慎重に動いている。

―育成年代のやり方で機能していないと思う部分は?
今の下部組織を担当している指導者たちは、地方の小クラブを率いる監督のようだ。試合に勝つことばかり考えていて、成長の基本プロセスが軽視されることも珍しくない。

―詳しくお願いします。
セリエAでもBでも攻撃と守備、どちらもできない選手が増えている。監督の選んだシステムの中で、自分の役割を頭では理解しているのかもしれないが。

―それに気付いたのは?
試合を見ていれば分かる。10点中8点はサイドから失点している。守備陣はボールばかり見ていて自分が抑えるべき相手を捕まえていない。FWがフリーでボールを受ければ、もうゴールだ。基本を見失ってしまえばマルディーニやカンナバーロは生まれない。

―あなたは少し前から多くを語らず、観察する方に力を入れているように見えます。
チェゼナティコの育成年代の練習も視察に行った。12歳の選手が階段でトレーニングしたり、肩に重りを担いで練習している。まったく信じられない光景だった。

バッジョやデル・ピエーロに「重りを背負ったり、階段で練習したことがあるか」と聞いてみるといい。繰り返すようだが、多くの若年層の監督たちはトップチームと同じようなやり方をしている。勝利だけを目指すやり方だ。当然それでは選手は育たない。

―では前線の話にしましょう。
ひとつ良い例がある。バロテッリだ。彼の才能に疑いの余地はないだろう。だが90分のうち80分間ゴールに背中を向けていれば、得点を量産するのは難しい。

―優秀なストライカーに必要な動きは?
私は得点王に輝いたストライカーを3度生み出している。もっとも、この分野でマエストロと呼べるのはゼーマンだ。

―その秘訣を教えて下さい。
FWなら常にボールと相手を見ること。走る方向を決めて、自分にパスを出せる選手に背中を向けていないといけない。

―この動きができるプレイヤーも減っているのでしょうか?
できる選手もいるが、多くの選手はできていない。

―育成が上手くいっていないことが、外国から選手を買ってくる理由なのですか?
どういったタイプなのか、どの程度の技量を持っているのか、そういったことを一切考慮せずに選手を獲得している。加入記者会見の必要すらない選手まで獲得するようではいけない。

―この分野はかなり悲惨な状況ですね。では総括を。
才能豊かな選手はいつの時代にもいるものだし、これから先もいなくなることはない。そういった部分で私たちは優れている。ならば自分たちの持っているものを活用するべきだ。

まずは現代的なクラブを作り上げること。ドイツやイングランドのように外国の資本がイタリアにも入ってきているだろう。仕事をきちんとこなせば、お金は後から付いていくる。

―2006年までドイツは倒せる相手でしたが、今や手の届かない存在になりました。
ドイツでは優秀な監督が若年層でも仕事をしている。

―リーグのレベルやカップ戦の成績、代表チームの実力を見てもドイツの方が上なのは事実です。では今の私たちに何ができるのでしょう?
下部組織からトップチームまで、ピッチの中の出来事に力を注ぐべきだ。この凋落から目を背けるわけにはいかない。今のイタリアのサッカーには、スピードもインテンシティもない。爆発的なダッシュやマークを外す動きも欠けている。

―セリエAにそういった欠点のない選手はいるのでしょうか?
ポグバ。

―イタリア人では?
マルキージオ。

―バッジョやデル・ピエーロに匹敵する才能を持ったイタリア人は?
ピルロ。

―ビダルがいればユベントスの中盤が完成しますね。つまりローマよりユーベの方が上なのでしょうか?
一番の問題は国内リーグの状況が、70年代〜80年代に戻ってしまったこと。スクデットを争うチームが多くても2チームしかいない。90年代には6〜7チームあって「セブンシスターズ」と呼ばれたものだが、もう1世紀も前のようにすら感じる。

―あなたはこの4年間、東京で生活していたはずです。それなのに驚くほどイタリアのサッカーについて分析ができている。セリエAを見るために朝の4時に起きていたのですか?
そういうことも何度かあった。しかし、それはある監督の仕事ぶりを確認するためだったんだ。アントニオ・コンテだよ。

―なぜコンテなのでしょう?
彼のユベントスにはインテンシティ、力強さ、激しさ、決断力、正確さといった部分が色濃く出ていた。これらは現代サッカーにおいて欠かせない要素だ。

―コンテのイタリア代表もユベントスのようになるのでしょうか?
全力でその仕事に取り組むだろう。今言えるのはそれだけだ。

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