[PR]

 「ピアノの詩人」と呼ばれ、数々の名曲を残した19世紀ポーランドの天才音楽家、フレデリック・ショパン。死後、心臓だけが祖国に戻され、曲折を経てワルシャワの教会の柱の中に「安置」された。それから約70年。専門家による調査が行われ、今秋、その死にまつわる謎の解明も進んだ。

 十字架を背負ったキリスト像が入り口に立つ、ワルシャワの聖十字架教会。ショパンの心臓が安置されるこの教会で、今年4月14日の晩、「極秘プロジェクト」が行われた。

 教会や文化遺産省、法医学の専門家ら約10人が礼拝堂の石柱の一つに穴を開ける。一辺約30センチの木箱が出てきた。その中にクリスタル製の壺(つぼ)が一つ。黄金色の液体の中にこぶし大の「塊」が浮かぶ。その濃いピンク色に誰かが思わずつぶやいた。「まるで昨日、体から取り出したみたい」

 病弱だったショパンは名声を得ながら、39歳の若さでパリで客死した。遺体は地元の墓地に葬られたが、心臓は遺言で祖国ポーランドの教会へ。その後、1945年10月の最後の調査以降70年近く、心臓は人目に触れていなかった。