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マイクロソフト、公共クラウド事業を年率4倍で成長させる方針
最も信頼されるクラウドを追求する
(2014/12/9 10:38)
日本マイクロソフトは、公共機関向けクラウド事業の売上高を、今後、年率4倍で成長させる方針を打ち出した。
同社では、クラウド事業全体では、今年度は、前年比2.5倍の成長を遂げており、同社の樋口泰行社長は、「今後、日本マイクロソフト全体では、年率3倍で成長させる」としていた。公共機関向けの売上高成長はそれを上回るものになる。
日本マイクロソフト 執行役常務パブリックセクター担当の織田浩義氏は、「今年2月に、Microsoft Azure向けに日本データセンターを開設して以降、公共機関のお客様からは、とてつもなく多くの引き合いをいただいている。私自身、年率4倍増の成長は、決して難しいものではないと考えている。公共機関における課題を解決することで、公共機関のお客さまに認められるナンバーワンのクラウドパートナーを目指す」と宣言した。
日本マイクロソフトは、今年2月から「Microsoft Azure」の国内データセンターを稼働させたのに続き、12月には統合型情報共有クラウドサービス「Microsoft Office 365」、来年早々には統合型CRMアプリケーションサービス「Microsoft Dynamics CRM Online」も、それぞれ国内データセンターからサービスを提供することを明らかにしている。これにより、主要パブリッククラウドサービスのすべてを国内データセンターから提供。さらに、東日本と西日本の2カ所の国内データセンターからサービスを提供する体制としていることから、国内のデータセンターだけでデータバックアップてきる環境を実現。政府や官公庁、自治体といった行政のほか、教育、医療といった公共機関のユーザーにとっても、日本マイクロソフトのパブリッククラウドが利用しやすい環境が整ったといえる。
「日本の公共機関においては、データの扱いに関する制約やセキュリティに関する基準があるために、オンプレミス指向が強く、クラウドからは最も離れた市場であったともいえた。だが、ここにきて、それが大きく変わってきている。世界最先端IT国家創造宣言の実行においてはクラウドへの注目が集まり、地方創生の実現においても中核的な役割を担うのがクラウドになる。さらに、テレワークの活用も問われており、ここでもクラウドが活用されることになる。
そのほかにも、61%の自治体がクラウドの活用を検討しており、医療分野では2024年までに1800億円のクラウド市場が創出されることが見込まれ、教育分野では220万人がすでにOffice 365を利用している。そのほか、海外では、政府におけるクラウド導入が加速しており、公共機関でのクラウド利用機会が増加。公共機関におけるクラウド導入は、かなり重要な局面に差し掛かってきたと判断している」とした。
日本マイクロソフトでは、公共機関向けクラウド推進体制として、約200人の専任営業、専任サービス組織体制を設置。法務や政策企画、技術統括、企業市民活動などの社内関連部門との連携、米本社部門との連携のほか、100社以上の国内ソリューションパートナーとのクラウド連携を進めているという。さらに、今後は、米国で提供しているガバメント向けクラウドサービスを日本で開始することも検討しているという。
会見で織田執行役常務は、「データロケーションと法令準拠」、「セキュリティ対策」、「機密データの保護」、「公共機関専用の閉域ネットワーク対応」、「公共機関特有業務アプリケーションの対応」の5つの観点から、公共機関においてクラウド導入が阻む理由が存在していると説明。「これらの課題に対して、日本マイクロソフトは解決策を提示できる」とし、公共機関における今後のクラウド成長の鍵がここにあるとの姿勢をみせた。
「データロケーションと法令準拠」においては、日本へのデータセンターの開設とともに、この施設が国内最高レベルの耐震性を誇り、同社のソフトウェアを活用した高信頼性、高可用性を実現したデータセンターであることを強調。さらに、「他社のデータセンターは米国の法令に準拠したものであったり、裁判の際は米国の法律が運用されるのに対して、マイクロソフトの日本データセンターは、日本の法律に準拠し、裁判も東京裁判所で行われることになる。その点でも、日本の公共機関のためのデータセンターだといえる」と述べた。
「セキュリティ対策」では、「最も信頼されるクラウドを追求する」と前置きし、「日米の技術開発部門だけでなく、法務、政策企画部門、運用部門、サービス部門が連携して信頼性を高める取り組みを行っている。ISO 27034-1に準拠し、自社ソフトウェアだけで構築したシステムであり、どんなリスクが潜んでいるのかわからないソフトウェアで構築されたものとは違う。マイクロソフトでは、預かったデータの営利利用を禁止しており、政府からの要請があっても、ユーザーに無断で顧客データにはアクセスさせないことを宣言している。また、第三者機関による監査によってコンプライアンスを高め、透明性の高いレポート開示、さらには要請にあわせて製品コードの開示も行っている」と語った。
「機密データの保護」については、「戸籍情報など、オンプレミス環境でなくてはならないデータもある。すべてをクラウドに持って行くことはできない。データの種別による任意の組み合わせと、シームレスな連携によって、公共市場特有の要件を含む幅広い要件に対して、クラウドで対応できるのがマイクロソフトのクラウドサービスの特徴である」とした。
「公共機関専用の閉域ネットワーク対応」では、インターネットイニシアティブ(IIJ)との協業によって、学術情報ネットワーク(SINET)経由で、Microsoft Azureを提供。教育機関では、既存のネットワーク構成を変えずに、IIJの全国の接続拠点に接続するだけでAzureを利用できるようになるほか、IIJのクラウドサービスと組み合わせたハイブリッドクラウド利用も可能になるといった取り組み例をあげた。また、富士通エフ・アイ・ピー(富士通FIP)との協業では、Microsoft Exchangeメッセージングサービスを、総合行政ネットワーク(LGWAN)を経由して提供。これらのサービスは富士通のデータセンターを通じて提供されることになるという。
「公共機関特有業務アプリケーションの対応」としては、パートナーとの連携を前面に打ち出し、パートナーに対するクラウド化支援プログラムを用意。アプリケーションアーキテクチャ設計支援、アプリケーション開発コードレビューなどの開発支援、クラウド化診断アセスメント、Azure引越支援サービスなどの移行支援をそれぞれ用意して、公共機関で利用されるアプリのクラウド化を促進することになる。ここでは、システムディとの協業により、約900校で導入されている校務システムをクラウド化した「キャンパスプラン for Azure」を、2015年1月から提供を開始することを発表した。
公共機関では、これまでにも実績をあげてきた日本マイクロソフトであるが、この分野におけるクラウド化に関しては、日本固有の課題を背景に、他国に遅れてきた部分は否めない。だが、日本にデータセンターが開設されたこと、それを取り巻く環境が変化してきたことで、日本の公共機関向け事業に関しては、「成長できないという言い訳ができない状況」(日本マイクロソフト・樋口泰行社長)というのも事実だ。今回の会見は、新たな製品やサービスなどの発表はなかったが、公共機関におけるクラウドビジネスの拡大を、日本マイクロソフトが強くコミットした内容になったのは間違いない。
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