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オリンパス事件の光と影 その14

2014年12月10日

オリンパス事件の光と影 その14


 オリンパス事件の「指南役」として起訴されていた中川昭夫氏の判決が、12月8日に東京地方裁判所(斉藤啓昭裁判長)で言い渡されました。

 判決は懲役1年6ヶ月(求刑3年)、執行猶予3年、罰金700万円(同1000万円)で、各報道機関は機械的に伝えていただけですが、「かなり注目すべき」判決だったと感じます。

 そもそもオリンパス事件とは、2007年3月期~2011年3月期の有価証券報告書に年度ごとの純資産を416億円~1178億円不正計上した金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)で、菊川剛会長(当時)ら3名の元役員と法人としてのオリンパスの有罪が2013年7月に確定しています。

 中川氏はオリンパスに対してこれらの巨額損失隠しを積極的に立案・主導し、オリンパスと「共謀」して有価証券報告書に虚偽を記載したとして起訴されていました。

 つまりオリンパス事件とは「会社ぐるみ」ではなく、事件発覚時に時効になっていなかった有価証券報告書の提出責任者だった菊川氏ら3名の元役員が、中川氏と同じく公判中の横尾氏ら3名の「指南役」に主導され、「共謀」して損失隠しと有価証券報告書の虚偽記載を行ってしまったことになっています。

 その理由は、オリンパスが「会社ぐるみで主導した犯罪」となれば会社のイメージが大きく傷つき、当局も上場廃止などの制裁を加えなければならず、事件発覚直前の2011年9月末に長短合わせて5600億円もあった銀行貸出の返済が危ぶまれていたからです。

 だから東証は恐るべき素早さで上場維持を決定し、特捜部を含む当局は外部の「指南役」が積極的に損失隠しを立案・主導したと決めつけ、銀行はせっせと貸出を回収して2014年9月末までに残高を3000億円まで圧縮してしまいました。

 中川氏の裁判では(横尾氏らの裁判でも同じですが)、中川氏がオリンパスの巨額損失を認識しており、またオリンパスからハッキリと依頼されて積極的に損失隠しを主導したかどうかが徹底的に争われました。

 すでに執行猶予つきの有罪が確定している菊川氏らや、菊川氏らと共に損失隠しの実務に関わったオリンパスの現役社員らや、何よりもオリンパスの現経営陣らが揃って中川氏や(姿をくらませたままの)佐川氏が積極的に主導したとの「証言」を繰り返しました。

 ところが公判が進むうちに、そもそも外部の人間である中川氏が各期の有価証券報告書の内容について具体的に説明や相談を受けているはずがないことや、オリンパスは多数の外資系証券会社などから多岐にわたる金融商品を購入して複雑な損失隠しを行っていたため全貌(損失総額)を認識することは不可能だったとか、損失隠しに使われたとされる英国のジャイラス買収はオリンパスに直接持ち込まれていた案件だったなどが明らかになってきました。

 斉藤裁判長は、中川氏がオリンパスの巨額損失を認識していたと認定したものの、一連の損失隠しを共謀したとは認定できないとして、損失隠しの「幇助」で有罪として求刑よりかなり軽い判決を言い渡しました。

 金融商品取引法に「幇助」はなく、そもそも検察庁の訴因にもなかったのですが、斉藤裁判長は訴因を追加させず刑法の「幇助」を適用して有罪としてしまいました。被告(中川氏)の不利益にならないからとしていますが、かなり強引です。

 ところでこの斉藤裁判長は、菊川氏ら3名と法人としてのオリンパスに有罪を言い渡した裁判長でもあります。中川氏も裁判官忌避の申立を一旦は検討したようです。

 斉藤裁判長は、菊川氏ら3名と法人としてのオリンパスに対して中川氏ら「指南役」が積極的に損失隠しを主導し、菊川氏らは(いわば)言いなりになっていただけとの認定のもとに判決を言い渡していたはずです。

 その斉藤裁判長が、今度は積極的に損失隠しを主導していたと自ら認定していた「指南役」の中川氏に対し、共謀は認定できないとして「幇助」に格下げしてしまったのです。

 自動的に菊川氏らが「単独犯」に格上げされたことになり、そうなると「会社ぐるみ」だったかどうかの判断もまた違ったものになった可能性もありますが、一事不再理なので気にするなということなのでしょう。

 日本では証券市場に関わる刑事事件はすべて証券取引等監視委員会の特別調査課が独自捜査し、東京なら東京地検特捜部に告発して(実際は最初から協力して)起訴する手順になっています。1993年以来この手順で起訴された刑事事件は今日まで167件あり、現在公判中の9件を除いた158件すべてで有罪が確定しています。

 つまり証券取引等監視委員会と特捜部がタッグを組んで起訴した事件は、双葉山の倍以上の連勝記録を更新中となります。絶対に無罪にしてはならないとのプレッシャーが検察庁にも裁判所にもあるような気がします。

 そのプレッシャーの中では「かなり注目すべき」判決だったと感じます。中川氏が控訴するかどうかは不明ですが、「共謀」を否定された検察側はどうするのでしょうね?


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■闇株的見方 » 社会 | 2014.12.10
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