円安:実質実効為替レート、過去30年でも最安値水準

毎日新聞 2014年12月05日 20時04分(最終更新 12月05日 23時37分)

 円相場は対ドルでは約7年4カ月ぶりの安値だが、通貨の総合的な実力を測る「実質実効為替レート」でみると、円は過去30年で最も安い水準となっている。

 実質実効為替レートは主要輸出相手国との為替相場を貿易額に応じて調整(加重平均)し、競争力に影響を与える物価の動きも考慮した指標。一般の為替レートが円とドルなど2通貨間の交換比率を示すのに対し、複数の通貨に対する円の「総合力」が分かる。2010年1月を100とし、数値が大きいほど円高、小さいほど円安を示す。

 日銀が発表した9月の円の実質実効為替レートは74.82で、1982年11月(74.56)以来の円安水準。円の総合的価値は対ドル円相場が1ドル=265円台だった当時と同程度ということになる。10月は75.03と円高方向に戻したが、今月発表される11月のレートは下落している可能性がある。

 ただ、テレビや自動車などを日本で生産して輸出していた80年代に比べて、日本企業は海外への生産拠点の移転を進めており、円安のメリットは当時ほどではない。ニッセイ基礎研究所の上野剛志シニアエコノミストは「円安の追い風があっても輸出の増加は限定的かもしれない。一方、輸入物価上昇など円安のデメリットは見た目以上に厳しくなっている可能性もある」と指摘する。【柳原美砂子】

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