みなさん本を読んでますか?
Kawaz Advent Calendarの8日目を担当させて頂く@giginetです。よろしくお願いします。
皆様、本は読んでますか?
僕は今年Kindleを買ってからかなり読書量が増えました。 もちろんゲーム関係の本も読んでいたのですが、ぜひ作っている仲間内でこの価値観や知識は共有しておきたいなあ、という良著に多く出会いました。
実はゲーム開発に関係する本って、世の中にたくさん出ています。
ミーティングなどでいちいち紹介するのも面倒になってきたので、この機会に是非読んで欲しい本を一挙紹介します。買いましょう。
この記事では
- ゲームを作ってみたいと考えている方が広く読むべき本を紹介します
- 役職に関係なく読める本を選んでいます。そのため、例えばプログラミングの技術書など、前提知識が必要な本は意図的に抜いてあります
- オススメ度は個人の感想です。また、僕の読後感だけではなく、コストパフォーマンス、万人が読めるかどうかなども考慮して付けています(個人評価は高いけど他の人に勧めづらい物は評価低め)
- ここから買うとぎぎにゃんさんにアフィリエイトが入るようになってるので、ありがたいと思った方は買いましょう
オススメ本一挙紹介
ゲームデザイン、企画編
「桜井政博のゲームについて思うこと Think about the Video Games」シリーズ
オススメ度:★★★★★
まず、最初に真っ先に紹介したかったのが通称「桜井本」。
『スマブラ』や『カービィ』を生み出した桜井政博さんが、ファミ通で連載しているコラムをまとめた本です。緩い文体なのでサクサク読める。
「リスクとリターン」や「報酬」の話は今では当たり前すぎるゲーム作りの考え方になっているんだけど、それを10年以上前の段階でわかりやすくまとめてあり、ゲーム作りのエッセンスが凝縮されています。
僕はこの本の1巻を中学3年生の時に買って今でも大事に持っています。書籍版はもう絶版なんですが、Kindle版は今すぐにでも買えるので未読の方は絶対に読みましょう。
ちなみに、今6冊出ているのですが、絶対に読むべきなのは1巻だけで良いです。
他の巻もおもしろいんだけど、桜井さんの考え方の根幹は割と1巻で出尽くしているので、2巻以降は興味があったら買ってください。
「レベルアップ」のゲームデザイン
オススメ度:★★★★★
『ゴッドオブウォー』などを手がけた開発者がゲームデザインについて解説する本。
最初の着想から、タイトルの付け方、企画書の書き方、世界観の練り込み方、そしてタイトルにもあるレベルデザインの考え方の基本まで、幅広く網羅されています。
とりあえずこれ一冊持っておけば間違いないので必ず買いましょう。ちょっと値段がお高いのが難点ですが、手元に置いておく価値アリ。一度通しで読んで、あとは企画書を書く度に振り返りましょう。
「タッチパネル」のゲームデザイン
オススメ度:★★★★
「レベルアップ本」と同じ作者が手がけるスマートフォンゲーム特化のゲームデザイン本。
序盤の方は「レベルアップ本」と共通のエッセンスが詰め込まれています。両方読んでも良いけれど、こちらだけでもダイジェスト版みたいな感じで読めます。
中盤以降はタイトルにあるとおり、スマートフォンならではのゲーム作りの考え方が詰まっています。
操作系が違うのはもちろんだし、スマフォユーザーはそんなに長時間ゲームをやらないので、普通のゲーム開発のセオリーが通用しない。スマフォゲーを作りたい方は必読の一冊かと。
「ヒットする」のゲームデザイン
オススメ度:★
上2冊と違ってこの本は結構出たのも古いし、商業的な内容で、話の中身も薄くあまりオススメできなかった記憶。とりあえず買って読んだので貼っておきました。
ゲームクリエイターが知るべき97のこと1, 2
オススメ度:★★
