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【ウイークリーワールド】「なぜ日本大使館守るのか」「日本の警察官も同じ思いだろうか」…日韓関係悪化で韓国機動隊員が感じた日本警官への「仲間意識」スピーチ全文
更新日韓交流スピーチ大会で最優秀賞に選ばれた韓スンホさん=11月15日、ソウル(共同) 【ソウル=藤本欣也】ソウルで15日に行われた日韓交流スピーチ大会で、最優秀賞に選ばれたソウル大3年の韓(ハン)スンホさん(22)のスピーチ「大雨が教えてくれた使命」が反響を呼んでいる。
徴兵制で警察の機動隊に配属され、ソウル市内の日本大使館前で警備に当たる韓さん。大雨が降っていた、ある夜明け前、同じように東京の韓国大使館前で警備に立っているであろう日本の警察官への仲間意識とともに、職務への責任感と使命感が芽生えた経験について日本語で語った。
韓さんのスピーチ全文を掲載する。
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私は警察の機動隊で働いています。外国の大使館や政府機関など公的重要施設の警備、そしてデモや集会の管理が私たち機動隊員の主な仕事です。本日は、夜明けのころ、大雨の中で日本大使館を徹夜警備しながら感じたことについて、お話ししたいと思います。
梅雨で雨が降りしきる午前5時に、私は日本大使館正門の前に立っていました。足元にあふれる雨水を見ていると、こんな時にはさすがに誰も来ないだろうと思えるほどでした。気温は高く、羽織っていた雨具や靴の中までびちゃびちゃになってしまいました。
逃げ出したい気分になった私は、後ろに建っている日本大使館を肩越しに見ながら、なぜ自分がこの大使館の前でじっと立っていなければならないのだと、考え始めました。
上の指示に従うしかないからだろうか、ウィーン条約によって外国の大使館を守るのが義務だからだろうか、いくつかの理由を思いついたのですが、どれもその状況を乗り切るための動機にはなりませんでした。
ちょうどそう感じたとき、前の方にあった電光掲示板を見たら、日韓関係が連日悪化しているというニュースが出ていました。それを見た途端、2つのことが頭に浮かびました。
一つは、反日デモから日本大使館を警備したときの私の経験で、もう一つは、逆に反韓デモから韓国大使館を守るために苦労しているはずの東京の警察のことでした。東京にも、韓国大使館の前で私と似たようなことを思う警察官がいるかもしれないと思うと、東京の警察との間に仲間意識さえ感じられました。
それから私は、われわれ、ソウルと東京の警察が、日韓関係という舞台の片隅で一番目立たないけれど、絶対欠かすことのできない役をともに担っているということを、少し誇らしく思えるようになりました。悟りのようなものを得たと一人で感心していると、いつの間にか終わりそうでなかった大雨もやっとやみはじめて、夜が明けようとしていました。なんとなく、これからはしっかり仕事に打ち込めそうな気がしました。
それ以来、日本大使館勤務の時はいつもその夜を思いながら元気を出しています。そして常に日韓友好を念頭において、勤務中に出会う日本の観光客の方に対してはいつも笑顔で丁寧に対応できるように努力しています。
そして何より、今も私の仲間たちが、責任感と使命感を持って日本大使館を守っているということを、本日の私の話で皆さんにわかっていただけると本当にうれしいです。
今まで私の話をお聞きくださり、ありがとうございました。