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食品が値上げラッシュ、なぜPBは据え置き? 

東洋経済オンライン 2014/12/9 05:30 田嶌 ななみ

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セブンの「しょうゆヌードル」価格は121円に据え置かれ、日清食品の「カップヌードル」(現在173円)に割高感も

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 近頃、連日のように食品メーカーによる値上げのニュースが発表されている。秋以降に発表されただけでも、ニチレイ、テーブルマーク、味の素が冷凍食品の値上げを発表。また、ロッテ、江崎グリコ、森永乳業、明治はアイスクリームを、日清食品、東洋水産、サンヨー食品などは即席麺を、ハウス食品がカレールー・レトルト食品等を来年から値上げすることになっている。

 この値上げラッシュの中、静観を決め込んでいるのがスーパー、コンビニなどのプライベートブランド(PB)商品だ。即席麺を例に取ってみると、メーカー品(ナショナルブランド、NB)はおおむね2015年1月1日出荷分から一斉値上げになるのに対し、PBについてイオン、セブン&アイ・ホールディングス、ローソンは「今のところ値上げの予定はない」(各社広報)と口をそろえる。

■ PBの値上げは困難

 価格を据え置く理由について、「極力お客様に迷惑がかからないようにコスト削減で対応する」(イオン広報)と話す。消費増税後、財布のひもが堅くなっている消費者にとっては、PB商品の価格据え置きは願ってもない。しかし、これによってメーカー、卸、小売りのいずれかが原材料高騰分をかぶる必要が出てくる。

 小売りのPB商品も、実際のところ製造は食品メーカーが受託している。PB商品は広告宣伝費や販促費がかからないといった利点はあるものの、メーカー品よりは納品価格が安く、採算性が低いとされる。ただ、メーカー品であってもPB商品であっても、原材料高は同様に収益を圧迫する。

 小売り業界は寡占化が進み、大手小売りチェーンの発言力は増す一方。PB商品の納品価格値上げをメーカーや卸が望んでも、小売り側が店頭価格を据え置くつもりであれば、納品価格の値上げは容易ではない。

 しかし、小売り側は「どちらかに負担がかかるようなやり方はしていない」(イオン広報)と話す。また、メーカー側も「PB商品の製造を受託することで、メーカー品の納入権を得ているケースもある。PB商品とメーカー品を合わせた商売でバランスを取っている」(食品メーカー大手)という。今回はコスト増を両者で”痛み分け”するようだ。

 ただ、今後はメーカー品のみ値上げされることで、これまでも安価だったPB商品との価格差がより鮮明になってくる。となれば、メーカー品の販売数量が減りかねない。

■ カップヌードル価格はPBの1.5倍に

 例を挙げると、現在、セブン-イレブンにおいて日清食品の「カップヌードル(77グラム)」は173円(税込)であるのに対し、セブン&アイのPB商品「しょうゆヌードル(81グラム)」は121円(同)。「カップヌードル」は15年1月1日出荷分から6%の値上げを予定しており、店頭価格は10円程度値上げされる見込み。そうなればPB商品の1.5倍程度の価格となる。

 値上げを発表する食品メーカーのリリースには、「自助努力の限界を超えた」「企業努力では現行の価格維持が大変厳しい」など窮状を訴える文言が目立つ。やっとの思いでメーカー品の値上げにこぎ着けられても、消費者の価格に対する目はシビアだ。PB品との価格差が広がるほど、厳しい戦いを強いられることとなる。

 アベノミクスがもたらした円安は、食品業界全体に大きな苦悩をもたらしているといえそうだ。

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