ゲームクリエイター97人のコラムをまとめた本。
話題はプログラムから企画、プロマネ、音楽、デザインと多岐にわたります。
1は有名な方が多くて大体読んだんですが、2は興味のある物をパラパラめくる程度で良いかなと言う感じ。
ちなみに「2」の方には某Kawazメンバーとか、よくKawazで見かける方なんかが寄稿しているので、探してみるのも一興かと。
知識や技術編
おもしろいゲームシナリオの作り方 ―41の人気ゲームに学ぶ企画構成テクニック
オススメ度:★★★★
その名の通りゲームシナリオについて考察している本。
作者は海外の方なのですが、かなりの日本通で和ゲーが大量に取り上げられています。 『MGS』や『クロノ・トリガー』、『ファイナルファンタジー』など海外で評価の高い和ゲーに始まり、『ひぐらしのなく頃に』、『Fate』などの海外ではなかなか珍しいノベルゲーまで幅広く解説されています。知識の深さに驚く。
この本の凄いところは、ただゲームのシナリオを書くだけではなく、アドベンチャーゲーム的なフラグ管理や、マルチエンディングを前提としたシナリオの作り方や類型化がされていること。
ほとんどの本は通常のフラグを立てていくタイプのノベルゲーだけを前提にして書かれているので、ここまでいろいろ取り上げられてる本は他にないと思います。
『HEAVY RAIN』のような複雑なストーリー分岐、『FallOut3』のようなオープンワールドゲー、果ては『どうぶつの森』みたいな、完全ユーザー主導型のストーリーテリングまで。 ナラティブに関する言及もあり、ゲームを知ってる人であればあるほどおもしろい!
本当に良い本なんですが難点として、お値段と、取り上げられてるゲームを実際に何本か遊んで感激した経験がないと読みづらいかも知れません。
一応、各作品に簡単なあらすじがあるんですけど、やっぱり自分で遊んで感動した経験を持った作品の解説を読んだ方が楽しいですね。
ゲームメカニクス おもしろくするためのゲームデザイン
オススメ度:★★★
これも今年読んだ。デジタルゲームに限らず、アナログゲームも含めたゲームデザイン全体に通用する考え方を教えてくれる良著。
「レベルアップ本」や「ゲームシナリオ本」でも感じたことなのですが、海外の本は類型化がとにかく上手い。
この本の序盤では、「物理」「内部経済」「進行型メカニズム」「戦術的操作」「社会的インタラクション」という5大メカニクスによるゲームデザインの考え方が解説されています。 ほとんどのゲームはこれらの5大メカニクスによって構築されていて、それぞれのメカニクスをどのように発想していけば良いのか、ということが書かれてあります。
後半はマキネーション・ダイアグラムという、ゲームデザインを体系化する仕組みについての解説が延々と続く構成になってます。
僕は後半も感激したんだけど、プログラマじゃないと読むのが辛いかもですね。
主にゲームデザイナー向けではあるけれど、結構なプログラマ的素養も要求される本です。
ゲームテスト&QA
オススメ度:★★
ゲームの品質管理や、デバッグ、バグチケットの出し方など、ゲームの品質管理について書かれた本。 取り上げられてるネタがマニアックだし5000円もするので、興味がわいた方だけで良いかと。
ゲームインターフェイスデザイン
オススメ度:★★
ゲームインターフェイスについてあらゆるノウハウが詰め込まれた本。
序章はファミコン前史から始まり、最新ハードに至までのハードの進化とハードの特性。
そこから、ゲームのジャンルごとにHUD(Head UP Display)はどのようにデザインしていくか、ボタン類はどうやって作っていくか、そしてグラフィックに限らず音によるフィードバックまで網羅されています。
ゲーム企画者はもちろん、UIデザインに興味がある方は思い切って買ってみてはどうですか?
