内閣府が8日発表した7~9月の国内総生産(GDP)改定値は物価変動の影響を除いた実質で前期比0.5%減(年率1.9%減)となった。速報段階から年率で0.3ポイントの下方修正となり、夏場の景気の足踏みが確認された。ただ足元は企業の在庫調整が進んで輸出も回復の兆しがあり、生産には薄日も差す。個人消費など内需の弱含みが懸念材料だが、10~12月はプラス成長に戻るとの見方が多い。
GDPは4月の消費増税後、個人消費と設備投資が振るわず2四半期続けてマイナス成長となった。企業の在庫が減ったことが実質成長率を0.6ポイント押し下げ、マイナス成長の要因となった。ただ在庫減少は増税後の生産調整の結果で、先行きの増産体制が整いつつあることも意味する。
そのため民間調査機関約40社の10~12月の実質GDPの予測平均は、前期比で年率3.25%増と持ち直しを見込む。追い風の一つは輸出だ。円安が1ドル=121円台まで進み、内閣府が算出する10月の輸出数量指数は前月比2.1%増えた。伸び悩んでいる設備投資も、先行指標とされる機械受注は7~9月に2四半期ぶりに前の期の水準を上回った。
鉱工業生産も持ち直しの兆しがあり、経済産業省の予測調査では11月に2.3%増、12月に0.4%増とみる。実現すれば9月から4カ月連続の増加となり、景気は8月を底に上向きになったとみることができる。
円安の恩恵を受ける大企業が主導する形で景気の持ち直しが見込まれているが、不安もある。街角の景況感が曇っていることだ。
内閣府が8日発表した11月の景気ウオッチャー調査によると、街角の景況感を示す現状判断指数は前月比2.5ポイント低下の41.5と、2カ月続けて前月を下回った。横ばいを示す50は4カ月続けて割り込んでいる。2~3カ月先の景気を見る先行き判断指数も44.0と、前月を2.6ポイント下回った。
景況感の重荷となっているのが「物価が高いという消費者の感覚」(内閣府)だ。前年比で見た消費者物価の伸び率は少しずつ鈍っているが、「電気代の値上げがある北海道や、燃料の購入費がかさむ東北の景況感は良くない」(同)という。中小企業には円安に伴う輸入資材の値上がりも響いている。
今年の冬のボーナスは、大企業を中心に前年より増えそうだ。そのため家電量販店や大手百貨店の販売は盛り返しつつある。ボーナス支給後の週末となった6~7日は、前年並みか前年をやや上回る水準で堅調な出足だ。三越伊勢丹は首都圏店舗の6~7日の売上高が、前年同期(休日だった7~8日)比5%増だった。富裕層を中心に、都市部では時計や貴金属など高額品の売れ行きが持ち直しつつある。
ただ地方の店舗では客足が戻らず、厳しい状況が続いている。先行きの景気の持続力を占うのは、大企業を中心に広がる賃金引き上げの動きが地方や非正規社員にまで波及するかどうかだ。労働組合は来年の春季労使交渉で賃金のベースアップを求め、経営側にも一定の賃上げが必要との声がある。企業収益の持ち直しが賃上げにつながって個人消費を伸ばしていく好循環が強まるかが重要になる。
GDP、三越伊勢丹