クリスマスなんてなくなれっていう良い子のところには幸せなクリスマスが来ないようにうまく世の中設定されていると思う主催者です。すっかり寒くなってきましたね。
それでは今回も一気に行きましょう。
一昔前のトレンディドラマのような軽妙なテンポで最後まで展開を持ってこれるのはいいと思いました。そして登場人物に嫌な奴がいないのはいいですね。ただ軽妙すぎてさっと流れてしまう気もするので、もっと読者も裏切るような落とし穴が展開の中にあると印象が強くなると思います。
説明不要の世界が完結している。そんな潔さを感じました。一つの物語が始まって、そして終わっていく過程を丁寧に書いていると思いました。世界設定がどうのこうのと言いますが、説得力の圧倒的な力の前には設定なんて粉々になるんですよ。「星になった」と言ったから星になった、それでいいじゃないですか。意外と読みごたえがあってどっしりとした作品だと思います。
相変わらず熱く落としていく芸風が好きだ。視点の移動も違和感を覚えない程度にさりげなく映して、物語の山がどんどん高くなっていって頂点に達するかと言うところでおしまい。これがまとめwikiだったら考察記事や釣りを疑う感じのアレが少し懐かしい感じで面白かったです。あと「そんじゃ、ばいばい」が何かを想起させるのですが気のせいでしょう。
難病により自力で食事をとれない男性のつくるレシピの話。「この夜空の下であったことのない僕たちは繋がっている」という感覚は作品の広がりを見せていると思います。そして星がレストランの装飾やラストの小道具だけでなく、ミシュランガイドの星に地味に見立てているのも面白い。料理や食材の名前等が入るとより一層おいしそうな雰囲気と男性の悲哀が伝わってくると思います。
【第2回】短編小説の集い参加します。タイトル『ホワイト・クリスマス』 - 読書録 本読みの貪欲
大人のワンナイトラブ。冒頭のハンバーガーショップから最後の最後まで湿気た感じがけだるい情事を印象付けていると思う。このくらいの適当な関係って現代だと連絡先を交換してとかうるさそうだなぁとか思ってしまうあたり、この作品も一昔前の23時くらいからやってたドラマ風なのかもしれない。あと、シャワー浴びたあと脱がせるためだけにブラをつけていた彼女がちょっぴり気になりました。
まずコメダスイという名前がなかなか洒落ていて好きです。古来より寿命等が額に見えるようになった話は結構あって、これはその「頭の上にその人を象徴するものが見える」系の話なのですが、自分をさらけ出せないことを「コーティングされた星」として話が進むのが面白い。個人的にもう少し孤独を感じる表現を強くするとラストの爆発がもっと引き立つと思いました。
子供って大人から見ればつまらないものを異様に大事にしまっておく癖があって、その誰にでも「あーあるある!」という経験がこの物語を引き立たせていると思います。確かにお土産でもらう星の砂って特別な気分になって、自分は家のオルゴールに大事にしまっていました。その中に気持ちを詰め込んでいたら……という話。物語の向こうに語り手が見える優しい話だと思いました。
飛び回っている鳥がタイトルから「つばめ」を想定すると、『幸福の王子』にもつながりそうな作品だなぁと思いました。中島みゆきの『地上の星』のとおり、空ばかり見ていると見落としてしまう大切なものがたくさんあるっていうことです。子供のつばめっぽいのですが結構達観している気がしたので「子供の純粋な気持ち」と一緒に追求すると面白いかもしれません。
求めよ、さらば 【第2回】短編小説の集い「のべらっくす」 - 日々我れ
ものすごくいろんなものを手当たり次第に投げつけられた感じの作品でした。何度も重複する表現が次第に不安感を煽り、最後の最後まで何が起こっていたのかを主人公にも読者にも一切説明をしない潔さ。何が「5」で何が「6」なのかとか男の電波チックな発言とか裏を取ろうとするのが間違い何だろうと思います。作者の中で「実はこうだったんだ」という説明があれば読みたいです。