お値段まさかの7500円!!!僕は友人の仕事の手伝いをして買って貰ったという経緯で手に入れたのですが、自費で買うには結構思い切りがいる値段ですね。
チームビルディング
Team Geek
オススメ度:★★★★★
これは読みやすいし、値段も手頃なのでめっちゃオススメ度高い。
Googleのプログラマが、チームで働くプログラマがチームメンバーと協調して働いて行くにはどうすればよいかと書かれた本です。
一応「チームで仕事するプログラマ」に向けた本なのですが、プログラミング的な知識は全く必要ありません。
この本の序盤で書かれていて、本全体で一貫して語られているのが「チームの文化」という考え方です。 チームの文化がメンバーと上手くハマれば楽しんで仕事できるし、ルールがあれば物事を決める選択も早くなるという話です。チーム作りにはノリや文化が大事なので、そういう事を考えてチームビルディングをしていきたい。
第3章の「チームにはキャプテンが必要」の章では、人に気持ちよく作業をしてもらうにはどう頼めば良いのかという、ものづくりをしていて一番知りたい情報が書かれています。ディレクターなど上に立つ人には特に是非読んで欲しいです。
読後感として、これに書いてある内容をチームみんなで共有して仕事したいなあと思いました。 プログラマはもちろん、チーム作業をするみんなに読んで貰いたい一冊です。
強いチームはオフィスを捨てる
オススメ度:★★★
これも『Team Geek』同様、働き方に関する本です。 「リモートワーク」という、オフィスを使わずにオンラインで仕事をするにはどうしたら良いかというノウハウが書かれた本。主にプログラマ向けですが、本書の中ではクリエイティブな仕事では全てこの本のノウハウが適応できると書かれています。
Kawazでのゲーム作りは基本的に「リモートワーク」なので、この本に書かれているノウハウはきっと役に立つはず。
特に、働く時間があわないとか、通知が全く読まれないとか、働き過ぎて詰まってしまうとか、リモートでゲーム作りをしていて、よく遭遇するできごとに関する対策も書かれています。
この本に書かれていて印象に残っていることが、実際にプログラマに在宅作業をすると「サボりがちになってしまいそう」という世間のイメージと違い、「働き過ぎてしまう」というのが問題になるようです。
Team Geekと比べて、具体的なツール名に言及があったり、プログラマ的知識も多く書かれているので、読むにはちょっと前提知識がいるかも。でも凄く良い本です。
アジャイルなゲーム開発
オススメ度:★★
よくある「アジャイル開発」の手法をゲームに特化した形で紹介してくれる本。
ゲーム開発現場ってのは本当に悲観的で、規模はどんどんデカくなっていくのに、ゲームの価値はどんどん下がっていって、ユーザーもどんどんワガママになっていく。そういうゲーム業界だからこそ、しっかりとしたアジャイル的手法を取り入れて高品質な物を高速に作っていく必要があると、序章で述べられています。
読むと、世界中どこでもスケジュールは守られない物だとか、そういうことは共通してるんだなあと謎の共感を覚えます。
また、この本特有の特徴としておもしろいのは、ゲームデザインとか、アートワークの作成と言った属人性の高い仕事をどうやってアジャイル的手法を使ってチームでやっていくか、という事が述べられています。
良い本なんだけど、文体は硬いし、読むのにアジャイルに関する知識が要求されるからなかなかオススメできないかも。
ゲームに関する読み物
幸せな未来は「ゲーム」が創る
オススメ度:★★★
TEDやGDCなどで「ゲームは人生をさらに豊かにしてくれる」と様々な講演を行った、ゲームデザイナーの本。
現実はクソゲーでぶっ壊れているから、人生を豊かにするためにはゲーム的考え方を用いて現実を修復していくべきで、「現実修復法」という考え方を物にすれば、豊かな人生が送れます、という中身。
詳しくは@geekdrumsさんが以前に書いてくれてました。
Kawaz - ゲームによる現実修復法 【KawazAdventCalender 6/15】
第2章はARG「現実代替ゲーム」と呼ばれるゲームジャンルについての話。 現実世界のあらゆる問題解決にゲーム的手法を導入して、ゲーム化していこう、という実践例。 ゲーミフィケーションの考え方って言えばわかりやすいかな。
