今回のデジタル閻魔帳は、特集「初心者歓迎!ハイレゾのイロハ」連動企画。最近話題になっているハイレゾ再生の魅力と基本知識、再生方法とオススメ再生機器までを紹介してもらおう。ハイレゾをこれから始める人はもちろん、周囲にハイレゾの魅力を伝えたい経験者にも役立つはずだ。
――今回は、ハイレゾの魅力を改めて探ってみたいと思います。
麻倉氏: ハイレゾの魅力は、まず“良い音”に尽きます。では何を尺度に“良い音”というのかといえば、やはり“生の音”です。もちろんコンサートやライブの会場でアーティストのパフォーマンスを直接聞くことが理想ですが、家庭のオーディオシステムは、いかに“生の音”に近づけるかがミッションですね。
考えてみてください。アナログレコードの時代、レコード盤は理論上、無限大の周波数特性やダイナミックレンジを持っていました。現実によく出来たレコードを高域まで対応してるカートリッジで再生するなら、今のアンプやスピーカーならハイレゾ的な音も聴けました。
ただし、レコードの実力を発揮させるには高価な機材が必要です。良いソース(音源)を良い環境で聴くと本当に良い音になりますが、そうでもない機材では“それなりの音”にしかなりません。アナログはお金をかける必要があったのです。
――私はCD世代ですが、評論家の皆さんのお宅に伺っておすすめのレコードを良いシステムで聴かせてもらうと鳥肌が立ちます。すべて数千万円単位のお金をかけた部屋と機材のようですが……
麻倉氏: ハイレゾ音源は、デジタルの使い勝手を活かしつつ、アナログ時代の考え方に戻ったと言えます。音源がもともと持っている情報量が増え、周波数の低いところから高いところまで均一に再生できるようになりました。より低い音から高い音まで情報が入っていて、CDやMP3のように途中で切れたりはしていません。そういう意味で“生の音”に近づいたといえます。
極端な話をすると、対応機器ならどんな製品で聴いてもそれなりにハイレゾらしい音が聴けます。CDよりはるかに“元の音”に近い音が、手頃なシステムで聴けるようになりました。それがハイレゾ音源のポイントであり、最大の魅力ではないでしょうか。
――あまりお金をかけなくても“良い音”が聴ける。ハイレゾ再生に高級というイメージを持つ人も多いですが、実はすごくコストパフォーマンスの高いオーディオシステムということですね
――では、現在入手できるハイレゾ音源について教えてください。
麻倉氏: 主に2つあります。それはCDの考え方を延長した「リニアPCM」という方式と、CDとは全く異なる手法で音を記録した「DSD」です。「WAV」や「FLAC」として販売されているものは、どちらも中身はリニアPCMです。
フォーマット | WAV(WAVE、RIFF waveform Audio Format) | FLAC(Freee LossLess Audio Codec) | DSD(Direct Stream Digital) |
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特徴 | マイクロソフトとIBMが開発した非圧縮の音声フォーマット。WAVはいわゆるコンテナ形式であり、中に入っているのはPCMだ。このためWAV(PCM)などと表記されることも多い。ファイル容量は大きい | フリーの可逆圧縮方式を使用した音源ファイル。可逆圧縮(LossLess)とは、圧縮前の状態に完全に戻せる圧縮方式のことで、中身はWAVと同じPCMながら、ファイル容量はWAVの約半分になる。またジャケット写真やメタデータを収録できる利便性もある | ソニーとフィリップスが開発・規格化した1bitオーディオフォーマットで、SACDでおなじみ。音声信号を1ビットのデジタルパルスの密度で表現し、広い周波数帯域、低ノイズ性に加え、比較的ファイルサイズが小さい。SACDは2.8MHzだが、現在は5.6MHzや11.2MHzなど、それ以上の音源も登場している。民生用として登場した「.diff」ファイルならジャケット写真なども紐付けられれる |
麻倉氏: ハイレゾには“元祖”といえる存在があります。それは2000年代初めに登場したDVDオーディオとSACD。CDの誕生(1982年)から20年近くが経過し、より良い音を求める動きが出てきたんですね。どちらもDVDベースの12センチ光学ディスクを使っていましたが、DVDオーディオはCDの延長線上にあるリニアPCMを使い、SACDではそれを否定したDSDを採用しました。現在のハイレゾ音源はネットワーク配信が中心で形は大きく変わっていますが、ベースにある技術は同じです。
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