危険ドラッグ:「大丈夫だと」…回復に3年「最悪の経験」
毎日新聞 2014年12月09日 15時00分(最終更新 12月09日 17時37分)
◇リハビリに励む20代男性
「違法じゃないから大丈夫だと思っていた」。薬物依存者を支援するNPO「びわこダルク」(大津市)でリハビリに励む20代の男性は、近畿地方の大学生だった4年前、当時「合法ハーブ」などと呼ばれた危険ドラッグを使用した。しかし、3カ月で体調不良になり、ダルクに入寮。来春社会復帰する予定だが、薬物を断ち、自立できると判断されるまで3年以上かかった。
男性は危険ドラッグを使用する前に大麻を吸った経験があり、両親に見つかって二度と吸わないと約束していたという。しかしその後、友人から「合法ハーブ」や「脱法ハーブ」の使用を勧められた。その名称もあって使用にためらいはなかった、と振り返る。
危険ドラッグは友人に教えてもらった京都市中心部の雑貨店や、大阪ミナミのハーブ店で、5000円程度で購入した。雑貨店では店頭で「ハーブ」と言うと2階に連れて行かれ、商品を購入できた。大阪のハーブ店はすぐ近くに交番があり、警察官の前でも堂々と吸えた。「シャングリラ」や「アドレナリン」など複数の銘柄を試し、気に入る物を探した。
利用し始めた当初は気分が高揚し「すごく良かった」という。元々は他人の目が気になる性格だったが、危険ドラッグを吸うと自分がありのままでいられるように感じ、「楽だった」という。高速道路を走ると幻覚のためか照明がとてもきれいに見え、「まるで(テレビゲームの)マリオカートに出てくるレインボーロードだった」と話す。運転するには危険な状態だ。
ただ、良い状態は3カ月も続かなかった。吐き気に襲われ、意識はあるのに体が全く動かなくなる時もあった。金遣いが荒くなり、借金も重ねた。異変に気づいた両親の勧めで、ダルクに駆け込んだという。
男性は「『合法なんだから体に悪いわけがない』と思い込んでいた。まさか体が動かなくなるとは思わなかった。本当に最悪の経験だった」と振り返る。【石川勝義】