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<衆院選>何を問う(4)中小企業/「復興貢献」届かぬ志

長距離運転から戻ったドライバーをねぎらう石井さん(左)。トラック9台は全て紫色に塗った。「仕事を取るには目立たなきゃ」(写真は一部加工しています)

 師走の寒風が吹き付ける東日本大震災の被災地を、復旧・復興工事のダンプカーが行き交う。仙台市宮城野区蒲生、県道塩釜亘理線。ひと頃より減った県外ナンバーが、最近また目に付く。
 沿線で「蒲生建設」を営む石井良一さん(36)は、その光景を複雑な気持ちで眺める。
 「復興に貢献したい気持ちがあった。でも、やればやるほど精神的に追い詰められて…」

<願い込め社名>
 高校中退後、10代から働き、20代には仙台市内で中古車販売店「エム・オートサービス」を開設した。震災で蒲生地区の知人のコンビニエンスストアが被災。震災3カ月後の2011年6月、コンビニを改装し、販売店をここ蒲生に移した。「地域を盛り上げ、知人を元気にしたかった」
 昨年2月、店の近くに「蒲生建設」を設立。復興関連公共工事に必要な土砂などをダンプで運ぶ仕事を始めた。復興への願いを込め、社名に地域名を掲げた。
 津波浸水域のかさ上げ、宅地造成…。ダンプの仕事はやりがいがあり、休みなく働いた。被災地が前へ進む。生まれ故郷、石巻市の惨状と復興の歩みにも思いをはせた。

<恩恵とは無縁>
 「でも、先の光が見えなかった」。遅々として進まない復興、安倍政権が打ち出した経済政策「アベノミクス」などにより進んだ円安。焦りといら立ちが募った。ストレスからか、円形脱毛症が今も治らない。
 7月には軽油1リットル当たりの宮城県内平均価格が145円を超えた。2年前から30円近くの値上がりだ。燃料費は費用の3割以上を占めた。県内外から参入する同業者との競争は激しい。価格転嫁すれば、切り捨てられるのは目に見えていた。
 復興事業は、資材高騰や人手不足の影響などで停滞。年間稼働日数は224日。自らの報酬はゼロ。9人いた従業員を5人に減らした。「体力のない中小はきつい。正直、やっていけない」
 ことし、一つの決断をした。事業の柱だったダンプによる仕事に見切りを付け、8月にトラックを使った物流中心に切り替えた。
 貨物トラック9台の購入で借金は膨らんだが、経営は好転した。来年は役員報酬が入りそう。苦しいとき、行政も金融機関も助けてくれなかった。自分たちが頑張った結果だ。
 「アベノミクス? それは、一流企業の話でしょ」。株高の恩恵などとは縁がない。むしろ円安の影響で軽油価格は130円台半ばで高止まる。あと20円は下がってほしい。「何より、被災地の復興を進めてほしい」
 衆院選で各党が掲げた公約はひと通り見た。復興対策も燃油高騰対策もうたうが、「何もしてくれない、何も変わらないと思う」。
 投票に足を運ぶ気には今、なれない。

[燃料高騰]中東やウクライナ情勢悪化に伴う原油高を受け、東北では7月にガソリン平均価格が169円10銭、軽油が147円50銭まで上昇。原油はその後、ピークから30%以上安くなったが、日本の下落幅は円安の影響などで7%程度にとどまる。運送業界などはガソリン税や軽油引取税の軽減を求めている。


2014年12月09日火曜日

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