秘密保護法:10日施行 「知る権利」侵害の恐れ

毎日新聞 2014年12月09日 21時19分(最終更新 12月10日 00時07分)

特定秘密保護法を巡る懸念
特定秘密保護法を巡る懸念

 国家機密の漏えいに厳罰を科す特定秘密保護法が10日、施行される。安全保障に著しい支障を与える恐れのある情報を政府が特定秘密に指定して秘匿する。昨年12月に国会で採決を強行し批判を浴びたことから、安倍政権は施行に先立ち運用基準を策定、「適正な運用」を強調する。しかし根本的な改善には至らず、政府に不都合な情報の半永久的な隠蔽(いんぺい)や、国民の「知る権利」侵害への懸念が根強いままの実施となる。

 菅義偉官房長官は9日の記者会見で「国民の意見を踏まえ、政令や運用基準の制定などの準備を慎重に、丁寧に進めてきた」と強調。引き続き国民の理解を得るよう努める考えを示した。安倍晋三首相は11月18日のTBSの番組で、同法の運用で「表現の自由」の侵害や報道の抑圧が起きれば辞任すると明言している。

 特定秘密は外務、防衛両省や警察庁、公安調査庁など19行政機関が、安全保障上の秘匿が必要と判断した▽防衛▽外交▽特定有害活動(スパイなど)防止▽テロ防止−−の4分野55項目の情報に限って指定する。しかし基準はあいまいで、政府が指定を恣意(しい)的に広げ、政治家・官僚の不祥事の隠蔽や、情報公開の阻害につながりかねない、との懸念が残る。

 指定期間は5年ごとに更新すれば、原則30年まで可能。その後は国立公文書館に移されるが、指定期間中でも首相の事前同意があれば廃棄できる。指定は内閣が承認すれば60年まで延長でき、暗号など7項目は例外として半永久的に延長できる「抜け道」もある。

 特定秘密を取り扱う公務員や民間事業者による漏えいは最高懲役10年、共謀や教唆(そそのかし)、扇動(あおる行為)は同5年。従来の国家公務員法の懲役1年以下、自衛隊法の同5年以下よりも重罰化するうえ、一般人も対象になる共謀などは線引きが不明確で、政府に批判的な市民活動への規制や「見せしめ」的な立件につながる恐れも出ている。

最新写真特集