(前回から読む)
―― タカラヅカ100周年の今年は、新春の東京宝塚劇場公演「Shall we ダンス?」(雪組)の演出を担当されました。年が明けた101周年の、宝塚大劇場での幕開け公演「ルパン三世」(同)も、小柳さんが手掛けられます。
小柳:「ルパン三世」はアニメはもちろん、各方面で人気の高い作品です。今年の8月には小栗旬さんの主演で実写版が公開されましたし、それ以前には目黒祐樹さんが主演した実写版もあるんですよ。
―― 1974年公開の「ルパン三世 念力珍作戦」ですね。ちなみに目黒祐樹さんは、松方弘樹さんの弟さん、と即座に分かるところに世代が出ますね(笑)。小柳さんの「ルパン三世」の見どころは、どこになりますか。
小柳:タカラヅカの舞台として楽しいものにしたいと、ひたすらそこを目指します。新春公演なので、お正月映画のように娯楽に徹してやっていこうと思っています。
―― 小柳さんの演出作品は、随所にマニアックな仕掛けをまぶしつつ、タカラヅカの王道であるロマンチックな恋がきちんと描かれ、かつ、さまざまな持ち味を持つ生徒たちに、バランスよく見せ場が用意されている、ということで評判です。楽しみですね。
密かにリスペクト、アキバレンジャー
小柳:マニアックでオタク的というのは、その通りで、実は私がひそかに狙っているのが、「非公認戦隊アキバレンジャー」という特撮番組なんです。これは、東映が自分のところで作った番組の「スーパー戦隊シリーズ」をパロディーにしたもので、戦隊オタクのお兄ちゃん、コスプレイヤー、女子高生らが主役となって、過去のいろいろな戦隊物の知識をタテに、秋葉原で変身して敵と戦う。
―― 小柳さんがすごく好きそうですが、それがどうタカラヅカにつながっていくんですか?
小柳:いや、何がすばらしいって、自分のところの特撮シリーズをネタにして、セルフパロディーをここまでやってのける東映さんがすばらしいんです。その懐の深さと、パロディー作品を本気で作っている面白さ。私の「ルパン三世」も、タカラヅカのパロディーとして楽しんでいただけるまでに持っていけたらいいな、と思っています。
―― タカラヅカには、そういう懐の深さがあると思います。ところで前作の「Shall we ダンス?」も、「ルパン三世」も、どちらも原作ものですよね。
小柳:はい。タカラヅカの舞台には、オリジナルと原作ものの2種類があります。演出家サイドから、「あの原作を舞台化したい」とアイデアを出すこともありますが、この2作はどちらも歌劇団から原作者に舞台化をオファーしたもので、私から提案したものではありませんでした。
―― 「Shall we ダンス?」は、普通のサラリーマンが主人公で、きらびらやかなタカラヅカでは異色の舞台化ですが、話がきた時にピンとひらめくものはあったんですか。
小柳:いや、正直に言うと、なかったんです。これ、どうやるんだろうと思って。
―― そういう時に、「いえ、私は遠慮します」という選択肢は演出家にはあるんですか。
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