正直「やられた」と思った作品です。「星」の使い方がなかなうまいです。延々と落下し続けたり時が止まっていたりする恐怖もなかなか的確な表現を選んでいると思いました。オチも面白いのですが、よく読むと「鶏が先か卵が先か」のループが作品内で起こっていて物語の奥行きを感じます。発狂のあたりの表現をもっと丁寧にすると時間のつながりが感じられて面白いと思います。
宇宙エレベーターのお話。ブログを始められたばかりということで、今後に期待です。キャラクターがしっかり作られているところから物語はおそらくこの話で完結しないで、前後も奥行きもあるのでしょう。漫画的な表現から後日談なども作れそうですね。SFが好きな人だと詳細な情景を好むと思うのでそちらに特化した作品なども向いていると思います。
ファンタジー路線ですが、この世界でないと出来ない話をこの世界で展開しているのは素晴らしいと思いました。どうしてもファンタジーっていうと世界が最初に存在してその中で話を作らなくてはいけないみたいな感じになってしまいがちですが、この作品は「いいたいこと」を先にしてそれからつじつまの合う世界を構築している気がしました。是非この路線で頑張ってほしいです。
まず導入が素晴らしい。結構強引な話なんですがしっかり読ませて状況をわかりやすくしてあります。そしてオチが最高。例の歌単体をとっても素晴らしいのですが、映画『いのちの星のドーリィ』を鑑賞することでよりこの話は深くなります。はっきり言って奥行きが見えません。星が先か人が先かと言う天文学的難題にぶち当たってしまいます。結構投げっぱなしの話なんですが「想像の余地あり」がどこまでも果てしないというのはこういう話だと、思わず膝を打ちました。お見事。
一人の男に焦点を当てて内面を丁寧に描写しているお話。焦点が絞られているので非常に読み易かったです。ただ、ご本人も「説教くさい」と述べられているのは、おそらく後半の部分が会話ラッシュになっているところに作者の意見を登場人物に語らせている感じになっているところに原因があると思いました。ここで素直に言うことを聞くのではなく主人公に「うるせぇな」と思わせることでもうひとつ話が深くなると思いました。
谷山浩子『ガラスの巨人』を連想させるような肥大化する自己の言葉と言う感情の話。一見して読解が難しく、「私」を星の精霊のような存在として捉えるのが正当な読み方なのかもしれない。赤ん坊が言葉を習得していくように「星」も言葉を習得して大きくなっていくものということだろうか。これももし可能だったらいろんな人の解釈を読んでみたいな。
短篇小説を書いてみました。恋愛物です。2 - 池波正太郎をめざして
直感的な話になりますが、この作品はかなり好きです。短編小説という枠組みで済む一部の世界なのに非常に奥行きを感じます。軸になる話の当事者が不在のまま話が進んでいく感じが「この世界のほかにも世界がある」ことを暗示していて安心感があるのかもしれません。また当の親友の情報がほとんど出てこないものいい感じだと思いました。読者の想像に任せる、という野暮な切り捨てとは違う意図的な切り捨てを感じました。
今回は以上の16作品でした。総括するとやっぱり夜の星っていうワードはあまり明るい話にならないんだなーっていうところです。それでもエモーションを歓喜させるには絶好の題材だったかもしれないなと思っています。
今回の主催者選は「4445.0MHz - OK 余裕」です。とにかく話が完全に終わっているのにどこまで続くかわからない奥深さにやられました。次点として「短篇小説を書いてみました。恋愛物です。2 - 池波正太郎をめざして」「“家族” -【第2回】短編小説の集い- - このはなブログ」を挙げておきます。決め手は丁寧かつ説明しすぎていない描写と小説内で完結しているワールドですかね。これは完全に好みです。
そんなわけで作者の皆様、お疲れ様でした。感想記事のまとめも随時受け付けております。次回ののべらっくすでお会いしましょう。
おまけ
ごめん、30分ほど間に合ってなかった!
おまけ2
ポプラ社小説新人賞を受賞しました。 - 悩みは特にありません。
第0回で「寺地枠」として紹介した寺地はるなさんがポプラ社小説新人賞を受賞したそうです。おめでとうございます。寺地さんの今後の活躍を楽しみにしております。寺地さんの第0回の作品は以下の記事です。
小説って世界を作る力だなぁと日々感じております。