今ではちょっと内容が古くなってしまったんですが、ゲームって良いモノだなあと思える本です。 ちょっと分厚くて読むのが大変だけど、第1章だけでも読んでおいた方が良いかと。
また、この本に書いてあることに関連して、現実を改善するためのゲームを作るゲームジャム、「シリアルゲームジャム」なんかも行われたりしていますね。
ゲームで人生を豊かにするって言うのはとってもステキな考えで、ゲームを作るのがさらに楽しくなります。
マインクラフト 革命的ゲームの真実
オススメ度:★★★
あの『Minecraft』を開発したインディーゲームデベロッパー「Notch」の半生を振り返る本です。
今やゲーム史上最高の成功を収めたNotchですが、最初はずっとニートしてて、引きこもってゲーム作ってたり、ゲーム会社に転職したモノの、好きな物が作れずに転々と転職していた、みたいな話があって、サクセスストーリーにはこういうエピソードが付きものなんだなあと感じました。
おもしろかったのは、このNotchは、かなり有名なゲーム会社に勤めていたのですが、そこをやめ、ゲーム業界とは関係ない仕事に就きながらMinecraftを作っています。 ゲーム業界にいると、時間的拘束が大きいし、副業規定などで好きにゲームが作れないから、と書かれていました。本当に能力があって物を作りたい人は自分で作った方が良いんでしょうね。
大東京トイボックス
オススメ度:★★★★
「その仕様を変更する!」
一言で言うとゲーム開発のマンガです。ドラマ化もされました。
中盤までは本当にゲーム開発していて凄く楽しいのですが、終盤は政治的な話になってきてちょっと方向性が違うかなあ。
ちなみに、作中の僕の好きなセリフを引用しておきます。作中で開発者がゲームを遊んで殺人が起き、ゲームが悪影響を与えているのでは?とマスコミに問い詰められたシーンでの一言。
他人の人生をそれだけ拘束しておいて何も残らないようなモノなどいったい何のために作るというのです?
熱いし、モチベーション上がるし、全10巻で完結しているし、マンガだから読みやすいのでオススメ度高い。
横井軍平ゲーム館 RETURNS ─ゲームボーイを生んだ発想力
オススメ度:★★
今の任天堂を一大企業まで押し上げ、現在のビデオゲーム産業の礎を築き、若くして亡くなった横井軍平さんの本です。
ゲーム&ウォッチ以前の任天堂の歴史からバーチャルボーイの誕生まで任天堂の歴史を追体験できます。任天堂ファン必見。
また、よく言われる「枯れた技術の水平思考」と呼ばれる考え方について解説されています。今の任天堂にも共通して受け継がれている考え方ですね。
復刊本が4年前に出た本なのにもう絶版なんですねー。読みたい方はうちにあるのでお声がけください。
まだ読んでないので読んだ人は教えてください
Kindle買おう
今年買って一番捗ったものは『Kindle Paperwhite』です。
最高の読書体験を提供してくれるのでぜひ買いましょう
これがあると、トイレとか、地下鉄でちょっと移動みたいな僅かな時間でどこでも本が読めます。
スマホ版もあるからわざわざ専用端末なんていらない、とお考えの皆様、そう思ってた時期が僕にもありました。
でも、スマホだと、読書以前にめっちゃ気が散る。通知が入ったりとか、ついついTwitterしてしまったりとか。時間が勿体ない!
というわけで、迷ってる方は間違いなく良いモノなのでKindle Paperwhite買いましょう。お値段も手頃です。
まとめ
如何でしたか?
本を軽く紹介して終わろうかと思ったら、「オススメです(小並感)」だらけになってしまって中身がないように感じたので、感想を軽く読み返しながら書いたら結構な分量になってしまいました。
ゲーム作りに参加する人はもちろん、特にゲームのディレクターを目指す人ならこれぐらいの本は読んでおくべきだと思います。
もちろん、ここに紹介した中にもゲーム開発に関わる本は無数にありますので、オススメの一冊があれば是非教えてくださいね。
本買ってね!!!
そして、メンバーの方はご存じだと思いますが、僕の本も今月末についに発売です!
これも今回紹介した本に負けず劣らず良い本だと自負しているので、是非ともご購入ください。
明日は
明日は最近メンバーになったばかりの@Leeくんです。老害だらけの殺伐としたAdvent Calendarにフレッシュな記事を楽しみにしてます。
一度使ってみたいセリフw