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シリーズ・日本のアジェンダ 総選挙の焦点 アベノミクスの通信簿

格差拡大で中間層は消滅に向かう!?
“普通の人”がアベノミクスを支持すると割を食う
――杉浦哲郎・日本経済調査協議会専務理事に聞く

ダイヤモンド・オンライン編集部
【第3回】 2014年12月8日
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 こうしてアベノミクスに「失望した」「騙された」と感じる一般国民は少なくない。一方で、企業はといえば、消費者ほど単純ではなく、シビアに安倍政権と駆け引きをしてきた印象だ。

 たとえば、法人税減税や派遣法改正、ホワイトカラーエグセンプションといった、自分たちに有利な政策を進めてもらうのと引き換えに、安倍首相の要請に応じて賃上げを多少飲んだりしていた。直近では、円安効果によって潤った大企業は多い。

 しかし、こうした政策で企業が力を取り戻したとき、果たして国全体の底上げが図られるだろうか?

 2000年以降、日本は輸出主導型を志向してきたが、何が起きたかというと、多くの工場が海外に移転し、非正規雇用が増え、そして地方は疲弊した。

 一方、これはグローバルで同じ傾向ではあるが、労働分配率(生産した付加価値のうち、人件費が占める割合)は低下している。つまり、労働者への賃金が減り、一方で投資家への分配が上がっているということだ。

 「非正規とはいえ、無職よりはマシだろう。そこからがんばって正社員になればいい」という意見もあるが、実際には非正規が正社員になるのは非常に難しい。「専門性を高めれば、派遣社員で生きて行く道もある」という意見もあるが、30代くらいまでならともかく、40代、50代になっても最先端の専門性をキープするのは難しいだろう。年を取って行くと、スキルも落ちるものだ。

 こうした議論には、どこかにウソがある。

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12月14日に投開票される今回の衆議院総選挙は、安倍首相自ら名付けて「アベノミクス解散」。安倍政権の経済政策であるアベノミクスをこのまま継続していいかどうかを問う選挙というわけだ。そこでDOLでは「シリーズ・日本のアジェンダ」で、アベノミクスをはじめ安倍政権が進めてきた社会保障、格差問題、エネルギー政策、女性活躍、外交について、その成果を検証する。

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