百田尚樹先生に売名行為呼ばわりされた及川眠子先生の著書『夢の印税生活者 作詞家になって年収を200倍にする!!』(03年/講談社)を読んでみました。ストレート過ぎるタイトル通り何でもあけすけに書いてある本で、やしきたかじんに対しても「東京ではほとんど無名に近かった。やはりあのゴキブリに似たような容姿が、都会人にはウケないんだろう」とあっさり切り捨てるからビックリ。
もともと彼女とたかじんとの出会いの時点からいろいろあったようで、たかじんの「ポリスター移籍第一弾のアルバムに、私は四曲詞を提供した。でも、ディレクターが及川眠子に詞を書かせたいと言ったとき、一悶着あった」とのこと。つまり、たかじんがそのディレクターに「Winkに書いてるような作詞家に、俺の詞が掛けるわけないやろ!?」「ほな書かせてみい。書けんかったら、おまえの責任や!」と詰め寄ったそうで、そのことを「もし書けなかったら、どんな責任を取らされたんだろう? あのオヤジ、小心者のくせに粘着質だから、殴る蹴る程度ではすまされなかったかもしれない」と振り返る及川眠子先生は、たかじん以上に凶悪なわけですよ。
そして、彼女とたかじんとの距離感の話も実に興味深かった。
「もう一五年以上付き合ってきた大地真央にしろ、やしきたかじんにしろ、私は仕事以外ではほとんど会ったことがない。たかじんさんに至っては、レコーディングにさえ行ったことがない。と言うよりも、彼も私に来てほしくないんだろうと思う。一度たりとも呼ばれなかった。年に一度か二度のコンサートがあったとき、楽屋でこんにちはを言うだけだった。そう言えば、たかじんさんはポリスターに移籍する前に組んでいた作家とはしょっちゅう合宿みたいなことをして、ミーティングしていたと言っていた。でも、私は一度もない。発注にはポリスターのディレクターがやって来て、『いつものようにお任せで』。そう告げて、デモテープを置いて行くだけだった。ポリスター移籍直後、異常なまでに気合が入っていた頃は、よく真夜中や明け方に電話がかかってきて、ほとんど訳のわからないことを一人勝手にぐちゃぐちゃ喋っていたのだが(あれはもしかしたら、彼なりのミーティングだったんだろうか?)、適当にいなしているうちに、どうも及川は冷たい女だと思われたみたいで、その後電話もかかってこなくなった。だって、朝の五時頃に電話がかかってきて、イヤぁな予感がするから電話に出なかったら、案の定べろんべろんに酔っ払ったたかじんさんが留守番電話に、『なんで今頃寝てるんやー! オレは戦うでぇ!』。そんなヤツの相手などしたくはない」
さらには、「一度あまりにたかじんが訳のわからないことを言うので、私の方がぶち切れて、電話で怒鳴りまくったことがあった」ぐらいなんだから、そりゃあたかじんも彼女から距離を置いて当然。でも、この距離感を百田尚樹先生にも是非見習って欲しいと思った。
「私は自分が詞を書いてきた人たちとは、プライベートでの付き合いはほとんどない」「なぜなら、私生活で仲良くして、その人なりのいろんな部分を知って情を持っちゃったりすると、詞に遠慮が出てしまうのだ。ああ、やっぱこんなこと書いちゃマズイなぁなんて思って、つい無難にまとめあげてしまったりする。ある男性歌手が不倫をしていた。相手も芸能人だった。私は全然気付かなかったのだが、その女性をコンサートや打ち上げでよく見かけるなぁなんて思っていたら、あるとき写真週刊誌にデカデカとすっぱ抜かれていた。そのいきさつを決して本人から聞いたわけではないのだが、そういうことを知ったあとは何となく彼に対して不倫の歌が書きにくくなってしまった。その男性歌手はとてもいい人で、私にもいろいろ気を遣ってくれた。プライベートな付き合いはなかったが、彼のことは『人として』とても好意を持っていた。そう! この『人として』相手を見てしまうことが問題なのだ。『商品』や『素材』であるだけなら、いくら立ち入ったことを聞こうが、その場限りで忘れてしまえる。でも一度人としてその人をわかってしまったら、なかなか冷たくなれない。いいものを書くためには、相手を突き放せるだけの距離感が必要なのだ」
百田尚樹先生の『殉愛』の件もまさにこれで、男性歌手の不倫の事実を知っても、その不倫相手に情を持ってしまったため、不倫の事実が書けなくなってしまったのが問題だったんじゃないかとボクは思う。
ちなみに、そんな彼女の本の中で最もボクが衝撃を受けたのは、「Winkのヒット曲はそのほとんどが洋楽曲。日本語詞を書いた私のギャランティーは『買い切り』なのだよ。それも一曲三万円! ミリオンに手が届くほど売れた『愛が止まらない~Turn It Into Love~』も三万円ポッキリ」という告白でした。当時、Winkが所属するポリスターがボロ儲けしていて、おかげでフリッパーズ・ギターとかもデビューできたって噂を聞いたことがあるけど、これなら儲かって当然!
Written by 吉田豪
Photo by 殉愛/百田尚樹
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