「日本語には swear word はない」とアメリカで言うと驚かれることが多い。
(以下、英語だったら絶対スペルアウトできない「悪い英単語」の連続ですので悪しからず)。
swear word とは fuck とか shit とかその手の言葉。(その他はwikipedia参照)。直訳したら「やっちまえ」とか「くそ」とかだと思うが、swear wordには、そういう日本語の単語に比べて段違いに悪いニュアンスが込められている。
しかも、そこまで悪い意味なのに、連発して使われることもある。また、いざという時には軽く一回使うだけで本人の激しい感情が伝わる強力な言葉。なので、映画などでは女性がswearしているシーンも時としてあるわけだが、実生活では相当に場を選んで使う必要がある。
たとえば、私個人的には一度も「これは使ってもいい時だ」という瞬間に直面したことがない。周りの人が使うのを聞いたことも数えるほどしかない。(男性だったら違うと思うし、業種などでもぜんぜん違う。例えば、ゼネコンで働いていた男性曰く、朝の挨拶は fuck! とお互いに言い合うのがデフォルトだったそうです。ひえー。)
しかし、同等の単語を持たない日本人にはなかなかこの「TPOを異様に選ぶ感じ」が理解できない。
swear wordがどれくらいやばいと言って、映画で一言でも言った途端にレーティングが変わってしまうそうな。
映画史上最大傑作 (認定 by 渡辺)である Galaxy Quest でSigourney Weaver が
Well, screw that!
というセリフを言うシーンがあるのだが口の動きは明らかに
Well, fuck that!
である。ちなみに、このシーン、Galaxy Questの中でも最も面白い。つまり、映画史上ベストシーンである(認定 by 渡辺)。このような素晴らしいシーンを飾るのは、ここはやっぱり後者のセリフがふさわしい。しかし映画レーティングを「家族みんなで見られる」というのにするために変更されてしまったようだ。
(Galaxy Questの当該シーン。10秒目です。)
余談ながら、ロシア人の友達に「日本語には swear word は存在しない」と言ったら、
「それは、あれだね、知識層が大量に強制労働に送られたことがないからだ」
とのこと。彼の論では「知識層と犯罪者との交流」が swear word を豊かにするとのこと。だからロシア語には英語など比べ物にならない豊かなswear word のボキャブラリーがあるそうだ。ほんまかいな。中国語にもswear wordが大量にあるのだろうか。
もとい。
こうしたswear wordの位置付けを知らないとイマイチ突っ込んだ理解ができないのが、TechcrunchのBullying the Bullies(いじめっ子いじめ)という記事。「オンラインで人種差別発言している人を探し、その人の個人情報を洗い出し、雇用主にその人がどんな発言をしていたかを告げ、人種差別発言者が解雇されるようにする」というRacists Getting Firedという恐ろしいサイトの話。
そこで取り上げられていた例がVA Truck Driverと名乗る人のtweetで
Niggers are fucking ignorant. And no, not all black people are niggers. What’s a nigger, the fuckers in ferguson that are rioting
二つ目の文章で「全ての black people を指すのではない」と明記してある。ちなみに、black people のように、人種などに「people」をつけるのは丁寧な言い方。
Japanese like to work long hours.
というより、
Japanese people like to work long hours.
という方が微妙に日本人を尊重してる感が出る。
この人もちゃんとblack peopleとtweetして「黒人がみんなignorantだと言っているわけじゃない。暴動しているヤツらがignorantだ」と言ってるわけで、何も仕事を失うまで追いつめなくてもいいんじゃないか、という気もするのだが、「黒人本人以外使ってはいけないN-word」のniggerが使われている点でまずアウト。放送禁止用語ピーなわけですが、それにさらにfucking、fuckersといった swear word が立て続けに使われていることで、読み手に著しく感情的な反応を促してしまう。
結果、この tweet はRacists Getting Fired へ。その後、VA Truck Driver氏は
*currently all the haters are trolling through my pics trying to find shit on me*
「俺の写真から俺のことを洗い出そうとしてるヤツらがいる」
とtweetしたのち、
I’d like to apologize for the things that I said about Ferguson. I have been suspended from work without pay. Once again, I am sorry.
「ファーガソンについての発言をお詫びします。無給の停職処分になりました。重ね重ね申し訳ありませんでした」
という tweet になる。 最後の発言には一言も swear word がないのに注目。ここで一言でも swear word を使ったら一巻の終わりである。
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ちなみに、私が「日本語に swear word はない」ということを再確認したのは東北大地震と津波の動画を見た時だった。一般の人が撮った「決定的瞬間」の動画が YouTube などに大量にあるわけだが、日本人は誰一人として「くそ」などと言わない。「真の恐怖を感じた時、日本人は何というのだろうか」と、真剣に動画を見てみたが一番多いのが
「ヤバイ」
だった。あとは、「ダメダメ」(周囲の人に注意を喚起するとき)、「終わった」など。
一方、東北在住のアメリカ人男子留学生が撮った地震の最中の動画では、本人がひたすら fuck と shit をリピートしながら時々 fucking shit を交えるという予想された事態であった。
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しかし、冒頭のWikipedia の swear word のページの単語を和訳して考えると結構笑える。だってですね
「ウンコ」
「ウンコおしり」
「聖なるウンコ」
・・・いや、こうして大の大人がブログに書くのは自分でもいかがなものかと思うが、それにしてもなぜこれがそんなタブーなのか。
小学生なのか、英語圏の人たち。
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なお、このブログは趣旨に合わせswear wordを全てスペルしているが、英語ではこれはちょっとありえない。F−wordとか、f-ingなどと遠回しに書くのが礼儀である。というか、全然書かないのが礼儀でございます。